相続関係説明図とは?書き方や法定相続情報一覧図との違い、原本還付のメリット

親御様が亡くなり、不動産の名義変更(相続登記)の手続きを始めようとしたとき、まず驚かれるのが「集めなければならない戸籍の多さ」ではないでしょうか。

出生から死亡までの連続した戸籍、相続人全員の戸籍……これらを取得するだけでも大変な労力と費用がかかります。「やっと集めたこの大切な戸籍の束を、役所に提出してしまって大丈夫なの?」「銀行の手続きでも使うのに、戻ってこなかったらどうしよう?」そんな不安を抱える方も多いはずです。

実は、法務局での登記申請の際、「相続関係説明図(そうぞくかんけいせつめいず)」という書類を作成して提出することで、提出した戸籍謄本等の原本を返却してもらうことができます。これを「原本還付(げんぽんかんぷ)」と言います。

今回は、相続手続きをスムーズに進めるために欠かせない「相続関係説明図」について、その役割や書き方、そして最近よく耳にする「法定相続情報一覧図」との違いについて解説します。

1.相続関係説明図とは?作成する最大の目的は「原本還付」

相続関係説明図とは、亡くなられた方(被相続人)と、財産を受け取る相続人の関係を、家系図のように整理した一覧図のことです。

相続登記の申請において、この図の提出は法律上の義務ではありません。しかし、実務上はほとんどのケースで作成・提出されています。その最大の理由は、提出した戸籍等の原本を返してもらうため(原本還付)です。

■原本還付(げんぽんかんぷ)のメリット 通常、法務局に書類を提出すると、それらは役所で保管され手元には戻りません。しかし、相続関係説明図を添えて「原本還付」の手続きを行うと、登記官が「図の内容」と「戸籍の内容」が一致していることを確認した後、戸籍謄本等の原本を返却してくれます(※説明図自体は返却されません)。

これにより、以下の3つの大きなメリットが生まれます。

  • 費用の節約: 1通450円〜750円かかる戸籍を何セットも取得する必要がなくなり、数千円〜数万円の節約になります。
  • 手続きの効率化: 戻ってきた戸籍の原本を、そのまま銀行の解約や証券会社、保険金の請求、相続税の申告などに使い回すことができます。
  • 手間の削減: 戸籍をコピーして「原本と相違ありません」と書いてハンコを押す……という膨大な事務作業を省略できます。

2.相続関係説明図と法定相続情報一覧図の違い

近年、「法定相続情報一覧図(ほうていそうぞくじょうほういちらんず)」という書類が登場しました。これは2017年から始まった新しい制度です。どちらも「相続関係を示した図」ですが、法的な効力や使い道には大きな違いがあります。

項目相続関係説明図法定相続情報一覧図
書類の性質私的な書類(作成者が署名)公的な証明書(法務局が認証)
主な使い道法務局での原本還付用銀行、保険、登記、税務署など多用途
作成の自由度高い(遺産分割の結果も記載可)厳格(法定相続人のみ記載)
発行手数料無料(自作の場合)無料(法務局で発行)
申請の手間作成して登記と一緒に提出専用の申出書を作成し法務局へ申請

最大の違いは、「公的な証明力があるかどうか」です。 法定相続情報一覧図は、法務局の登記官が内容を確認して認証文を付した「公文書」扱いとなるため、これ1枚あれば戸籍の束を持ち歩かなくても各種手続きが可能になります。

3.どちらを作成すべき?判断のポイント

「結局、うちはどっちを作ればいいの?」と迷われる方のために、判断基準をまとめました。

A. 「相続関係説明図」で十分なケース

  • 手続き先が少ない場合: 自宅の土地・建物の名義変更(相続登記)だけで、銀行口座などはほとんどない場合。
  • 急いでいる場合: 法務局への事前申出などの手間をかけず、すぐに登記申請を行いたい場合。
  • 遺産分割の内容も図に反映させたい場合: 「誰が相続したか」「誰が遺産はいらないと言ったか(分割)」を図の中に書き込みたい場合。

B. 「法定相続情報一覧図」を取得した方がいいケース

  • 手続き先が多い場合: 銀行や証券会社の口座が複数あり、同時に手続きを進めたい場合。
  • 遠方の手続きがある場合: 郵送でのやり取りが多く、戸籍原本の返却待ち時間を短縮したい場合。
  • 相続税の申告が必要な場合: 税務署への提出書類としても利用可能です。

4.相続関係説明図の書き方と必要書類

ここでは、一般的な「相続関係説明図」の作成手順を解説します。パソコン(ExcelやWord)でも手書きでも構いませんが、修正が容易なパソコンでの作成をおすすめします。

【ステップ1】必要な書類を集める 正確な図を作るために、まずは以下の書類を揃えます。(例:父が亡くなり、母と子が相続人のケース)

  • 被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等
  • 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)
  • 相続人全員の現在の戸籍謄本
  • 相続人全員の住民票

【ステップ2】記載すべき項目を確認する

  • タイトル: 「相続関係説明図」と大きく記載。
  • 被相続人の情報: 氏名、最後の本籍、最後の住所、生年月日、死亡年月日。
  • 相続人の情報: 氏名、住所、生年月日、続柄(「妻」「長男」など)。
  • 相続の結果:
    • 不動産を取得する人 → 「(相続)」
    • 遺産分割で取得しない人 → 「(分割)」
    • 遺言で取得する人 → 「(遺言)」

【ステップ3】家系図を作成する 夫婦は二重線、親子は一本線で結びます。法務局のウェブサイト等にある記載例を参考に、関係性が一目でわかるように配置しましょう。最後に、作成者の署名・押印欄を設けることもあります(司法書士作成の場合)。

5.自分で作成するのが難しいケースと専門家への依頼

相続人が「配偶者と子供だけ」といったシンプルな関係であれば、ご自身で作成することも可能です。しかし、以下のようなケースでは作成が複雑になり、ミスが発生しやすくなります。

  • 数次相続(すうじそうぞく): 相続手続き中に相続人の一人が亡くなり、さらに次の相続が発生している場合。図面上で二つの相続関係を表現する必要があります。
  • 代襲相続(だいしゅうそうぞく): 被相続人より先に子供が亡くなっており、孫が相続人になる場合。「被代襲者」などの専門的な記載が必要になることがあります。
  • 兄弟姉妹が相続人: 子供がおらず、両親も他界しているため、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合。戸籍の収集範囲が非常に広くなります。
  • 複雑な親族関係: 離婚、再婚、養子縁組、異母兄弟などが含まれる場合。

■司法書士に依頼するメリット 司法書士に相続登記をご依頼いただく場合、通常は相続関係説明図の作成も業務に含まれています

  • 戸籍収集の代行: 面倒な戸籍集めから全て任せられます。
  • 正確な図面の作成: 法的な間違いのない図面をプロが作成します。
  • 最適なアドバイス: お客様の状況に合わせて、「今回は法定相続情報一覧図を取得しておいた方が、後の銀行手続きが楽ですよ」といった提案も可能です。

「相続関係説明図」は、単なる家系図ではなく、大切な戸籍原本を取り戻し、相続手続き全体を効率化するための重要なツールです。

  • 手続き先が少ないなら「相続関係説明図」
  • 手続き先が多いなら「法定相続情報一覧図」

ご自身の状況に合わせて最適な方法を選びましょう。 もし、「自分の場合はどちらがいいの?」「複雑な関係で図が書けない」とお悩みでしたら、ぜひ一度専門家にご相談ください。

高野司法書士事務所では、横浜エリアを中心に数多くの相続手続きをサポートしております。戸籍の収集から図面の作成、登記申請まで、トータルでサポートいたします。まずは無料相談をご利用ください。

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