遺言書を作成する際、財産の分け方だけでなく、ご家族への想いや感謝の気持ちを伝えたいとお考えの方は多いのではないでしょうか。そんな想いを形にするのが「付言(ふげん)」です。今回は、遺言書における付言の役割や書き方、具体的な例文についてご説明します。
このページの目次
1.付言とは何か
付言とは、遺言書の末尾に記載する、法的効力を持たない自由なメッセージのことです。財産の分配方法や相続人の指定といった法的な事項とは異なり、遺言者の想いや考え、家族への感謝の言葉などを自由に表現できる部分となります。
法的拘束力はありませんが、遺言者の真意や財産分配の理由を説明することで、相続人同士のトラブルを防ぐ効果が期待できます。また、残されたご家族にとって、故人の想いを知ることができる大切な部分となるのです。
2.付言を書くメリット
相続トラブルの予防
遺産分割の内容について、なぜそのような配分にしたのか理由を説明することで、相続人の理解を得やすくなります。特に、法定相続分と異なる分配をする場合や、特定の相続人に多くの財産を残す場合には、その理由を付言で説明しておくことで、不公平感を和らげる効果があります。
家族への想いを伝える
日頃は照れくさくて言えない感謝の気持ちや、家族への願いを伝えることができます。付言は、あなたの最後のラブレターとも言えるでしょう。
相続人以外へのメッセージ
法定相続人ではない方への感謝の言葉や、お世話になった方へのメッセージを残すこともできます。
3.付言の書き方のポイント
1. 前向きな表現を心がける
できるだけ前向きで温かい表現を使い、家族の絆を深めるような内容にしましょう。批判的な言葉や否定的な表現は避けることをおすすめします。
2. 配分の理由を丁寧に説明する
特定の相続人に多く財産を残す場合は、その理由を具体的に説明することで、他の相続人の理解を得やすくなります。「長男には事業を継いでもらうため」「長女には介護をしてもらったことへの感謝として」など、客観的な理由を記載しましょう。
3. 感謝の気持ちを具体的に
「ありがとう」だけでなく、何に対して感謝しているのか具体的に書くことで、より想いが伝わります。
4. 将来への希望を込める
残された家族に対して、幸せを願う気持ちや、仲良く暮らしてほしいという願いを伝えましょう。
4.付言の例文
例文1:家族への感謝を伝える場合
「妻の花子へ。長年にわたり、私を支えてくれて本当にありがとう。あなたと過ごした日々は、私の人生で最も幸せな時間でした。これからは、自分のために時間を使い、健康で楽しい毎日を送ってください。子どもたちへ。立派に成長してくれて、父として誇りに思っています。これからもお母さんを大切にし、兄弟仲良く助け合って生きていってください。皆の幸せを心から願っています。」
例文2:財産分配の理由を説明する場合
「長男の太郎には、先代から続く家業を継いでもらうため、自宅と事業用資産を相続させることにしました。長女の美咲には、これまで私たち夫婦の介護に献身的に尽くしてくれたことへの感謝の気持ちとして、預貯金を多めに相続させます。次男の健一は既に独立して事業で成功しているため、今回の配分としましたが、お前の頑張りを誇りに思っています。この分配方法に兄弟で理解し合い、これからも互いに助け合って生きていってください。」
例文3:シンプルに想いを伝える場合
「家族みんなへ。私は幸せな人生を送ることができました。それは、あなたたちがいてくれたからです。心から感謝しています。これからも、家族みんなが健康で幸せに暮らせることを祈っています。喧嘩することもあるでしょうが、最後は必ず仲直りして、支え合ってください。本当にありがとう。」
例文4:相続人以外へのメッセージを含める場合
「相続人である子どもたちへ。遺産の分配については遺言書に記載した通りです。お母さんを最後まで大切にしてください。また、長年お世話になった友人の山田さんには、法的な相続はできませんが、私の蔵書を形見として受け取っていただければ幸いです。家族みんなが幸せに暮らすことが、私の一番の願いです。
5.付言を書く際の注意点
法的効力はない
付言には法的拘束力がありません。「○○には財産を渡さないでほしい」といった内容を付言に書いても、遺言書の本文で相続人として指定されていれば、その効力が優先されます。法的に効力を持たせたい事項は、必ず遺言書の本文に記載する必要があります。
誤解を招く表現は避ける
曖昧な表現や、解釈によって複数の意味に取れる表現は避けましょう。明確で分かりやすい言葉を選ぶことが大切です。
特定の人を傷つける内容は避ける
批判や悪口、特定の相続人を貶めるような内容は、かえって家族間のトラブルを招く原因となります。どうしても伝えたいことがある場合でも、表現には十分配慮しましょう。
公正証書遺言でも付言は書ける
自筆証書遺言だけでなく、公正証書遺言でも付言を記載することができます。公証人に作成してもらう際に、付言も含めて口述すれば、遺言書に盛り込んでもらえます。
付言は、法的効力はないものの、遺言者の想いを家族に伝え、相続トラブルを未然に防ぐ重要な役割を果たします。財産の分配理由を説明したり、家族への感謝や愛情を表現したりすることで、円満な相続の実現につながります。
遺言書は、単なる財産分配の書類ではなく、あなたの人生の集大成とも言える大切な文書です。付言を通じて、ご家族への想いをしっかりと伝えることで、より意味のある遺言書となるでしょう。
6.遺言書作成は高野司法書士事務所にお任せください
遺言書の作成には、法的要件を満たすことはもちろん、ご家族の状況に応じた適切な内容にすることが重要です。付言の書き方一つで、ご家族の受け止め方も大きく変わってきます。
高野司法書士事務所では、遺言書作成の豊富な経験を活かし、お客様のご希望やご家族の状況を丁寧にお伺いしながら、最適な遺言書作成をサポートいたします。付言の文面についても、想いが伝わる表現になるようアドバイスさせていただきます。
初回相談は無料ですので、遺言書の作成をお考えの方は、ぜひお気軽に高野司法書士事務所までご相談ください。あなたの大切な想いを、確実にご家族に届けるお手伝いをさせていただきます。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
