除籍謄本の取り方マニュアル

遺産相続の手続きを進める際、多くの方が初めて耳にするのが「除籍謄本(じょせきとうほん)」という書類かもしれません。除籍謄本は、故人(被相続人)の法定相続人が誰であるかを確定するために非常に重要な公的書類です。

この書類の収集は相続手続きの最初のステップでありながら、手間や時間がかかることが多く、不慣れな方にとっては複雑に感じられるかもしれません。

ここでは、除籍謄本とは何か、戸籍謄本との違い、そしてスムーズに取得するための具体的な方法を分かりやすく解説します。

1.除籍謄本の基礎知識:戸籍謄本との違い

除籍謄本は、その戸籍に記載されていた人が婚姻、転籍、または死亡などの理由によって全員いなくなった事実を証明する書類です。戸籍から全員がいなくなり、その戸籍が閉鎖された状態を「除籍」と呼びます。

戸籍謄本との違い

除籍謄本とよく似た書類に、戸籍謄本があります。この二つの主な違いは、戸籍内に現在も存命の人が残っているかどうかです。

戸籍謄本:現在も有効な戸籍であり、存命の人が一人でも残っている全員分の情報が記載された書類です。

除籍謄本:戸籍に記載されていた全員が抜けて、誰もいなくなった状態を証明する書類です。

相続手続きの実務上、亡くなった方(被相続人)の死亡の事実が記載されている戸籍(誰もいなくなり除籍となったものだけでなく、まだ存命の家族が残っている戸籍に死亡の記載がされている場合も含む)を広義的に「除籍謄本」と呼ぶこともあります。しかし、正式には全員がいなくなった戸籍が除籍謄本です。

なお、戸籍の情報が電子化されている自治体では、「除籍謄本」の代わりに「除籍全部事項証明書」という名称で交付されますが、記載内容や法的な効力は同じであり、相続手続きではどちらも問題なく使用できます。

2.除籍謄本が必要になる場面

除籍謄本は、ほぼすべての相続手続きにおいて必要とされます。

最も重要なのは、法定相続人を確定するための調査です。相続手続きを正確に進めるためには、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍の記録(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本など)を連続性をもって収集する必要があります。この連続した戸籍の束を集める過程で、婚姻や転籍、死亡により閉鎖された過去の除籍謄本が欠かせません。

具体的には、以下のような場面で除籍謄本が必要になります。

  • 不動産の名義変更(相続登記)
  • 銀行預金の解約や名義変更
  • 生命保険金の請求
  • 相続税の申告

3.除籍謄本の取得方法:どこで取れるか

除籍謄本は、戸籍があった本籍地を管轄する市区町村役場で取得が可能です。

どこで取れる?本籍地以外での取得と広域交付

原則として、除籍謄本を取得できるのは、故人の本籍地のある市役所です。

故人が転籍(本籍地の移動)や結婚を繰り返していると、出生から死亡までに複数の本籍地があることが多く、その都度、それぞれの役所に請求する必要があります。

しかし、2024年3月以降、戸籍法の改正により「広域交付制度」が導入されました。これにより、請求できる人の範囲は限定されますが、本籍地以外の全国各地の市区町村役場の窓口でも、除籍謄本を一括で取得できるようになりました。

この広域交付を利用できるのは、本人、その配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)に限られます。兄弟姉妹や代理人は広域交付を利用できません。

取れる人(請求できる人)

除籍謄本には個人の重要な身分事項が記載されているため、誰でも自由に取得できるわけではありません

原則として、除籍謄本を取得できる人は以下の通りです。

1. 除籍謄本に記載されている人(故人)の配偶者

2. 除籍謄本に記載されている人の直系尊属(父母や祖父母など)または直系卑属(子どもや孫など)。

3. 上記の人々から委任状で依頼を受けた代理人(弁護士、司法書士などの専門家を含む)。

4. 正当な理由がある第三者(自己の権利行使や義務履行のために必要な場合など。例:債権者が相続人を確認する場合)。

兄弟姉妹など、直系にあたらない傍系の親族が相続人として請求する場合は、自身が相続人であることを証明する戸籍謄本類を提示する必要があります。

窓口または郵送での請求方法

除籍謄本を取得する方法は、主に窓口での申請郵送での請求の2種類です。

1. 窓口での申請

(1)本籍地の役所で請求する場合
請求書に記入し、本人確認書類、親族関係を証明できる書類、および手数料(1通750円)を提出します。即日で受け取れる点が最大のメリットですが、平日の開庁時間内に役所へ出向く必要があります。

(2)広域交付制度を利用する場合
本籍地以外の役所でも請求できる制度です。本人確認書類と手数料(1通750円)を提出します。即日交付される場合もありますが、役所によっては後日交付となることがあります。

2. 郵送での請求本籍地が遠方で役所へ行くのが難しい場合に有効な方法です。必要書類(請求書、本人確認書類の写し、親族関係を証明する書類、返信用封筒、手数料750円分の定額小為替など)を本籍地の役所に郵送します。郵送の場合は、申請から手元に届くまでに1〜2週間程度かかることがデメリットです。手数料は、郵便局で購入できる定額小為替で支払うのが一般的です。

コンビニ交付については、現在のところ除籍謄本は対象外であり、役所または郵送での申請が必要です。

4.除籍謄本を取得する際の注意点

スムーズに相続手続きを進めるために、いくつか知っておくべき注意点があります。

死亡直後は取得できない

人が死亡し、役所に死亡届が提出されても、戸籍に死亡の事実が反映されるまでには、通常1週間から10日程度の事務処理時間がかかります。そのため、亡くなった直後に除籍謄本を申請しても、まだ情報が反映されておらず、取得できない可能性が高いです。死亡届を提出してから10日ほど経過した後に申請するのが確実とされています。

出生から死亡までの連続性を確認

相続人調査においては、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本類をすべて漏れなく集めることが不可欠です。結婚や転籍、法改正などで戸籍が変わるたびに過去の記録(改製原戸籍や除籍謄本)が必要になります。

一つでも書類に漏れがあると法定相続人を確定できず、相続手続きを進められない可能性があります。古い戸籍を遡る際は、前の戸籍の「従前戸籍」の記載を確認しながら、途切れなく書類を集めることが大切です。

古い除籍謄本の判読の難しさ

古い時代に作成された除籍謄本には、手書きで記載されていたり、旧字体や毛筆が使われていたりすることが多く、一般の方が正確に読み解くのは難しい場合があります。

特に相続人調査では、記載内容を正確に理解して次の戸籍の請求先を判断する必要があるため、判読に不安がある場合は、専門家に確認を依頼することが安心です。

5.相続手続きは専門家への依頼が安心

相続手続きの第一歩である戸籍の収集は、見た目以上に複雑で時間を要します。特に、被相続人様の出生から死亡に至るまでの連続した戸籍を途切れなく集め、その内容を正確に読み解く作業は、専門家でなければ困難を極めるケースも少なくありません。

私たち高野司法書士事務所は、相続・遺言手続きを専門としており、お客様が抱える煩雑な手続きの負担を軽減し、円滑で確実な相続の実現をサポートいたします。

戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍の収集・読み解きはもちろん、その後の遺産分割協議書の作成、不動産の名義変更(相続登記)まで、相続手続き全般をワンストップで代行することが可能です。

「どこから手を付けて良いかわからない」「仕事が忙しく、役所に行く時間がない」「古い戸籍の字が読めない」といったお悩みをお持ちであれば、ぜひ一度ご相談ください。相続の専門家が、お客様の不安に寄り添い、確かな知識と経験で全力でサポートさせていただきます。

keyboard_arrow_up

0455077744 問い合わせバナー 無料相談について