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【相続】どこの証券会社かわからない…「ほふり」を使った株式調査

2025-12-20

家族が亡くなった後、遺産を整理していると「株をやっていたと聞いたことはあるが、どこの証券会社を使っていたのかさっぱりわからない」という事態に直面することがあります。かつてのような紙の株券は2009年に電子化され、現在はすべてデータで管理されているため、手がかりがないと調査は困難を極めます。

そのようなときに頼りになるのが、日本の証券決済インフラを一手に担う証券保管振替機構(通称:ほふり)です。本記事では、証券会社が不明な株式を調査するための「ほふり」への開示請求について、手続きの流れや必要書類をわかりやすく解説します。

1.証券会社がわからない…そんな時の救世主「ほふり」とは?

「ほふり」とは、証券保管振替機構の略称です。日本で唯一の振替機関として、上場企業の発行する株式や投資信託などの権利を電子的に一括管理しています。

2009年(平成21年)の株券電子化以降、上場株式はすべてデジタルデータとしてこの機構に登録されるようになりました。そのため、亡くなった方(被相続人)がどこの証券会社に口座を持っていたとしても、「ほふり」に問い合わせれば、その口座が開設されている金融機関名を特定できるという仕組みです。

近年、新NISAの普及やスマートフォン証券の台頭により、ご家族に投資状況を知られないまま証券口座を保有している方も少なくありません。そのため、相続発生時に「ほふり」への調査依頼を行うケースが実務上増えています。

2.「ほふり」への開示請求でわかること・わからないこと

調査を始める前に、まず開示請求によって何が判明し、何が判明しないのかを正しく理解しておく必要があります。

確認できる情報

  • 口座が開設されている金融機関名(証券会社や信託銀行など)の一覧
  • 口座管理機関ごとの「加入者口座コード」

確認できない情報

  • 保有している株式の銘柄名
  • 株式の保有残高や評価額
  • 過去の取引履歴
  • 非上場株式や外国株式の口座情報(原則として対象外)

つまり、「ほふり」はあくまで「どこに口座があるか」を教えてくれる窓口であり、具体的な中身については、判明した証券会社に対して個別に問い合わせる必要があります。

3.開示請求ができる人は誰?

大切な個人情報を扱うため、誰でも請求できるわけではありません。相続において請求が認められているのは、主に以下の方々です。

1. 法定相続人(亡くなった方の配偶者や子供など)

2. 法定相続人の法定代理人(親権者や成年後見人など)

3. 法定相続人から委任を受けた任意代理人(司法書士や行政書士など)

4. 遺言執行者(遺言書で指定された人)

内縁のパートナーや、相続権のない親族は直接請求することができないため注意が必要です。

4.手続きの具体的な流れ

「ほふり」への調査は、すべて郵送で行います。窓口での受付や、電話・メールによる回答は一切行われていません。

ステップ1:必要書類の準備

まず、機構のホームページから「登録済加入者情報開示請求書」をダウンロードし、必要事項を記入します。あわせて、相続関係を証明する書類を揃えます。

ステップ2:書類の郵送

準備した書類を、東京都中央区にある「証券保管振替機構 開示請求事務センター」へ郵送します。重要書類が含まれるため、書留やレターパックなどの記録が残る方法が推奨されます。

ステップ3:結果の受取と費用の支払い

書類に不備がなければ、通常3週間から1ヶ月程度で結果が届きます。結果は「代金引換郵便(簡易書留)」で送られてくるため、その際に郵便局員へ手数料を支払って受け取ります。

5.開示請求に必要な書類(相続人が請求する場合)

手続きには多くの必要書類が必要です。2023年2月以降、多くの確認書類が「原本不可・すべてコピー」での提出に変更されました。原本を郵送しても返却されないため、必ずコピーを準備してください。

主な必要書類は以下の通りです。

開示請求書(機構指定の様式。氏名・住所ごとに作成)

請求者(相続人)の本人確認書類のコピー(運転免許証、マイナンバーカード表面など)

被相続人と請求者の関係を示す書類

  • 法定相続情報一覧図の写し(これがあれば戸籍は不要。手数料も安くなります)
  • または、被相続人の死亡と相続関係がわかる「戸籍謄本等」のコピー

被相続人の住所確認書類のコピー(住民票の除票、戸籍の附票、証券会社からの郵便物など)

6.調査にかかる費用

開示請求には手数料がかかります。

基本料金:1件につき 6,050円(税込)

• 割引制度:法定相続情報一覧図を提出すると、1,100円割引(4,950円)になります。

• 追加料金:複数の住所や旧姓で調査を希望する場合、2件目以降は1件あたり1,100円が加算されます。

例えば、現住所と1つ前の住所の両方で調べたい場合は、計7,150円が必要です。なお、調査の結果「該当なし」だった場合でも、費用は発生します。

7.ここが盲点!「信託銀行の特別口座」とは?

「ほふり」から届いた結果通知書に、見慣れない「信託銀行」の名前が記載されていることがあります。これは「特別口座」と呼ばれ、株券電子化の際に証券会社に預けていなかった株式を、会社側が仮の口座として用意したものです。

特に、単元未満株(端株)と呼ばれる100株に満たない端数の株は、この特別口座で管理されていることが非常に多いです。この場合、証券会社からの案内が届かないため家族が気づきにくく、「ほふり」の調査で初めて判明することも珍しくありません。

8.調査結果が出た後のステップ

「ほふり」の調査はあくまで「スタートライン」です。口座のある証券会社が判明したら、次は以下の手続きを進めます。

1. 各証券会社へ連絡:名義人が亡くなったことを伝え、相続用の書類一式を請求します。

2. 残高証明書の取得:亡くなった当日の保有銘柄や時価評価額を確認するために必要です。

3. 相続用口座の開設:株式をそのまま引き継ぐ場合、相続人自身の証券口座が必要です。

4. 名義変更(移管):必要書類を提出し、被相続人の口座から相続人の口座へ株式を移します。

9.確実な遺産調査で、安心できる相続手続きを

株式の相続手続きは、まず「どこの証券会社か」を特定することから始まります。手がかりがなくても「ほふり」の開示請求を活用すれば、道筋が見えてきます。ただし、書類の不備による差し戻しや、判明した後の複数の金融機関とのやり取りは、精神的にも時間的にも大きな負担となります。

「仕事が忙しくて平日に動けない」「戸籍集めが複雑で挫折しそう」「とにかく漏れなく正確に調査したい」 そんな時は、相続手続きの専門家である司法書士への相談を検討してみてください。

高野司法書士事務所は、相続・遺言手続きを専門とする事務所として、これまで多くの株式調査・名義変更をサポートしてまいりました。 面倒な「ほふり」への開示請求から、戸籍の収集、判明した証券会社とのやり取り、そして不動産の相続登記(名義変更)まで、相続手続きをワンストップでまるごと代行いたします。

亡くなった親の預金、どう引き出す?

2025-10-29

「親が亡くなったが、葬儀費用や当面の生活費をどう工面したらよいのだろうか」—このような状況で、故人名義の預貯金口座に頼りたいと考えるのは自然なことです。しかし、故人の銀行口座は、死亡の事実が金融機関に伝わった時点で原則として凍結され、自由に引き出しができなくなります。

この凍結を解除し、預金を引き出すためには、法律に基づいた相続手続きを行う必要があります。本記事では、故人の預貯金を引き出すための具体的な方法、急ぎで資金が必要な場合の仮払い制度の活用、そして相続トラブルを未然に防ぐための注意点について、分かりやすく解説します。

1.故人の預貯金口座の現状:なぜ口座凍結されるのか

誰かが亡くなると、その人名義の預金は遺産となり、相続人全員の共有財産となります。金融機関が口座名義人の死亡を知ると、遺産が確定するまでの間、財産の保全と相続人同士の不正な引き出しを防ぐ目的で、直ちに口座を凍結します。

凍結された口座からは、キャッシュカードや通帳を使った預金の引き出しはもちろん、振り込み公共料金などの自動引き落としもできなくなります。

銀行が死亡の事実を知るタイミング

金融機関が名義人の死亡を知るきっかけの多くは、相続人や親族からの連絡です。死亡届を役所に提出しても、その情報が金融機関に自動的に共有されることはありません。しかし、新聞の訃報や葬儀の情報などをきっかけに、銀行が死亡の事実を把握し、遺族に確認した上で凍結措置を取ることもあります。

2.凍結前(死亡直後)の引き出しと潜在的リスク

故人の死亡後であっても、金融機関がまだ死亡の事実を把握しておらず、口座が凍結されていない状態であれば、キャッシュカードと暗証番号を使って預金を引き出すことは物理的には可能です。しかし、この行為には重大なリスクが伴います。

トラブルを避けるための鉄則:事前共有と記録

故人名義の預金は、遺産分割が完了するまでは相続人全員の共有財産です。たとえ葬儀費用などやむを得ない目的であっても、他の相続人に無断で預金を引き出すと、後に「使い込みではないか」と疑われ、相続トラブルに発展する可能性が非常に高くなります。

トラブルを回避するためには、以下の2点を徹底することが極めて重要です。

  • 他の相続人全員に事前に(もしくは直後に)引き出しの事実と目的を共有する
  • 引き出した金額を証明できる領収書や明細書を必ず残し、使用使途を明確にする

相続放棄ができなくなるリスク(単純承認)

最も注意すべきリスクの一つが単純承認とみなされることです。故人に多額の借金(マイナスの財産)があった場合、相続人は相続放棄を選択できますが、預金の一部を「自分のために」使ってしまうと、単純承認が成立し、負債を含めた全ての財産を相続せざるを得なくなります。

葬儀費用などの支払いは問題視されにくいとされる一方で、個人的な用途に使ったと判断されると危険です。借金の有無が不明な場合は、安易に預金に手を付けず、正式な手続きを踏むべきです。

3.口座凍結後に預金を引き出す3つの方法

口座が凍結された後、預金を引き出すには、主に「正式な相続手続き」「遺産分割前の払戻し制度」「家庭裁判所の仮処分」の3つの方法があります。

1. 原則的な方法:正式な相続手続きによる払い戻し

最も確実な方法は、遺産分割を確定させ、銀行に対して凍結解除と払い戻し(解約)を依頼する手続きです。

手続きの3ステップ

一般的な銀行の相続手続きは、以下のステップで進められます。

1. ステップ1:金融機関への連絡と必要書類の確認 故人が口座を持っていた金融機関に連絡し、相続手続きを開始したい旨を伝えます。銀行側から必要な書類の一覧や所定の届出用紙が案内されます。

2. ステップ2:必要書類の収集と提出 相続の状況に応じた書類を収集し、銀行所定の書類に記入・捺印(相続人全員の実印が必要な場合が多い)の上、提出します。

3. ステップ3:口座の解約・払い戻し 提出された書類に基づき、銀行側で審査が行われます。手続き完了までには通常2週間~1ヶ月程度かかるとされています。

相続状況別の必要書類

必要な書類は、遺言書の有無遺産分割協議が成立しているかどうかによって大きく異なります。

相続パターン主な必要書類根拠となる書類
遺言書がある場合被相続人の戸籍謄本、遺言書(原本)、検認済証明書(公正証書遺言等以外)、預金を受け取る相続人の印鑑証明書遺言書
遺言書はないが遺産分割協議書がある場合被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書遺産分割協議書
遺言書も遺産分割協議書もない場合(法定相続分での分割など)上記の戸籍謄本一式、相続人全員の印鑑証明書、金融機関所定の相続関係届出書など相続人全員の協力

特に、戸籍謄本は故人の出生から死亡までの連続したものが必要とされることが多く、収集に時間がかかるため、早めに準備を始めることが重要です。

2. 急ぎの場合に便利:遺産分割前の払戻し制度

葬儀費用や当面の生活費など、緊急で資金が必要な場合は、2019年の相続法改正で新設された「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(仮払い制度)の活用が有効です。

この制度を利用すれば、遺産分割協議が完了する前でも、相続人単独で故人の預金の一部を引き出すことが可能です。

払戻しの上限額

金融機関の窓口で手続きを行う場合、引き出せる金額には以下の上限が設けられています。

  1. 引き出し上限額相続開始時の預金残高 × 1/3 × 払い戻しを行う相続人の法定相続分
  2. 金融機関ごとの上限:上記計算結果が150万円を超える場合でも、1金融機関あたり150万円が上限となります。
  • 例:預金残高600万円、法定相続人:配偶者と子2人(法定相続分がそれぞれ1/2、1/4)の場合
  • 配偶者:600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円
  • 子(1人あたり):600万円 × 1/3 × 1/4 = 50万円

必要書類(仮払い制度利用時)

この制度を利用する場合の主な必要書類は、以下の通りです。

  1. 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  2. 相続人全員の戸籍謄本
  3. 払戻しを希望する相続人の印鑑証明書

3. 高額な資金が必要な場合:家庭裁判所の仮処分

上記の払戻し制度の上限額(150万円)を超えて、緊急でまとまった資金が必要な場合は、家庭裁判所の保全処分(預貯金債権の仮分割の仮処分)を利用する方法があります。

この手続きは、遺産分割の調停や審判が家庭裁判所に申し立てられていることが前提となります。裁判所が払戻しの必要性(債務の弁済や相続人の生活費の支弁など)を認め、他の相続人の利益を害さないと判断した場合、一定の金額の引き出しが許可されます。

4.相続放棄を検討している場合の注意点

故人に借金などのマイナス財産が多い可能性がある場合、相続放棄を検討することが重要です。

相続放棄を検討しているにもかかわらず、故人の預金に手を付けてしまうと、単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるリスクがあります。

預金残高が少ない場合であっても、手続きの手間を考慮して、あえて口座凍結を解除せずに放置しておくという選択肢もあります。

• 相続財産に手を付けたかどうかは、預金をおろした目的や使途によって判断されますが、トラブルを防ぐためにも、相続放棄や限定承認を視野に入れている場合は一切預金に触れないことが賢明です。

相続放棄や限定承認は、自己のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、期限が定められています。

5.生前からできるトラブル回避のための準備

亡くなった後の預金引き出し手続きをスムーズに行い、残された家族の負担を軽減するためには、親が元気なうちに生前対策を講じることが非常に有効です。

1. 銀行口座の一覧表作成と整理

親がどの金融機関に口座を持っているか、残高はどの程度かという情報を一覧表にして把握しておくと、相続発生後の財産調査の負担が大幅に軽減されます。

また、複数の銀行に口座が分散していると、それぞれの銀行で手続きが必要となり、遺族の手続きの労力が大きくなります。可能な限り口座を統一・集約しておくことも、手続きを効率化するための有効な対策です。

2. 遺言書の作成を促す

遺言書が残されていれば、預貯金を含む財産の分配方法が明確になるため、遺産分割協議が不要になる、または大幅に短縮され、口座の凍結解除もスムーズになります。

遺言書がない場合、遺産分割協議書の作成が必要となり、相続人同士の話し合いが長引いたり、家族間の軋轢を生んだりする原因となりかねません。トラブルの未然防止のためにも、遺言書の作成は非常に有効な手段です。

6.まずは当事務所へご相談ください

親が亡くなった際の預貯金を引き出すプロセスは、まず故人の口座が凍結されることから始まります。この凍結を解除し、正式に預金を引き出すには、遺言書遺産分割協議書の有無に応じた複雑な相続手続きと、戸籍謄本などの多くの必要書類の収集が必要です。

緊急で資金が必要な場合は、遺産分割前の払戻し制度を利用すれば、1金融機関あたり150万円を上限として、相続人単独で預金の一部を引き出すことができます。

いずれの方法を選択するにしても、他の相続人との情報共有と、使途を証明するための領収書や明細の保管を徹底し、相続トラブル単純承認のリスクを避けることが何よりも重要です。

相続手続きは専門的な知識を要し、収集すべき書類や手続きの期限など、複雑な要素が多く含まれます。お客様の状況に合わせた最適な手続きを選択し、円滑な相続を実現するため、判断に迷うことがあれば、まずは当事務所にご相談ください。

株式相続の名義変更とは?

2025-08-26

故人の遺産に株式が含まれている場合、その後の手続きについて不安を感じる方もいるでしょう。株式の相続手続きは、預貯金や不動産とは異なる特性があり、特に名義変更は非常に重要なプロセスです。この記事では、株式相続における名義変更の具体的な手順から、税金や相続税の取り扱い、売却を検討する際の注意点、さらには非上場株式の特殊な対策まで、皆様が知っておくべき情報を網羅的に解説します。適切な手続きを進めることで、予期せぬリスクを避け、故人の大切な財産を円滑に承継できるよう、ぜひ参考にしてください。

1.株式相続における名義変更の基本と重要性

相続財産には現金、預貯金、不動産の他に株式も含まれます。故人が株式を所有していた場合、その株式を相続するためには、所有者の名義を故人から相続人へ変更する手続きが必要です。この名義変更手続きを行わないと、以下のようなさまざまな不利益が生じる可能性があります。

株主としての権利行使ができない: 配当金の受け取りや株主優待の利用、株主総会での議決権行使など、株主が持つ権利を適切に行使することができません。

売買・換金ができない: 故人名義のままでは、株式の売却や換金ができません。すぐに現金化したい場合でも、まずは名義変更の手続きが必須です。

権利の消失リスク: 長期間名義変更をせずに放置していると、最終的には株式の権利自体が完全に失われるリスクがあります。具体的には、株主の所在が5年以上不明な場合や、配当金が5年間受け取られていない場合、株式が競売にかけられたり、発行会社が買い取ったりする措置が取られることがあります。

相続税に関するペナルティ: 名義変更手続きそのものに時効はありませんが、相続税の申告・納税には期限があり、これを怠ると延滞税や加算税といったペナルティが課される可能性があります。

これらのリスクを避けるためにも、株式を相続したら速やかに名義変更手続きを進めることが大切です。

2.株式相続の名義変更に向けた準備と手順

株式を相続する際の名義変更は、まず「誰が」「どの銘柄を」「何株相続するか」を明確にすることから始まります。

1. 相続の対象となる株式の特定

故人がどの会社の株式をどれだけ保有していたかを確認する「株式の調査」が最初のステップです。

郵便物の確認: 証券会社からの取引残高報告書や株主総会招集通知、配当金に関する案内などが自宅に届いていないか確認します。

通帳の確認: 株式配当金の入金履歴から、保有している株式が判明することもあります。

証券会社への問い合わせ: 故人が取引していた証券会社が分かっている場合は、その証券会社に連絡し、残高証明書の発行を請求することで、保有株式の明細を確認できます。

証券保管振替機構(ほふり)への開示請求: 故人がどの証券会社で口座を開設していたか全く分からない場合は、「証券保管振替機構(ほふり)」に開示請求を行います。これにより、故人の株式を管理している証券会社や信託銀行等の口座管理機関が判明します。開示請求には、相続人の身分証明書のコピーや被相続人と相続人の関係を証明する書類(戸籍謄本など)が必要です。

2. 遺産分割協議の実施

相続財産に株式が含まれる場合、まず遺言書の有無を確認します。遺言書があれば原則としてその内容に従い、ない場合は、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、「誰が、どの銘柄を、いくつ相続するか」を決定する必要があります。

遺産分割協議が成立したら、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名し、実印を押印することが重要です。この遺産分割協議書は、株式の名義変更手続きの際に必要な書類となります。

3.上場株式の名義変更手続き

上場株式は証券取引所を介して取引されるため、名義変更手続きは証券会社を通じて行います。

1. 手続きの流れ

1. 証券会社への連絡: 故人が取引していた証券会社に、被相続人が死亡したことと、株式の名義変更を希望する旨を伝えます。

2. 相続人の証券口座の用意: 株式を相続する人は、自分名義の証券口座を保有している必要があります。もし故人と同じ証券会社にすでに口座があれば、その口座に移管手続きを進めます。異なる証券会社を利用していたり、口座を所有していなかったりする場合は、故人が取引していた証券会社で新たに口座を開設する必要があります。

3. 株式の移管申請: 証券会社指定の書類と必要書類を提出し、故人名義の株式を相続人の証券口座へ移管(振り替え)する手続きを行います。これにより、相続人名義で株式を管理・運用できるようになります。

2. 必要書類

上場株式の名義変更に必要な書類は、証券会社によって異なる場合がありますが、一般的には以下のものが求められます。

  • 株式名義書換請求書
  • 取引口座引き継ぎの念書(証券会社所定の用紙)
  • 相続人全員の同意書(証券会社所定の用紙)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 相続人の戸籍謄本
  • 遺産分割協議書

4.非上場株式の名義変更手続き

非上場株式は証券取引所に上場されていないため、売買は一般的に行われず、名義変更手続きも上場株式とは異なります。

1. 手続きの流れ

1. 発行会社への直接連絡: 株式を発行している会社に直接連絡し、被相続人が死亡したことと、名義変更を希望する旨を伝えます。

2. 必要書類の確認と提出: 発行会社から名義変更に必要な書類を確認し、指示に従って準備・提出します。手続き方法や必要書類は会社ごとに異なるため、事前にしっかり確認することが重要です。

3. 株主名簿の書換: 発行会社にて株主名簿の記載変更が行われ、名義変更が完了します。

2. 非上場株式特有の注意点

譲渡制限付株式: 非上場株式には、譲渡に会社の承認を必要とする「譲渡制限付株式」であることが多くあります。相続人が株式を承継した場合でも、会社側が定款に定めがあれば、株主総会の特別決議を経て相続人に株式の売渡請求を行うことができる場合があります。この場合、買取金額が余剰金の分配可能額を超えないことなどの要件を満たす必要があります。

株主名簿の管理状況: 企業によっては株主名簿がきちんと作成・管理されていないなど、手続きが複雑化するケースも存在します。

5.株式の評価額と相続税の算出

株式も他の相続財産と同様に、相続税の対象となります。相続税は、被相続人の全財産の合計額が基礎控除額(「3,000万円+法定相続人の数×600万円」)を超える場合に発生します。この相続税を計算する上で、株式の正確な評価額を知ることが不可欠です。

1. 上場株式の評価方法

上場株式の評価額は、原則として被相続人が亡くなった日の終値が基準となります。しかし、株価は常に変動するため、以下の4つのうち最も低い価格を選んで相続税申告時の株価とすることができます。

  • 相続開始日(死亡日)の終値
  • 相続開始日を含む月の毎日の最終価格の平均額
  • 相続開始日の前月の毎日の最終価格の平均額
  • 相続開始日の前々月の毎日の最終価格の平均額

これらの株価は、インターネットの専門サイトや日本取引所グループのサイトで調べることができます。また、故人が所有していた証券会社に残高等の証明書の発行を依頼し、これらの4種類の価格での評価額を確認することも可能です。

2. 非上場株式の評価方法

非上場株式の評価は上場株式よりも複雑であり、その計算方法には複数の種類があります。発行会社の規模(大会社、中会社、小会社)や、その会社の経営状況、配当、純資産価額など、さまざまな要素を考慮して評価されます。主な評価方法は以下の通りです。

純資産価額方式: 会社を廃業すると仮定した場合に、株主一人あたりに分配される金額を基準に株価を算出する方法です。小会社の評価に主に用いられます。

類似業種比準方式: 類似する業種の上場会社の株価を基準に、評価対象会社の配当金額、利益金額、純資産価額の3つの要素で比較して評価する方法です。大会社の評価に主に用いられます。

配当還元方式: 会社の配当を基準にして評価する方法です。同族株主以外が相続人のケースなどに用いられます。

併用方式: 純資産価額方式と類似業種比準方式を組み合わせて評価する方法で、中会社に適用されます。

これらの評価方法は専門的な知識を要するため、非上場株式を相続した場合は、税理士などの専門家に相談することを強く推奨します。

6.相続した株式の売却と税金

相続した株式は、そのまま保有するだけでなく、売却して現金化することも可能です。

1. 株式の分割方法

株式の分割方法には、主に以下の二つがあります。

換価分割(売却・換金し現金で分割): 故人の株式を代表相続人の証券口座へ移管した後、売却・換金し、その代金を相続人全員で均等に分割する方法です。この場合、売却時の時価で売却し、税金などが控除されるときは、税金引き後の代金を分割すると良いでしょう。遺産分割協議書には、換価分割する旨と売却代金の分配方法を明記します。

現物分割(銘柄のまま分割): 故人の上場株式が複数ある場合などに、売却・換金せず、銘柄のまま複数の相続人で分割する方法です。誰がどの銘柄をいくつ相続するかを事前に決定し、証券会社に申し出ます。一度銘柄を保有すると、その後の分割内容を変更することはできないため注意が必要です。

遺産分割協議で特定の相続人が株式を相続した場合、その相続人は他の相続人の同意を得ることなく、自身の判断で自由に株式を売却できます。

2. 株式売却時の譲渡所得税

相続した株式を売却して利益が出た場合、「譲渡所得税」が課税されます。この税金は、売却した相続人が確定申告をして納税する必要があります。

譲渡所得の計算: 株式の譲渡所得は「売却金額-売却手数料-取得費」で計算されます。取得費とは、故人がその株式を取得した際の金額です。故人の取得費が不明な場合は、売却代金の5%を取得費とすることができますが、この場合、売却益の95%が課税対象となり、高額な所得税金がかかる可能性があります。

特定口座(源泉徴収あり)の利用: 代表相続人の証券口座を「特定口座、源泉徴収あり」にしておけば、売却で利益が出ても原則として確定申告は不要です。しかし、それ以外の口座であったり、特定口座で保管できない銘柄を売却したりして利益が出た場合は、代表相続人の所得として確定申告が必要になることがあるため注意が必要です。

相続税の取得費加算の特例: 相続税の申告期限から3年以内(相続開始から3年10ヶ月以内)に株式を売却した場合、支払った相続税の一部を株式の取得費に加算できる特例があります。この特例を利用することで、譲渡所得税金を軽減できるため、積極的に活用を検討しましょう。

7.名義変更を怠った場合のリスク

前述の通り、株式の名義変更をしないまま放置することは、多くのリスクを伴います。特に以下の点には注意が必要です。

1. 確定申告の必要性と準確定申告

準確定申告: 被相続人が亡くなる前に株式の売買をしていた場合、亡くなってから4ヶ月以内に「準確定申告」(被相続人の所得税金の確定申告)が必要になることがあります。故人の証券口座が「特定口座(源泉徴収あり)」であれば、源泉徴収が自動的に行われるため準確定申告は不要ですが、一般口座で売却益があり申告が未完了の場合は必要です。

相続税の申告期限: 株式の相続自体に名義変更の期限はありませんが、相続税の申告と納税は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内と決まっています。この期限を過ぎると、延滞税、無申告加算税、過少申告加算税といった追徴税金が発生する可能性があります。相続税の申告を怠った場合の時効は通常5年ですが、故意に脱税を目論んでいた場合は7年となります。

2. 株主の権利喪失リスク

名義変更を放置すると、最終的に株式の権利が失われる可能性があります。 株主の所在が不明な状態が5年間続くと、「所在不明株主」として扱われ、株式が競売にかけられたり、発行会社に買い取られたりすることがあります。また、非上場株式では、事業承継の観点から、一定の要件を満たせば「所在不明株主の株式の競売及び売却に関する特例」が適用され、5年が1年に短縮される場合もあります。

3. 配当金や株主優待の受け取り不可

名義変更が完了するまでは、株主名簿に故人の名前が記載されたままとなり、配当金や株主優待などの特典を受け取ることができません。未受領の配当金には時効が設けられており、通常3年から5年と会社によって異なります。この期限を過ぎると、配当金を受け取る権利も失われてしまうため、早期の名義変更が重要です。

8.株式相続の手続きは専門家への相談が安心

株式の相続手続きは、その性質や評価方法の複雑さから、専門的な知識と時間が必要となる場面が多くあります。特に非上場株式の評価や、複数の税金が絡む相続税対策、そして3年以内売却による特例の活用などは、専門家の助言なしに進めるのは困難でしょう。

相続専門の税理士や司法書士は、株式の調査から評価額の算出、遺産分割協議書の作成、名義変更手続き、相続税申告、さらには売却非上場株式対策に関するアドバイスまで、一貫してサポートを提供できます。複雑な手続きを円滑に進め、相続税の負担を最大限に軽減し、予期せぬトラブルを避けるためにも、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

預貯金が少額の場合の相続手続き

2025-07-26

「亡くなった親の通帳を見たら、残高が数万円しかなかった。こんな少額の預貯金でも、わざわざ相続手続きをしないといけないの?」——これは相続の現場でよく寄せられる質問の一つです。

確かに、相続財産が数百万円、あるいは数千万円単位であれば、司法書士や税理士など専門家に依頼してでも手続きを進めるのが一般的です。しかし、たとえ残高が数万円、十万円台だったとしても、預貯金は亡くなった時点で「相続財産」となり、金融機関の口座は原則として凍結されます。そのため、残高が少額でも「法律的には」相続手続きが必要になります。「少額だから手続きしなくてよい」という考えは、必ずしも正解とは限りません。

この記事では、特に銀行・ゆうちょ銀行など金融機関ごとに手続きの違いや相続放棄、手続きを放っておいた場合のリスクまで分かりやすく解説します。

1.銀行やゆうちょ銀行で預貯金の「簡易な相続手続き」が利用できる場合とは?

銀行やゆうちょ銀行の預貯金を相続する際、手続きを進める中で「少額の場合は簡易な手続きで済む」と耳にする方も多いでしょう。本記事では、「簡易な相続手続き」が認められるケースや手続きの流れ、その際の注意点について詳しく解説します。

1. 「簡易な相続手続き」ってどんな制度?

通常、預貯金の相続では次のようなフルセットの書類や手続きを求められます。

  • 被相続人(故人)の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 遺産分割協議書 など

しかし、預金残高自体が少額な場合や、遺産分割のトラブルが考えにくい場合などは、金融機関ごとに「簡易な相続手続き」や「少額預貯金払戻の特例」を設けており、必要書類や手順が大きく簡素化されることがあります。

2. 具体的に「簡易手続き」が適用される条件は?

ゆうちょ銀行の場合

  • 口座残高が100万円以下であることが明確な条件となっています。
  • 相続人のうち誰か一人が代表して、比較的少ない書類と手続きで払戻しが受けられます。

都市銀行や地方銀行の場合

  • 銀行ごとに上限額(たとえば30万円、50万円、100万円など)が決められている例が多いです。
  • 銀行ごとの内規や支店の判断による部分もあるため、事前の電話確認が必須です。

共通条件

  • 「簡易」とはいえ相続人全員の同意(署名又は同意書)が求められる場合が多いので、事前に揉めごとがないよう注意が必要です。
  • その金融機関に特別な「同意書」や「代表相続人選任届」など、専用の書式がある場合もあります。

3. 実際の「簡易手続き」の流れ

① 死亡の連絡・凍結

被相続人が亡くなった後、銀行やゆうちょ銀行に死亡を連絡すると口座が凍結されます。

② 必要書類の準備

  • 代表相続人の本人確認書類(運転免許証等)
  • 被相続人の死亡がわかる戸籍謄本や除籍謄本
  • 代表相続人の印鑑証明書
  • 「払戻依頼書」や「代表相続人選任届」など、金融機関指定の書類

※ 他の相続人の署名や同意、またはその写しを求められることがありますが、通常の相続に比べて必要書類は少なく済みます。

③ 払戻し・解約手続き

必要書類を提出し、金融機関の確認が終わると(書類に不備がなければ)口座が解約され、預貯金が払戻しされます。

4. 仮払い制度と複雑な場合の対応

少額とはいえ相続人間で争いが予見される場合や、他の財産と合わせて遺産分割協議が難航している場合は、たとえ少額でも簡易手続きを利用できないこともあります。

また、2019年民法改正で誕生した預貯金の仮払い制度を利用すれば、遺産分割前でも一定額(「残高の1/3×法定相続分」、かつ金融機関ごとに150万円まで)を仮で払い戻すことができます。相続人の生活維持や葬儀費用など「早急にお金が必要」な場合には非常に有効です。

5. 注意点とトラブル防止

  • 「簡易手続き」であっても、払戻金を後から相続人間で均等配分したり、合意の証拠(同意書など)を残しておくと安心です。
  • 相続放棄を検討している相続人が払戻しに関わると「単純承認」とみなされ放棄できなくなる場合があるので注意しましょう。
  • 金融機関と十分なコミュニケーションを取り、条件や必要書類が自分のケースにどう当てはまるか、必ず事前確認を。銀行ホームページや窓口で詳細なフロー説明が受けられます。

銀行やゆうちょ銀行の預貯金が少額の場合、「簡易な相続手続き」が活用できれば、本来の煩雑な相続手続きと比べてかなり手間と時間を省略できます。特にゆうちょ銀行なら「100万円以下」、他行も独自上限額が設定されているケースが多いので、手続き前に電話や窓口で「少額預貯金の簡便な相続手続きは利用できますか?」と尋ねるのがベストです。

2.相続放棄を検討すべきケースと注意点

預貯金の金額が少額であっても、故人に借金や保証債務がある可能性がある場合は注意が必要です。特に、公共料金や税金の滞納、クレジットカードの残債、連帯保証など、被相続人の生活状況によっては、相続によってマイナスの財産を引き継いでしまうおそれがあります。

このような場合には、「相続放棄」を選択することで、借金などの負担から免れることができます。相続放棄は、被相続人が亡くなったことを知ってから3ヶ月以内に、家庭裁判所へ申述する必要があります。期限を過ぎてしまうと、原則として放棄が認められなくなるため、早めの判断が重要です。

ただし、口座から預金を引き出したりする行為は“単純承認”とみなされ、相続放棄が認められなくなる可能性があります。相続放棄を検討している場合は、一切の相続財産に手を付けず、速やかに専門家へ相談するようにしましょう。

3.預貯金の相続手続きを放置した場合のリスク・デメリット

預貯金の相続手続きを放置すると、表面上は特に罰則がないように感じがちですが、実際にはリスクやデメリットが存在します。

まず、銀行やゆうちょ銀行の預貯金も「債権」として扱われるため、相続人が払い戻しを請求せずに放置すると、権利が時効によって消滅する危険性があります。民法上、通常は「権利を行使できると知った時から5年」、あるいは「権利を行使できる時から10年」放置すると、預金の払い戻し請求権が消滅時効にかかることになります。特に会社の預金、信用金庫の預金などでは10年とされることもありますが、商法の適用で一般的な銀行預金は5年で時効となることが多いです

この時効を超えると、法的には銀行が払い戻しを拒否できる状態になるため、せっかくの預貯金が「なかったもの」となってしまうリスクが出てきます。実務上は、10年を超えても手続きを進めれば支払いに応じてくれる場合もありますが、銀行の判断で断られた場合、異議を唱えることができなくなる恐れがあります

また、近年は「休眠預金等活用法」の施行により、10年以上取引がないまま放置された口座は、残高が国(預金保険機構)に移され、払い戻し手続きが非常に煩雑になります。いざ必要になった時に払い戻しができない、または手続自体が大きな負担になる可能性があります。

さらに、預貯金以外にも相続登記(不動産名義変更)や株式の名義書換を怠ることで、不動産の権利関係が複雑になったり、株式の所有権を失う、相続人が増え続けて分割協議が困難になるなど将来的な遺産トラブルの温床にもなります

実際、「今は困っていないから」「残高が少ないから」と先延ばしにしてしまったことで、いざ必要な時に複雑な調査や多数の書類が求められて解決に膨大な労力がかかったり、ようやく調停や訴訟でしか解決できない状態に陥ることも珍しくありません

4.相続手続きにお困りの方へ

少額の預貯金でも「面倒」「後回し」はNGです。高野司法書士事務所では、銀行・ゆうちょ銀行・仮払い制度・簡易手続き・相続放棄に関するすべてのご相談を無料で受付しています。東急田園都市線青葉台駅から徒歩6分とアクセスも良好です。

「相続手続きは何から始めてよいか分からない」「永く放置してしまった」「遠方からでも簡単に済ませたい」とお悩みの方は、お気軽にお問い合わせください。司法書士が親身にサポートし、安心かつスピーディな対応をお約束します。

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