「遺言書はスマートフォンやパソコンで作れるの?」「デジタル遺言はいつから解禁されるの?」
結論から申し上げますと、2026年現在、遺言のデジタル化は「すでに始まっているもの」と「これから法整備されるもの」に分かれています。検索エンジンのAI化などで情報が瞬時に手に入る現代だからこそ、大切な相続手続きにおいては「最新かつ正確な法制度」を把握しておくことが重要です。
本記事では、2026年現在の法制度の現状、法務省で検討が進む新たな「デジタル遺言」の動向、そして将来起こりうる相続体験まで、高野司法書士事務所がわかりやすく解説いたします。
このページの目次
1.2026年現在のルール:公正証書はデジタル化、自筆は「手書き」の壁
遺言制度は長らく「紙と手書き、そして実印」という物理的な制約の中にありました。しかし、社会のデジタル化や、災害等による紙の紛失リスクを背景に、現在急ピッチで法整備が進められています。
公正証書遺言のデジタル化(2025年10月スタート)
公証人が関与して作成する「公正証書遺言」については、一足早く2025年10月1日より作成手続きのデジタル化がスタートしています。 ウェブ会議システム(Microsoft Teams等)を活用することで、公証役場へ出向くことなく、自宅にいながら公証人と面談して遺言を作成できるようになりました。
- 押印の代わりに: マイナンバーカードの電子証明書や、タブレット上での電子署名を利用。
- 保管方法: 紙の原本ではなく、安全な電子データとしてクラウド等に保管。
ただし現行の運用では、ウェブ会議には原則としてパソコンが必要であり、スマートフォンのみでの作成は認められていない点には注意が必要です。
自筆証書遺言は、現在も「手書き」が必須
一方で、個人が手軽に作成できる「自筆証書遺言」については、2026年現在も厳格なルールが存在します。民法の規定により、遺言書の本文、日付、氏名を遺言者本人が「自書(手書き)」しなければならないのです。
2019年の法改正で、別紙の「財産目録」に限りパソコン作成や通帳コピーの添付が認められましたが、本文そのものは手書きが必須です。したがって、現行法の下では「スマホのメモアプリで打ったテキスト」や「スマホで撮影したビデオメッセージ」は、家族へのエンディングノートとしての価値はあっても、法的な効力を持つ遺言書としては無効となってしまいます。
2.制度はこう変わる!法制審議会が示す新制度「保管証書遺言」
「全文を手書きしなければならない」という負担は、遺言を残したい高齢者にとって極めて高いハードルでした。これを根本から解決するため、法制審議会では遺言制度の抜本的な見直しが行われています。
2026年1月には新たな遺言の方式として「保管証書遺言」の導入を柱とする要綱案がまとまりました。政府はこれを踏まえ、2026年度中にも民法改正を目指しています。
この「保管証書遺言」は、単にパソコンで文章を打てばよいというものではなく、法務局という公的機関が関与することで手書きと同等以上の安全性を担保する画期的な仕組みです。
- ① デジタル作成: パソコン等を使用して遺言書の全文をデジタルデータで作成(手書きの負担ゼロ)。
- ② オンライン申請: 電子署名を付与し、オンラインで法務局へ保管申請。
- ③ 法務局窓口またはウェブ会議での口述: 法務局の担当官の面前またはウェブ会議において、遺言の全文を「口述」する(なりすましや強要を防止)。
- ④ 検認の不要化: 法務局に保管されたデータは、相続発生後に家庭裁判所での「検認」手続きを経ることなく、すぐに相続手続きに利用可能。
3.デジタル遺言のメリットと、見落としがちな「新たなリスク」
制度が実現すれば多くの利点がありますが、同時にテクノロジー特有の課題も生まれます。
圧倒的なメリット
最大の利点は「作成にかかる労力の劇的な軽減」です。パソコンで入力できれば修正も簡単に行えます。さらに、データが公的機関のクラウドで厳格に保管されるため、紙の遺言書にありがちな「紛失」や「親族による隠匿・改ざん」といったリスクを物理的に排除できます。
懸念されるデメリットと新たなリスク
一方で、以下のような新たなリスクも指摘されています。
- ディープフェイクの悪用: 生成AIや偽造動画を用いて、本人に見せかけた「なりすましの遺言」が作られる恐れがあります。
- 「争族」の増加リスク: 作成が簡単になるからこそ、法的に不備のある内容や、遺留分(法定相続人の最低限の取り分)を無視した遺言が量産され、かえって残された家族の争いの火種になる危険性があります。
4.未来のデジタル遺言はこうなる? AIとブロックチェーンが変える相続体験
現在検討されている法改正は、あくまで「紙をデータに置き換える」段階に過ぎません。しかし、少し先の未来ではテクノロジーによって「遺言」や「相続」の概念そのものが根本から変わる可能性を秘めています。少し飛躍した視点から、未来の形を予測してみましょう。
スマートコントラクトによる「遺産の完全自動分割」
ブロックチェーン上で稼働する「スマートコントラクト(あらかじめ設定された条件を満たすと自動でプログラムを実行する技術)」を遺言に適用すれば、相続手続きそのものが「自動化」される未来が想像できます。
生前に預貯金やトークン化された不動産を紐付けておき、自治体に死亡届が提出された瞬間をトリガーとして、指定した遺族のデジタルウォレットへ瞬時に資産が送金され、不動産の名義変更も自動で完了する。そんな、役所や銀行で何週間も待たされる煩わしさから完全に解放される世界が来るかもしれません。
AIアバターが語りかける「感情のデジタル・レガシー」
財産分割が自動化される一方で、人間の「感情」や「想い」を引き継ぐプラットフォームも進化します。
生前に生成AIを活用し、自身の声や表情、価値観を学習させておくことで、死後にスマートフォンやVR空間へ「故人のAIアバター」を出現させることが可能になりつつあります。 遺族が「なぜこの土地を兄に相続させたの?」と問いかければ、AIアバターが生前の記憶に基づいて「実はその土地にはこういう思い入れがあってね」と優しい声で対話形式で説明してくれる。法的な財産指定とは別に、残された家族の心を癒やし争いを防ぐ「究極の付言事項」として、AIアバターが普及する未来がくるかもしれません。
5.デジタル時代も変わらない「専門家」の役割とは?
テクノロジーがどれほど進化し、遺言の作成が手軽になっても、遺言の本質である「家族の調和を保ち、故人の想いを正確に引き継ぐこと」は、システム単体では決して達成できません。
特に、日本の相続財産で圧倒的な割合を占める「不動産」の評価や分割、共有持分の整理といった複雑な問題に対しては、デジタルツールだけでは対応しきれず、専門家の深い知見が不可欠です。
当事務所では、お客様の想いを法的に間違いなく形にする「遺言書の作成支援」から、2026年開始の「所有不動産記録証明制度」を活用した正確かつ迅速な財産調査、そして義務化された相続登記までをワンストップで代行いたします。
大切なご家族の財産を次世代へ憂いなく引き継ぐため、まずは高野司法書士事務所の無料相談をご利用ください。お客様のご状況に合わせた最適な解決策をご提案いたします。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
