財産調査・残高証明の取得

相続手続きにおいては、相続開始後速やかに被相続人(亡くなった方)の財産調査に着手する必要があります。

しかもこの財産調査は漏れがないよう正確に行わなければなりません。相続の対象となる財産には、現金、預貯金や不動産などのプラスの財産だけでなく、借金などの債務や負債といったマイナスの財産も含まれます。

相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月の熟慮期間内に相続(単純承認、限定承認)するのか、相続放棄するのか選択をしなければなりません。

相続財産がプラスなのかマイナスなのか、財産の全体像が把握できない限り、相続の方針について決定することは出来ません。

相続財産の調査が3ヶ月以内に終わらなければ、単純承認とみなされ、相続財産を全て引き継いでしまう可能性があります。

そのため、相続開始後速やかに正確な財産調査に着手する必要があるのです。

1.相続財産別調査の方法

相続人は、被相続人の一身に専属したものを除き、一切の権利義務を引き継ぎますが、相続財産として以下のようなものが挙げられます。

プラスの財産

  • 現金
  • 預貯金
  • 有価証券(株式や投資信託)
  • 保険
  • 不動産
  • 自動車
  • 絵画、骨董品
  • ゴルフ会員権

マイナスの財産

  • 未払いの医療費、施設利用料
  • クレジットカード利用料金
  • 未払いの税金、公共料金
  • 住宅ローンなどの銀行からの借入金
  • 連帯保証債務
  • 個人からの借入

ここでは、相続財産の中でも大きな割合を占める預貯金、有価証券、不動産、債務の調査方法について解説していきます。

①預貯金の調査の方法

(1)預貯金口座のある銀行、支店を調査する

被相続人の銀行通帳やキャッシュカード、郵送物などから預貯金口座を1つ1つ特定していく作業が求められます。預貯金の場合は、後ほどご紹介する有価証券の「ほふり」のような一括照会できる制度はありません。

通帳やキャッシュカードが見つからない場合は、被相続人の自宅の近くの銀行(地銀や信用金庫などを含む)に口座を持っている可能性が高いので、まずは近くの銀行から調査を開始します。年金の振込通知書や公共料金の口座振替通知書などから被相続人の預貯金口座が判明する場合もあります。

(2)残高証明書を取得する

被相続人が死亡時に有していた預貯金の額を確認するため、金融機関に亡くなった日時点での残高証明書を発行してもらいます。残高証明書の発行には、金融機関所定の手数料がかかります。

被相続人が定期預金をお持ちだった場合、亡くなった時点の「既経過利息」も併せて記載してもらうようにします。(既経過利息とは、定期預金を預入した日から相続発生日までの利息のことをいいます)残高証明書は、請求から1~2週間程度で郵送されてきます。

②有価証券(株式、投資信託)の調査の方法

(1)証券口座のある証券会社を調査する

上場株式の場合

  • 取引残高報告書がある場合
    被相続人が証券会社に口座を開設していた場合、証券会社から定期的に(通常は3ヶ月に1度)取引残高報告書が送付されてきます。
    この書類に有価証券の銘柄や数量が記載されていますので、被相続人が有していた有価証券の残高などを確認出来ます。
    被相続人が亡くなったことを伝えれば、証券会社から相続手続きに必要な書類や残高証明書交付請求書などを送付してもらうことが出来ます。
    また、株主総会の案内、配当金の支払い通知からどのような有価証券を保有していたか判明する場合もあります。

  • 取引残高報告書がない場合
    被相続人が取引をしていた証券会社が不明な場合でも、保有していた有価証券を調査することは可能です。
    証券保管振替機構(通称「ほふり」)という機関で、証券会社等で開設している有価証券口座情報を一元管理しています。
    ほふりに「登録済加入者情報通知書」を請求すれば、被相続人がどこの証券会社と取引していたのかを確認することが出来ます。登録済加入者情報通知書の発行には所定の手数料がかかります。

非上場株式の場合

非上場株式に関する情報は、基本的に発行会社に問い合わせをする以外に公式な調査方法はありません。株券や株主総会の招集通知、確定申告の控えから、被相続人が非上場株式を保有していたことが判明することもあります。

③不動産の調査方法

(1)登記済権利証を確認する

被相続人が売買や相続によって不動産を取得したなら、法務局から登記済権利証(登記識別情報通知)が発行されています。(司法書士に依頼したなら、司法書士から納品があったはずです。)

登記済権利証や登記識別情報通知を見れば、被相続人が所有していた不動産について確認出来ます。ただし、不動産を取得した時期が異なる場合は、複数の登記済権利証(登記識別情報)が発行されていますので、その全てについて確認する必要があります。

(2)不動産固定資産税納税通知書(課税明細書)を確認する

毎年1月1日時点で不動産登記記録に記載された不動産の所有者に対して、固定資産税が課税されます。

毎年5月頃に不動産所在地の市区町村から、不動産所有者に対して、納税通知書が送付されてきます。この納税通知書には、課税明細書が同封されており、その市区町村で保有している不動産の所在等や固定資産税評価額、固定資産税額などが記載されています。

ただし、ほとんどの市区町村では私道などの非課税物件は記載されません。また、借地権や地上権、使用貸借などの利用権も課税明細書には記載されません。

(3)名寄帳を取得する

名寄帳とは、納税義務者が所有している不動産の一覧のことをいいます。不動産所在地の市区町村で名寄帳を取得することが出来ます。

この名寄帳には、私道などの非課税物件を含め、納税義務者が所有している市区町村内のすべての不動産について記載されていますが、市区町村によっては、非課税物件については記載されない場合もあるため注意が必要です。また、課税明細書と同じく、名寄帳にも借地権や地上権、使用貸借などの利用権は記載されません。

(4)賃貸借契約書を確認する

前述の通り、借地権や地上権、使用貸借などについては、課税明細書にも名寄帳にも記載されませんので、契約書等を確認します。

④債務の調査方法

債務の調査については、信用情報機関への情報開示請求を行うことが有効です。信用情報機関とは、加盟する銀行や信用金庫、貸金業者、クレジットカード会社等から個人の借り入れやクレジットカードの利用状況などの情報(信用情報)を収集管理し、開示請求に応じて信用情報を提供する機関のことです。

個人の信用情報を取り扱う機関は次の3つです。

  • 株式会社シー・アイ・シー(CIC)
  • 株式会社日本信用情報機構(JICC)
  • 一般社団法人全国銀行協会(全国銀行個人信用情報センター)

各機関で扱っている情報が異なるため、すべての機関に開示請求する必要があります。

信用情報機関では、個人間の金銭の貸し借りや保証債務などについては調査することは出来ません。個人間での借り入れは、被相続人宛の郵送物や借用書(契約書)、請求書などの資料、預金通帳の引き落とし(出金)の記録などで確認するしかありませんが、これらの資料が見当たらない場合は、債務調査はかなり困難になります。

2.当事務所の財産調査サービス

  1. 預貯金口座、有価証券に関する財産調査及び残高証明書の取得
  2. 不動産に関する財産調査及び名寄帳などの取得
  3. 債務に関する調査(信用情報機関への照会)
  4. その他自動車、ゴルフ会員権などに関する財産調査

当事務所が随時適切にサポート致しますのでご安心ください。まずは、お気軽に無料相談をお申し込みください。

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