親が亡くなったとき、年金の手続きは「まず何から」?

ご家族が亡くなられたとき、悲しみの中で進めなければならないのが様々な手続きです。 中でも、多くの方が最初に迷われるのが「年金の手続き」ではないでしょうか。

「いつまでに、どこへ連絡すればいいの?」 「まだ振り込まれていない年金(未支給年金)はどうなるの?」 「親の預金口座が凍結されたら、年金は引き出せなくなる?」

実は、年金の手続きには「時間との勝負」になるものがいくつかあります。少しでも手続きが遅れると「不正受給として後から返金しなくてはならなくなる」ことや、逆に「もらえるはずの年金をもらい損ねてしまう」こともあります。

この記事では、一般の方には少し分かりにくい年金の相続手続きについて、やるべきことを3つのステップに分けてスッキリ解説します。これから手続きを始められる方は、ぜひチェックリスト代わりに参考にしてください。

1.親が亡くなったらやるべき年金の「3つの基本手続き」

ご家族が亡くなられた際の年金手続きは、大きく分けると以下の3つだけです。これらを整理して覚えておくと、焦らずに進められます。

【年金手続きの3ステップ】
① 年金を「止める」手続き ─── 受給権者死亡届(10日〜14日以内)
② 未払いの年金を「もらう」手続き ─── 未支給年金の請求(5年以内)
③ 今後の生活を「支える」手続き ─── 遺族年金などの請求(5年以内)

① 年金を「止める」手続き(受給権者死亡届)

年金を受け取っている方(受給権者)が亡くなった場合、まずは年金の支払いを止める手続きが必要です。手続きを忘れて年金を多く受け取りすぎてしまうと、あとで国に一括返還しなければならなくなるため、最初に行いましょう。

期限:

  • 国民年金のみを受給していた方:亡くなってから14日以内
  • 厚生年金・共済年金を受給していた方:亡くなってから10日以内

提出先: 市役所の保険年金課や年金事務所(故人が受給していた年金の種類により、提出先や窓口が異なります。)

💡【重要】手続きが「不要」になるケース 亡くなられた方の「日本年金機構に登録されているマイナンバー」と「死亡届(市区町村の役場へ提出したもの)」が連携されている場合は、原則として受給権者死亡届の提出は省略可能です。年金事務所へ電話で「マイナンバーで死亡連携されているか」を確認するのが一番確実で時短になります。

② 未払いの年金を「もらう」手続き(未支給年金)

ここが一番のポイントです。年金は「後払い(偶数月の15日に前月・前々月分が支払われる)」のルールになっています。 たとえば、8月20日に亡くなられた場合、8月分までの年金をもらう権利がありますが、その支払日は「10月15日」です。つまり、亡くなられた時点で「まだ受け取っていない年金」が必ず発生します。

これを「未支給年金(みしきゅうねんきん)」と呼び、亡くなられた方と「生計を同じくしていた遺族」が代わりに請求して受け取ることができます。

受け取れる遺族の順位(優先度): ①配偶者 → ②子 → ③父母 → ④孫 → ⑤祖父母 → ⑥兄弟姉妹 → ⑦その他・3親等内の親族 (※上の順位の人がいる場合、下の順位の人は請求できません)

期限:本来年金が支払われるはずだった日の翌月1日から5年以内

③ 今後の生活を「支える」手続き(遺族年金など)

亡くなられた方に生計を支えられていたご家族(配偶者や子など)がいる場合、一定の要件を満たせば「遺族基礎年金」「遺族厚生年金」を継続して受け取ることができます。

  • 手続き先: 年金事務所(遺族基礎年金のみの場合は市区町村の役場窓口でも可)
  • 期限: 亡くなられた日の翌日から5年以内 (※ただし、支給は亡くなった月の翌月分からなので、早めの請求をおすすめします)

2.年金と「相続・遺産分け」の意外な関係

実務上、私たち司法書士の元には「銀行口座が凍結された」「借金が多くて相続放棄したいが、年金はどうなる?」といった深いご相談がたくさん寄せられます。

ここでは、よくある3つの疑問について見ていきます。

疑問1:「未支給年金」は遺産分割協議書に書く必要があるの?

👉 結論:書かなくてOKです!親の「遺産(相続財産)」には含まれません。

ここを誤解されている方が非常に多いのですが、未支給年金は、亡くなった親の財産ではなく、「請求した遺族ご本人の固有の権利(財産)」として法律上扱われます(最高裁判所の判例でも確定しています)。

そのため、不動産や預貯金のように「相続人全員で分け方を話し合ったり、遺産分割協議書を作ったりする」必要は全くありません。最優先順位の遺族(たとえばお母様)が自分自身の権利として100%受け取って良いお金です。

疑問2:親に借金があって「相続放棄」をしたら、年金はもらえない?

👉 結論:相続放棄をしても、「未支給年金」や「遺族年金」は問題なく受け取れます!

「親に多額の借金があったから家庭裁判所で『相続放棄』の手続きをした。だから、まだ振り込まれていない年金(未支給年金)も受け取っちゃいけないよね…?」と諦めてしまう方がいらっしゃいますが、それは非常にもったいない誤解です!

先ほど解説した通り、未支給年金や遺族年金は民法上の「相続財産」ではありません。したがって、相続放棄をして「最初から相続人ではなくなった」場合であっても、年金の受給要件(生計同一など)さえ満たしていれば、正当に受け取ることができるのです。

💡【ここだけ注意!】相続税の対象外だけど「所得税」には注意 未支給年金は「遺産」ではないため、相続税の対象にはなりません。ただし、受け取った遺族ご本人の「一時所得」として扱われるため、その年の他の所得と合わせて確定申告が必要になる場合(※他の50万円の控除枠を超えた場合など)がありますので覚えておきましょう。

疑問3:年金が振り込まれる前に銀行口座が「凍結」されたらどうなる?

👉 結論:年金事務所の窓口で、請求者(あなた)の口座へ振込先を変更してもらえます。

金融機関は、口座名義人の死亡を知った時点で口座を「凍結(出入金ストップ)」します。 「まだ年金が振り込まれるはずだったのに、口座が凍結されて引き出せない!」とパニックになる方がいらっしゃいますが、ご安心ください。

未支給年金の請求手続きを行う際に、「年金を受け取る口座を指定する欄」があります。ここに請求者(たとえば喪主を務めるお子様)自身の銀行口座を記入すれば、凍結された亡き親の口座を介さずに、あなた自身の口座へ直接未支給年金が振り込まれます。

3.年金手続きでよくあるQ&A

お客様からよくご質問をいただくポイントをまとめました。

Q. 親と別居していましたが、未支給年金は受け取れますか?

A. 「仕送り」や「頻繁な連絡・訪問」があれば受け取れる可能性が高いです。 法律上の要件は「生計を同じくしていたこと」ですが、同居が絶対条件ではありません。別居していても、住民票上の「生計同一関係に関する申立書」(第三者の証明などが必要)を提出することで受け取れるケースが数多くあります。諦めずに年金事務所へ相談してみましょう。

Q. 親が「どの種類の年金」をもらっていたか分かりません…

A. 「年金証書」や「預金通帳の印字」で確認できます。 遺品の中から青い手帳や「年金証書」を探してみましょう。もし見つからない場合は、親が生前使っていた銀行通帳の入金履歴を確認してください。「ニホンネンキンキコウ」「コウセイネンキン」「キョウサイ」といった振込名義から確認することができます。

4.年金手続きが終わったら、次は「不動産と遺産」の手続きへ

親御様が亡くなられた際、まず最初に行うべき「年金の手続き(停止と未支給年金の請求)」は、生活を守るための大切な一歩です。

そして、年金の手続きが落ち着いたら、本格的に向き合わなければならないのが「銀行口座の解約」「実家など不動産の相続登記(名義変更)」です。

特に不動産の相続登記は、2024年4月から義務化され、放置すると罰則のリスクや、次の世代への負の遺産となってしまう問題があります。「戸籍を集めるだけで何週間もかかって疲れてしまった」「誰に何から相談していいか分からない…」という方は、一人で悩まずに専門家へ頼ってみませんか?

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