Archive for the ‘相続’ Category
相続人がいない場合の遺産はどうなる?
近年、生涯独身の方の増加や少子高齢化の進展に伴い、亡くなった方に法定の相続人が一人もいない「相続人不存在」のケースが増加しています。身寄りがなく、亡くなった後に遺産が宙に浮いた状態になってしまうという問題は、社会的な課題となりつつあります。
「もし自分に相続人がいなかったら、財産は全て国に取られてしまうのだろうか?」 「お世話になった人や団体に財産を残したいけれど、どうすればよいのだろうか?」
このような不安を抱える方も少なくありません。実際に、相続人不存在によって最終的に国庫に帰属する遺産の額は、年々増加傾向にあるとされています。
本記事では、相続人不存在とはどのような状況を指すのか、遺された財産は最終的にどこへ行くのか、そして、ご自身の意思を反映させるために生前にできる相続対策(特に遺言書の作成)について、法律を専門としない方にも分かりやすく徹底的に解説します。
1.相続人不存在とは?その定義と3つのパターン
相続人不存在とは、民法が定める「法定相続人」に該当する人が、亡くなった方(被相続人)の死亡時に一人もいない状態を指します。
法定相続人とは、法律によって定められた相続権を持つ人で、その範囲と順位は以下の通りです。
配偶者:常に相続人となる。
第1順位:子(子が亡くなっていれば孫、ひ孫などの直系卑属)。
第2順位:父母(父母が亡くなっていれば祖父母などの直系尊属)。
第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっていれば甥姪)。
この法定相続人(および代襲相続人)が誰もいない場合に相続人不存在となります。なお、いとこや叔父叔母、甥姪の子どもなどは法定相続人ではありません。
相続人不存在になる具体的なケースは、主に次の3つのパターンが考えられます。
(1) 家族構成的に法定相続人がいないケース
被相続人が独身で子どもがおらず、両親などの直系尊属も兄弟姉妹(および甥姪)も既に亡くなっている、いわゆる「天涯孤独」の状態です。
(2) 法定相続人全員が相続放棄したケース
戸籍上は相続人がいるものの、その全員が家庭裁判所に相続放棄の申述を行い、それが受理された場合です。相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。被相続人に多額の借金(負債)があった場合に、借金を引き継がないために全員で放棄するケースが多く見られます。
(3) 相続欠格・相続廃除により相続権を失ったケース
法定相続人に相続の意思があっても、被相続人に対して重大な不正行為や虐待行為があった場合、「相続欠格」や「相続廃除」によって相続権を失うことがあります。この結果、他に相続人がいなければ相続人不存在となります。ただし、欠格や廃除の場合、第1順位や第3順位では代襲相続が認められるため、その子(孫など)が相続人になる可能性があります。
誤解されやすい「相続人がいない」ケース
相続人が行方不明または音信不通である場合は、その人が法律上の相続人である限り、相続人不存在とは扱われません。一方、内縁の配偶者は法律上の相続人ではないため、他に法定相続人がいなければ相続人不存在として扱われます。
• 行方不明の場合:戸籍から抹消されていない限り、法律上は相続人が「いる」ものとして扱われます。遺産分割を進めるためには、不在者財産管理人の選任や失踪宣告の手続きが必要です。
• 内縁の配偶者:法律上の婚姻関係がないため、内縁の配偶者には法定相続権はありません。財産を確実に残すには、遺言書を作成するか、後述の特別縁故者として財産分与を求める必要があります。
2.相続人不存在の場合、遺産はどこへ行く?
相続人不存在の状態が確定した場合、遺産はすぐに国のものになるわけではなく、以下の優先順位に従って清算・処分されていきます。
(1) 遺言書で指定された人(受遺者)や債権者
まず、遺言書が残されていれば、そこに指定された人や団体(受遺者)に財産が渡されます。遺言書は法定相続人がいない場合でも、被相続人の意思を実現する上で非常に強力な手段です。
また、被相続人に対して金銭を貸していた人や、未払いの家賃などの支払いを受ける権利を持つ債権者がいる場合は、遺産から支払いがなされます。
(2) 特別縁故者への財産分与
債権者や受遺者への支払い・遺贈を終えてもなお財産が残っている場合、次に財産を受け取る可能性があるのが「特別縁故者」です。
特別縁故者とは、被相続人と特別に緊密な関係にあったと家庭裁判所に認められた人や団体を指します。例としては、内縁の配偶者、事実上の養子、生前に献身的に療養看護に努めた人などが挙げられます。
特別縁故者が財産を受け取るためには、相続人不存在が確定してから3か月以内に、家庭裁判所に「財産分与の申立て」を行う必要があります。家庭裁判所は、故人との関係性や貢献度などを総合的に考慮し、分与の可否や金額を決定します。
なお、特別縁故者への財産分与は、遺贈とみなされ相続税の課税対象となり、原則として2割加算の対象となります。
(3) 最終的な国庫帰属
上記(1)と(2)の手続きを経てもなお残った財産、あるいは遺言書も特別縁故者も存在しない場合は、その残余財産は最終的に国庫に帰属し、国のものとなります(民法959条)。2022年度の段階で国庫に帰属した金額は768億円にのぼるとされており、このケースは増加傾向にあります。
3.相続人不存在の場合の複雑な手続きの流れ
相続人不存在となった場合、遺産は勝手に処分できず、法的な清算手続きを進めるために、家庭裁判所に相続財産清算人(令和5年4月1日以前は「相続財産管理人」)の選任を申し立てる必要があります。
この申立ては、被相続人の債権者や受遺者、特別縁故者などの利害関係人、または検察官が行います。相続財産清算人には、通常、弁護士や司法書士などの専門家が選任され、中立的な立場で財産の調査・管理・清算を担います。
(1) 相続財産清算人の選任と公告
家庭裁判所が相続財産清算人を選任すると、その旨と、相続人がいる場合に名乗り出るよう求める「相続人捜索の公告」を官報で行います。この公告期間は6か月以上と定められています。
(2) 債権者・受遺者の申出の公告
上記と並行して、相続財産清算人は、債権者や受遺者に対して、2か月以上の期間を定めて請求を申し出るよう公告します。期間満了後、申出のあった債権者や受遺者には、遺産から支払いや遺贈が行われます。
(3) 相続人不存在の確定と財産分与
相続財産清算人の選任後、家庭裁判所による相続人捜索の公告期間(6か月以上)が満了し、相続人が現れなかった場合、相続人不存在が確定します。
法改正(令和5年4月1日施行)前は、各公告を段階的に行う必要があったため、確定までに最低10ヶ月以上を要していました。しかし、改正後は相続財産清算人の選任公告、債権者・受遺者の申出の公告、相続人捜索の公告の3つの公告を同時期に並行して行うことができるようになったため、相続人不存在が確定するまでの期間は最短6ヶ月に短縮されました。
確定後3か月以内に特別縁故者から申立てがあれば、家庭裁判所の審判を経て財産が分与されます。
(4) 国庫帰属と期間・費用
相続人不存在の確定自体は最短6ヶ月で可能となりましたが、その後の特別縁故者への財産分与申立て期間(3ヶ月以内)を経る必要があり、さらに債権者への弁済や不動産などの財産処分の手続きにかかる期間も含めると、この一連の清算手続き全体が完了し、最終的に国庫に帰属するまでには、依然として最低でも10ヶ月以上かかることが一般的です。
また、相続財産清算人の報酬や公告費用などを賄うための予納金(数十万円から100万円程度)を、申立人が家庭裁判所に納める必要があるケースもあります。これは、残された関係者にとって経済的・時間的に大きな負担となります。
4.知っておきたい相続人不存在の注意点
不動産の共有者と特別縁故者の優先順位
もし亡くなった方が共有不動産の持分を持っていた場合、民法には相続人がいないときその持分は他の共有者に帰属する旨の規定がありますが、最高裁判所の判断により、特別縁故者への財産分与が共有者への帰属よりも優先されます。つまり、特別縁故者が財産を分与された後に残った持分があれば、それが他の共有者に帰属するという順番になります。
遺産の勝手な処分は禁止
相続人不存在のケースで、親族や知人であっても、遺された財産(家財、預貯金、不動産など)を勝手に処分したり、解約したりすることは許されません。すべての財産は相続財産清算人が管理・清算する対象となります。
5.大切な財産を活かすための生前対策
相続人不存在の場合、手続きは複雑で時間がかかり、最終的に財産が国庫に帰属してしまうリスクがあります。
自分の意思を反映させ、残された方々の負担を減らすためには、生前対策が不可欠です。
(1) 遺言書の作成で遺産の行き先を明確に
最も確実で重要な対策は、遺言書を作成しておくことです。
遺言書があれば、法定相続人がいない場合でも、財産の承継先を自由に指定し、意図しない国庫帰属を避けることができます。例えば、内縁の配偶者やお世話になった人へ財産を遺贈したり、社会貢献のために特定の団体に寄付したりする、といった意思を実現できます。
遺言書があれば、相続財産清算人の選任手続きが不要になり、残された関係者の負担が大きく軽減されます。
特に、形式不備や紛失のリスクが低い公正証書遺言を作成し、遺言書の内容を確実に実現させる遺言執行者(司法書士などの専門家を指定可能)を決めておくことが推奨されます。
(2) その他の生前対策
• 死後事務委任契約:葬儀の手配や行政手続き、医療費の精算など、ご逝去後の事務処理を第三者に委任する契約です。相続人不存在の場合には、財産管理とは別に、これらの事務を担う人がいないため、遺言書と併せて検討することが重要です。
• 生前贈与:生きている間に財産を贈与する方法です。贈与者は財産の使い道を見届けることができ、贈与を受けた側も確実に財産を取得できます。
6.専門家からのメッセージ
相続人不存在の問題や、大切な方へ確実に財産を引き継ぐための遺言書作成は、多くの方にとって初めて直面する複雑な課題です。
私たち高野司法書士事務所は、相続・遺言手続きを専門としており、お客様一人ひとりの想いを実現し、未来に不安を残さないためのサポートを提供しています。
相続人不存在の懸念がある方には、公正証書遺言の作成を全面的に支援いたします。法的に有効で、ご依頼者様の明確な意思が反映された遺言書を作成し、大切な財産が意図しない形で国庫に帰属してしまうことを防ぎます。
相続や遺言に関するご不安、疑問がございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの想いを未来へつなぐお手伝いを、責任をもって務めさせていただきます。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
遺贈と相続って何が違うの?
「遺贈」と「相続」は、どちらも亡くなった方の財産を特定の人に引き継がせるという意味合いで使われますが、法律上の性質や手続き、そして税金面において決定的な違いがあります。
特に、遺言書を作成する際にこの二つの言葉を誤って使用すると、受け取る側が不利益を被ったり、手続きが複雑になったりする可能性があります。
この記事では、法律を専門としない方にもわかりやすく、遺贈と相続の基本的な違いから、手続き上の注意点、そして相続税に関する重要な留意点までを詳しく解説します。大切な財産をご自身の意志通りに、そして円滑に次世代へ引き継ぐための参考にしてください。
1.相続と遺贈の基本的な違い
相続と遺贈の最も大きな違いは、「誰が財産を受け取るのか」という財産を受け取る相手の範囲です。
1. 相続は法定相続人が対象
「相続」とは、民法で定められた法定相続人(配偶者、子、父母、兄弟姉妹など)が、亡くなった方(被相続人)の財産を包括的に承継することを指します。
相続においては、財産の権利だけでなく、借金などの負債(マイナスの財産)も原則として承継されます。遺言書がない場合でも、法定相続人が法律で定められた相続分に従って財産を引き継ぐことが可能です。
遺言書で法定相続人に対して財産を引き継がせる場合、「相続させる」という文言が使われます。この「相続させる」という表現は、遺産分割の方法を指定する法的意味合いを持ちます。
2. 遺贈は誰にでも財産を譲れる
「遺贈(いぞう)」とは、亡くなった方(遺言者)が遺言書によって、財産の一部または全てを無償で譲ることを意味します。遺贈を受ける人や団体を受遺者(じゅいしゃ)と呼びます。
遺贈の最大のポイントは、法定相続人以外の人や法人・団体にも財産を譲渡できる点です。
例えば、婚姻関係がない内縁の配偶者、養子縁組をしていない連れ子、法定相続人ではない孫や子の配偶者(長男の妻など)、あるいは、お世話になった友人、NPO法人、学校、地方自治体などに財産を遺したい場合に利用されます。
また、遺言書で法定相続人に対して財産を引き継がせる場合にも、「遺贈する」という言葉を使うことは可能です。ただし、後述する手続き上の煩雑さから、相続人に対しては「相続させる」という表現を使うことが推奨されています。遺贈は、法的には財産の無償譲渡とみなされます。
2.遺贈の2つの種類:包括遺贈と特定遺贈
遺贈には、財産の渡し方によって「包括遺贈(ほうかついぞう)」と「特定遺贈(とくていいぞう)」の2種類があります。この違いは、負債の承継や手続きに大きく影響するため、非常に重要です。
1. 包括遺贈(割合を指定する方法)
包括遺贈とは、遺産の全体または(遺産全体に対して)割合を指定して財産を譲る方法です。例として、「全財産の半分(2分の1)をAに遺贈する」といった指定が該当します。
包括受遺者は、その割合に応じて相続人と同一の権利と義務を持つことになります。したがって、借金やローンなどの負債(マイナスの財産)も割合に応じて承継する必要があるため、注意が必要です。
また、包括遺贈の場合、受遺者は他の相続人に交じって遺産分割協議に参加し、具体的にどの財産を取得するかを決める必要があります。
2. 特定遺贈(特定の財産を指定する方法)
特定遺贈とは、遺産の中から特定の財産を指定して譲る方法です。例として、「〇〇銀行の預金100万円をBさんに遺贈する」「甲土地をC団体に遺贈する」といった指定が該当します。
特定遺贈では、指定された財産のみを取得するため、原則として負債を引き継ぐ必要はありません。そのため、福祉団体やNPO法人など、法人が遺贈を受け入れる場合は、リスクを抑えられる特定遺贈として受け入れるケースがほとんどです。
3.手続き上の大きな違い(不動産登記を中心に)
遺贈と相続では、特に不動産(土地や建物)の名義変更を行う際の不動産登記手続きにおいて大きな違いが生じます。
1. 相続人に「相続させる」場合
遺言書で法定相続人に「相続させる」と記載されている場合、その財産を取得する相続人は単独で相続登記(所有権移転登記)を申請することができます。これにより、他の相続人全員の協力や署名・押印、印鑑証明書が不要となり、手続きをスムーズに進められます。
2. 相続人に「遺贈する」場合
かつては、相続人に「遺贈する」と記載されている場合、受遺者である相続人が単独で登記をすることができず、他の相続人全員との共同で手続きを進める必要がありました。しかし、令和5年4月1日の不動産登記法改正により、相続人に対する遺贈であれば、受遺者である相続人が単独で登記申請を行うことが可能になりました。
3. 相続人以外に「遺贈する」場合
遺言書で相続人ではない第三者や団体に「遺贈する」と記載されている場合は、原則として、受遺者(財産を取得する人)と法定相続人全員が共同で登記申請を行う必要があります。
ただし、遺言書で遺言執行者が指定されている場合は、受遺者と遺言執行者が共同で登記申請を行うことができます。このため、相続人以外へ遺贈する場合は、トラブルや手続きの煩雑さを避けるために、遺言執行者を指定しておくことが推奨されます。
4. 農地や借地権の承継
特定の権利を承継する際にも、相続と遺贈では違いがあります。
• 農地取得:農地を取得する際、通常は農業委員会(市町村に設置されている行政委員会)の許可が必要ですが、相続人が相続または遺言(相続させる/遺贈するのどちらでも)で取得する場合、許可は不要です。ただし、相続人以外への特定遺贈の場合は、原則として農業委員会の許可が必要となります。
• 借地権・借家権:借地権や借家権を承継する場合、地主や大家(賃貸人)の承諾が必要です。しかし、「相続させる遺言」による承継の場合は、包括的な権利承継とみなされるため、賃貸人の承諾は不要です。一方、遺贈の場合は、原則として賃貸人の承諾が必要となり、承諾料を請求されることもあります。
4.相続税と遺贈:税制面での注意点
遺贈も相続も、亡くなった方の財産を原因として財産を取得するため、原則として相続税の課税対象となります。ただし、遺贈の場合、特に受遺者が法定相続人以外であると、税制面で不利になる点がいくつかあります。
1. 基礎控除額の計算における違い
相続税には非課税枠である基礎控除が設けられています。基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という計算式で算出されます。
この計算において、遺贈によって財産を受け取った人(受遺者)が法定相続人ではない場合、その受遺者は「法定相続人の数」には含まれません。
法定相続人以外の受遺者がいる場合、財産を受け取る人数が増えても基礎控除額は増えないため、結果的に課税対象となる遺産総額が大きくなる可能性があります。
2. 相続税の2割加算
遺贈によって財産を取得した人が、亡くなった方の配偶者や一親等の血族(子や父母)および代襲相続人となった孫以外である場合、その人が納めるべき相続税額が2割加算されます。
この2割加算は、祖父母や兄弟姉妹が相続人となる場合にも適用されます。例えば、長男の配偶者(お嫁さん)や、法定相続人ではないお孫さん、お世話になった友人などが遺贈を受けた場合、相続税が2割増しになるため、受遺者の税負担が大きくなることに注意が必要です。
3. その他の税金負担(不動産関連)
不動産を遺贈する場合、相続と比較して税負担が増加する可能性があります。
• 不動産取得税:相続で不動産を取得した場合は非課税ですが、相続人ではない人への特定遺贈によって不動産を取得した場合、地方税である不動産取得税が課税されます。
• 登録免許税:不動産の名義変更(登記)にかかる登録免許税の税率も異なります。相続の場合や法定相続人への遺贈の場合、不動産評価額の0.4%ですが、法定相続人以外への遺贈の場合、税率は2.0%と高くなります。
5.遺贈と相続放棄:負債を避けるための選択肢
包括遺贈の場合、受遺者は負債も承継するリスクがあるため、財産の受け取りを拒否する相続放棄(または遺贈の放棄)の選択肢も重要になります。
1. 包括遺贈の放棄
包括遺贈の受遺者は相続人と同じ権利義務を持つため、遺贈を放棄したい場合は、包括遺贈があったことを知った日から3か月以内に、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して遺贈放棄の申述書を提出しなければなりません。
この3か月の期間を過ぎてしまうと、原則として遺贈を承認したものとみなされます。負債が多い場合に包括遺贈を放棄することは、受遺者にとってのリスク回避手段となります。
2. 特定遺贈の放棄
特定遺贈の場合、財産を受け取らない意思を、遺言執行者や他の相続人などの遺贈義務者に対して意思表示すればよく、家庭裁判所での手続き(相続放棄の申述)は不要です。また、原則として放棄の期限も定められていません。ただし、利害関係者から催告を受けた場合、指定期間内に回答しないと承認したものとみなされるため、速やかな意思表示が求められます。
6.トラブルを避けるための最重要ポイント
遺贈は自由度の高い制度ですが、遺言者が亡くなった後に親族間で「争族」を招かないよう、細心の注意を払う必要があります。
1. 遺留分への配慮
遺留分とは、亡くなった方の兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者、子、父母など)に、法律上最低限保障されている遺産の取得分のことです。
遺言書の内容がこの遺留分を侵害している場合でも、その遺言自体が無効になるわけではありません。しかし、遺留分を侵害された相続人(遺留分権利者)は、遺贈を受けた受遺者に対して遺留分侵害額請求(金銭の請求)を行うことができます。これにより、受遺者と相続人の間でトラブルが発生し、遺言者の意思が完全に実現されない可能性があります。
トラブルを避けるためには、遺言書を作成する際に、遺留分権利者に遺留分相当額を相続させるなど、遺留分を侵害しないよう十分配慮することが重要です。
2. 遺言執行者の指定
遺贈を行う場合、遺言書の内容を確実に実行するために、遺言執行者を指定しておくことが強く推奨されます。
遺言執行者は、相続人全員の代理人として、遺贈された財産の登記や名義変更、預貯金の引き出しなどの手続きを単独で行う権限と義務を持ちます。遺言執行者を指定することで、相続人や受遺者の負担を軽減し、手続きの円滑化を図ることができます。
7.相続・遺言手続きでお悩みなら高野司法書士事務所へ
相続や遺贈に関する手続きは、非常に専門性が高く、一般の方がご自身で全てを円滑に進めるのは難しいのが現状です。
高野司法書士事務所は、相続・遺言手続きを専門としており、お客様の想いを汲み取り、法的に有効かつ将来のトラブルを未然に防ぐための遺言書作成サポートを得意としております。
• 煩雑な手続きをすべて代行:不動産の名義変更(相続登記)、遺言執行者のサポート、複雑な戸籍収集など、専門知識が必要な手続きを一貫してサポートいたします。
• トラブル回避の設計:遺留分を考慮した遺言内容の設計や、相続人への説明方法など、長年の経験に基づいた円満な承継を実現するためのアドバイスを提供します。
• 確実な遺言の実現:公正証書遺言の作成支援を推奨し、お客様の遺言の意思を法的に最も確実な形で実現できるよう尽力します。
「自分の想いを確実に残したい」「家族間の争いを避けたい」「遺言の手続きで何をすべきか分からない」といった不安をお持ちであれば、ぜひ一度、高野司法書士事務所にご相談ください。私たちは、お客様の大切な財産と想いを未来へつなぐお手伝いをさせていただきます。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
未登記建物の相続手続きガイド
亡くなった方が所有していた実家や建物について、相続手続きを進める中で「未登記建物」であることが判明し、困惑されるケースは少なくありません。未登記建物とは、法務局に正式に登記(登録)されていない建物のことを指し、通常の不動産相続よりも複雑な手続きが必要となります。
未登記のまま放置すると、将来的な売却や活用が難しくなるだけでなく、法律上の義務違反となるリスクも伴います。
ここでは、法律の専門家ではない方にも分かりやすいよう、未登記建物の定義から、放置するリスク、そして名義変更を含む具体的な相続手続きの流れについて詳しく解説します。
1.未登記建物とは?その存在と確認方法
未登記建物とは、文字通り登記がされていない建物です。具体的には、建物の大きさや構造といった物理的な情報が記載される登記簿の「表題部」の登記がない建物を指します。
不動産登記法により、建物を新築したり、表題登記がない建物の所有権を取得したりした場合、取得日から1か月以内に表題登記を申請することが義務付けられています。しかし、実際には、住宅ローンを利用しなかった場合や、登記手続きを失念したまま所有者が亡くなってしまった場合など、さまざまな理由で未登記のまま残されている建物が存在します。
未登記建物かどうかを確認する方法
相続した建物が未登記かどうかを確認する最も手軽な方法は、固定資産税納税通知書に同封されている課税明細書を確認することです。
- 家屋番号の記載:登記済みの建物には「家屋番号」が記載されていますが、未登記建物の場合、この家屋番号が空欄または「未登記家屋」といった記載になっている可能性が高いです。
- 登記事項証明書の請求:法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を請求し、取得できなければその建物は未登記であると判断できます。
なお、未登記建物であっても、固定資産税は課税されます。これは、法務局の登記簿とは別に、市区町村が独自の台帳(名寄帳など)で所有者を把握し、その情報をもとに課税しているためです。固定資産税を支払っているからといって、登記されているとは限らない点に注意が必要です。
2.未登記建物を放置するリスクとデメリット
未登記建物を相続したにもかかわらず、登記手続きをせずにそのまま放置すると、多くの重大なデメリットが発生します。
法律上の義務違反と過料のリスク
まず、表題登記の申請は法律上の義務です。所有権を取得した日から1か月以内に申請を怠った場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
また、2024年4月1日からは相続登記が義務化されましたが、未登記建物自体は、権利部に所有権の登記名義人がいないため、相続登記義務化の直接的な対象外とされています。しかし、表題登記の申請義務は元々存在しており、今後は国や自治体が未登記不動産の所有者を特定しようとする動きが強まる可能性もゼロではありません。
所有権の主張ができない
登記は他人に所有権を主張するための重要な手段です。登記がない状態では、自分がその建物の真の所有者であることを法的に証明できず、第三者に対して権利を主張できません。
例えば、万が一、自分の知らない間に他者名義で登記されてしまった場合や、建物を建てている土地(底地)が売却された場合などには、所有権を失ったり、新しい土地所有者からの立ち退き要求を拒否できなくなるリスクがあります。
売却や融資が困難になる
未登記建物は、売却や活用が極めて難しいという大きなデメリットがあります。
1. 融資を受けられない:住宅ローンを組む際には、購入する不動産に抵当権を設定して担保とするのが一般的です。しかし、未登記の建物には抵当権を設定できないため、金融機関から融資を受けることができません。
2. 売却が困難:買主は、所有権が公的に証明されていない未登記物件の取引に慎重になります。また、売却する際にも、買主名義で所有権移転登記を行う前に、まず売主名義で表題登記と所有権保存登記を行う必要があるため、手続きが複雑化し、売却のタイミングを逃すリスクがあります。
相続税や固定資産税で損をするリスク
税金面でもデメリットが生じます。未登記建物が存在すると、土地にかかる固定資産税の軽減措置(住宅用地の特例)が適用されず、本来よりも高い固定資産税を支払っている可能性があります。
また、自治体の現地調査などで未登記の存在が判明した場合、これまで支払われていなかった過去分の固定資産税をまとめて請求されるリスクもあります。
さらに、相続税の申告が必要な場合、未登記建物であっても相続財産に含まれるため、その相続税評価額を算出しなければなりません。未登記のため正確な情報が不足している場合、専門家による測量や鑑定が必要となり、手続きが煩雑化する可能性があります。
将来の相続手続きの複雑化
未登記のまま所有者が亡くなり放置しておくと、時間の経過とともに相続人が増え続け、いざ登記をしようとした際に、複雑な相続人調査や遺産分割協議が必要になり、手続きが極めて困難になるリスクがあります。
3.未登記建物を相続した際の手続きの流れ
未登記建物を相続した場合、通常の名義変更(所有権移転登記)とは異なり、まず建物の存在を公的に記録する表題登記から始める必要があります。手続きは以下の流れで進めます。
Step 1: 遺産分割協議書の作成と相続人の決定
未登記建物であっても、財産的価値があるため、相続財産として遺産分割の対象となります。相続人が複数いる場合は、まず遺産分割協議を行い、誰がその建物を相続するのかを決定し、相続人全員の合意を得る必要があります。
遺産分割協議書への記載方法の注意点
登記済みの建物と違い、未登記建物には登記簿謄本が存在しないため、遺産分割協議書に建物を特定する情報を記載する際には特別な注意が必要です。
遺産分割協議書には、未登記である旨を明記し、固定資産評価証明書や名寄帳に記載されている建物の所在地、種類、構造、床面積などの情報を引用して特定します。これにより、相続人全員の合意内容を文書として明確に残します。
Step 2: 表題登記の申請(建物の公的な記録)
表題登記は、未登記建物の相続手続きにおける最初の必須ステップです。表題登記を行うことで、建物の所在地、家屋番号、構造、床面積、所有者の住所氏名など、建物の物理的な情報が登記簿の「表題部」に記録され、新たな登記簿が作成されます。
専門家と必要書類
表題登記は、建物の測量や図面作成(建物図面、各階平面図)が必要となるため、土地家屋調査士に依頼して代行してもらうのが一般的です。費用は建物の規模や構造、地域によりますが、土地家屋調査士への報酬として8万円から15万円程度が目安とされています。
申請には、登記申請書のほか、建物の図面、建築確認済証、検査済証、工事完了引渡証明書、固定資産評価証明書、そして遺産分割協議書を含む相続に関する資料(戸籍謄本、住民票など)が必要となります。古い建物の場合、これらの書類が紛失していることが多いため、専門家への早期相談が推奨されます。
Step 3: 所有権保存登記の申請(名義変更の準備)
表題登記が完了し、建物の存在が公的に認められたら、次に建物の所有者を明確にするために所有権保存登記を申請します。これは登記簿の「権利部(甲区)」に所有者情報を記録する手続きです。
所有権保存登記は法律上の義務ではありませんが、これを行うことで所有権を公的に公示し、第三者に対して権利を主張できるようになります。法律上、被相続人名義でも相続人名義でも登記が可能ですが、相続人名義で登記するのが実務上一般的です。
専門家と費用(登録免許税)
所有権保存登記の手続きは、申請書の記入など専門的な知識が必要となるため、司法書士に依頼するのが一般的です。司法書士への報酬は、2万円から6万円程度が目安です。
また、この登記には登録免許税が発生します。登録免許税の額は、不動産の評価額(固定資産評価額)に税率(0.4%)をかけた金額が基本となります。
登録免許税=不動産の評価額×0.4%
4.未登記建物を解体する場合の注意点
相続した未登記建物が老朽化しており、解体する予定がある場合は、表題登記や所有権保存登記をあえて行う必要はありません。建物を取り壊せば、その建物に権利は発生しなくなるからです。
ただし、解体後も市区町村の課税台帳には情報が残ってしまうため、固定資産税が課税され続けないよう、解体後は必ず役場(資産税課など)に「家屋滅失届出書」を提出しなければなりません。この届出を怠ると、固定資産税の負担が続くことになります。
5.早期対応と専門家への相談の重要性
未登記建物を相続することは、通常の相続手続きに加えて、表題登記と所有権保存登記という2段階の作業が必要となり、非常に複雑で手間がかかります。特に、相続登記の義務化が進む現代において、未登記のまま放置すれば、過料のリスクや所有権を主張できないといった深刻なデメリットが生じます。
また、遺産分割協議書の作成においても、未登記建物の特定には専門的な知識が必要であり、相続税の計算においても、建物の評価が難しくなることがあります。
名義変更を確実に行い、将来的なトラブルや税金のリスクを避けるためには、未登記建物が判明した時点で速やかに、土地家屋調査士や司法書士といった専門家に相談し、適切な手続きを進めることが最善の策といえるでしょう。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
相続登記の登録免許税の計算方法
相続が発生し、亡くなった方が所有されていた不動産を承継する場合、相続登記(正式名称:相続による所有権移転登記) の手続きが必須となります。この手続きは、不動産の所有権を公的に証明するために不可欠ですが、申請時には登録免許税という税金が課されます。
2024年4月1日からは相続登記が義務化され、不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請を行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があるため、迅速かつ正確な手続きが求められます。
本記事では、相続登記をスムーズに進めるために、登録免許税の基本的な計算方法から、正確な税額を導くための具体的な手順、適用される免税措置、そして納付方法までを詳しく解説します。
1.登録免許税とは:相続登記に必要な税金の基礎知識
登録免許税は、不動産や会社、資格などに関する登記・登録といった行政サービスに対して課される国税です。相続登記の場合、その税額は、対象となる不動産の価格(課税標準額)に一定の税率をかけて算出されます。
相続や遺贈によって不動産を取得した場合は、登録免許税の税率は0.4%が適用されるのが一般的です。ただし、遺贈によって相続人以外の人が不動産を取得した場合は、税率が2.0%となります。
登録免許税の計算式は以下の通りです。
登録免許税額 = 課税標準額 × 税率
この計算を正確に行うことが、適正な納税、ひいてはスムーズな相続登記の鍵となります。
2.登録免許税の「課税標準額」を確定する手順
登録免許税の計算の基礎となる課税標準額は、不動産の固定資産税評価額を基に算出されます。課税標準額を確定するためには、次のステップを踏みます。
1. 固定資産税評価額の確認と課税明細書の見方
まず、課税標準額の基となる不動産の固定資産税評価額を調べる必要があります。この情報は、主に以下の書類で確認できます。
- 固定資産税・都市計画税 課税明細書
- 固定資産評価証明書
課税明細書は、通常、毎年4月から6月頃に不動産の所有者宛に送付される固定資産税の納税通知書に同封されています。
課税明細書の「見方」で注意すべき点
課税明細書や固定資産評価証明書を確認する際、登録免許税の計算基準となるのは「価格」または「評価額」と表記されている箇所です。
書類上には、「固定資産税課税標準額」という名称の金額も記載されていますが、これは固定資産税などを計算するための基準であり、登録免許税の算定基準とは異なりますので、絶対に混同しないように注意しましょう。
また、計算に使用する評価額は、登記を申請する日が属する年度(4月1日~翌年3月31日)の最新のものを使用しなければなりません。
2. 課税標準額の計算ルール
複数の不動産がある場合
相続登記を一つの申請書で複数の不動産について行う場合(例:土地と建物、または複数筆の土地)、それぞれのすべての固定資産税評価額を合算します。
合算した合計額について、1,000円未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てます。この切り捨てを行った金額が、登録免許税の課税標準額となります。
共有持分を相続する場合
亡くなった方が不動産の一部(共有持分)を所有していた場合、不動産全体の固定資産税評価額に、移転する持分の割合をかけて、相続する持分の評価額を算出し、その後1,000円未満の切り捨てを行います。
3. 特殊な不動産の場合の評価額
マンション(敷地権付き区分建物)
マンションを相続する場合、建物(専有部分)の評価額に加えて、土地(敷地部分)の評価額も考慮します。敷地部分の評価額は、マンション全体の土地の評価額に、敷地権割合をかけて算出し、建物と合算します。
非課税の土地(私道など)
私道や公衆用道路など、固定資産税が非課税となっている土地であっても、相続登記を行う際には登録免許税が課税されます。これらの非課税地の評価額が固定資産評価証明書に記載されていない場合、近隣の宅地(近傍宅地)の単価を基に評価額を算出します。公衆用道路の場合、近傍宅地の1㎡あたりの価額に地積と30%を乗じて計算するのが一般的です。
3.最終的な税額の算出と端数処理
課税標準額に税率(相続人の場合は0.4%)をかけた後、最終的な税額を確定するために再度端数処理が必要です。
算出した金額に100円未満の端数がある場合は、その端数を切り捨てます。 また、計算結果が1,000円未満となった場合でも、登録免許税の最低額は1,000円と定められています。
4.相続登記の登録免許税の免税措置
長期間放置された相続登記の解消を促すため、現在、土地に限り登録免許税が免除される免税措置が設けられています。この措置は令和9年3月31日までに登記申請を行った場合に適用されます。
1. 免税措置が適用される2つのケース
以下の2つの要件を満たす土地の相続登記が免税措置の対象となります。
① 相続登記をしないまま亡くなった場合(数次相続)
相続人が相続により土地を取得したにもかかわらず、その相続登記を行わないまま死亡した場合、その亡くなった個人の名義とするための相続登記については、登録免許税が免除されます。これは、数次相続が発生した場合の、中間省略登記が可能でない場合の一次相続登記の負担を軽減するものです。
② 土地の価額が100万円以下の場合
相続によって取得した土地の固定資産税評価額(価額)が100万円以下であるときは、登録免許税が免除されます。この基準は、令和4年度の税制改正で10万円から100万円に引き上げられ、適用対象が全国に拡大されました。
2. 免税措置を受けるための手続き
免税措置の適用を受けるためには、法務局に提出する登記申請書に、その根拠となる法令の条項を必ず記載しなければなりません。
• 数次相続の場合:「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」。
• 価額100万円以下の場合:「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」。
この記載が漏れると、免税措置は適用されませんので、細心の注意が必要です。
5.登録免許税の納付方法
登録免許税は、相続登記の申請を行う際に納付します。納付方法は主に以下の3種類です。
1. 収入印紙による納付
実務上、最も一般的な納付方法です。郵便局などで購入した収入印紙を、登記申請書に添付する別紙に貼り付けて提出します。高額な場合でもこの方法が利用されることが多いです。
2. 現金による納付
現金で納付する場合、法務局の窓口では直接支払いができないため、金融機関または税務署で納付手続きを行います。納付後、交付された領収証書を登記申請書に添付して提出します。
3. キャッシュレス(オンライン)納付
オンラインで登記申請を行う場合は、インターネットバンキングやモバイルバンキング、ATMを利用して電子納付が可能です。これにより、自宅などから申請から納付までの手続きを完了できます。
6.司法書士へのご相談をおすすめいたします
登録免許税の計算は、複数の不動産や特殊な評価が必要な場合、また課税明細書と登記簿の情報の相違がある場合の見方の判断など、専門的な知識が必要とされる場面が多くあります。正確かつスムーズに手続きを完了させたい、複雑な計算や書類の準備に不安があるという場合は、ぜひ専門家にご相談ください。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
亡くなった親の預金、どう引き出す?
「親が亡くなったが、葬儀費用や当面の生活費をどう工面したらよいのだろうか」—このような状況で、故人名義の預貯金口座に頼りたいと考えるのは自然なことです。しかし、故人の銀行口座は、死亡の事実が金融機関に伝わった時点で原則として凍結され、自由に引き出しができなくなります。
この凍結を解除し、預金を引き出すためには、法律に基づいた相続手続きを行う必要があります。本記事では、故人の預貯金を引き出すための具体的な方法、急ぎで資金が必要な場合の仮払い制度の活用、そして相続トラブルを未然に防ぐための注意点について、分かりやすく解説します。
1.故人の預貯金口座の現状:なぜ口座凍結されるのか
誰かが亡くなると、その人名義の預金は遺産となり、相続人全員の共有財産となります。金融機関が口座名義人の死亡を知ると、遺産が確定するまでの間、財産の保全と相続人同士の不正な引き出しを防ぐ目的で、直ちに口座を凍結します。
凍結された口座からは、キャッシュカードや通帳を使った預金の引き出しはもちろん、振り込みや公共料金などの自動引き落としもできなくなります。
銀行が死亡の事実を知るタイミング
金融機関が名義人の死亡を知るきっかけの多くは、相続人や親族からの連絡です。死亡届を役所に提出しても、その情報が金融機関に自動的に共有されることはありません。しかし、新聞の訃報や葬儀の情報などをきっかけに、銀行が死亡の事実を把握し、遺族に確認した上で凍結措置を取ることもあります。
2.凍結前(死亡直後)の引き出しと潜在的リスク
故人の死亡後であっても、金融機関がまだ死亡の事実を把握しておらず、口座が凍結されていない状態であれば、キャッシュカードと暗証番号を使って預金を引き出すことは物理的には可能です。しかし、この行為には重大なリスクが伴います。
トラブルを避けるための鉄則:事前共有と記録
故人名義の預金は、遺産分割が完了するまでは相続人全員の共有財産です。たとえ葬儀費用などやむを得ない目的であっても、他の相続人に無断で預金を引き出すと、後に「使い込みではないか」と疑われ、相続トラブルに発展する可能性が非常に高くなります。
トラブルを回避するためには、以下の2点を徹底することが極めて重要です。
- 他の相続人全員に事前に(もしくは直後に)引き出しの事実と目的を共有する。
- 引き出した金額を証明できる領収書や明細書を必ず残し、使用使途を明確にする。
相続放棄ができなくなるリスク(単純承認)
最も注意すべきリスクの一つが単純承認とみなされることです。故人に多額の借金(マイナスの財産)があった場合、相続人は相続放棄を選択できますが、預金の一部を「自分のために」使ってしまうと、単純承認が成立し、負債を含めた全ての財産を相続せざるを得なくなります。
葬儀費用などの支払いは問題視されにくいとされる一方で、個人的な用途に使ったと判断されると危険です。借金の有無が不明な場合は、安易に預金に手を付けず、正式な手続きを踏むべきです。
3.口座凍結後に預金を引き出す3つの方法
口座が凍結された後、預金を引き出すには、主に「正式な相続手続き」「遺産分割前の払戻し制度」「家庭裁判所の仮処分」の3つの方法があります。
1. 原則的な方法:正式な相続手続きによる払い戻し
最も確実な方法は、遺産分割を確定させ、銀行に対して凍結解除と払い戻し(解約)を依頼する手続きです。
手続きの3ステップ
一般的な銀行の相続手続きは、以下のステップで進められます。
1. ステップ1:金融機関への連絡と必要書類の確認 故人が口座を持っていた金融機関に連絡し、相続手続きを開始したい旨を伝えます。銀行側から必要な書類の一覧や所定の届出用紙が案内されます。
2. ステップ2:必要書類の収集と提出 相続の状況に応じた書類を収集し、銀行所定の書類に記入・捺印(相続人全員の実印が必要な場合が多い)の上、提出します。
3. ステップ3:口座の解約・払い戻し 提出された書類に基づき、銀行側で審査が行われます。手続き完了までには通常2週間~1ヶ月程度かかるとされています。
相続状況別の必要書類
必要な書類は、遺言書の有無や遺産分割協議が成立しているかどうかによって大きく異なります。
| 相続パターン | 主な必要書類 | 根拠となる書類 |
| 遺言書がある場合 | 被相続人の戸籍謄本、遺言書(原本)、検認済証明書(公正証書遺言等以外)、預金を受け取る相続人の印鑑証明書 | 遺言書 |
| 遺言書はないが遺産分割協議書がある場合 | 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、相続人全員の印鑑証明書 | 遺産分割協議書 |
| 遺言書も遺産分割協議書もない場合(法定相続分での分割など) | 上記の戸籍謄本一式、相続人全員の印鑑証明書、金融機関所定の相続関係届出書など | 相続人全員の協力 |
特に、戸籍謄本は故人の出生から死亡までの連続したものが必要とされることが多く、収集に時間がかかるため、早めに準備を始めることが重要です。
2. 急ぎの場合に便利:遺産分割前の払戻し制度
葬儀費用や当面の生活費など、緊急で資金が必要な場合は、2019年の相続法改正で新設された「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」(仮払い制度)の活用が有効です。
この制度を利用すれば、遺産分割協議が完了する前でも、相続人単独で故人の預金の一部を引き出すことが可能です。
払戻しの上限額
金融機関の窓口で手続きを行う場合、引き出せる金額には以下の上限が設けられています。
- 引き出し上限額:相続開始時の預金残高 × 1/3 × 払い戻しを行う相続人の法定相続分
- 金融機関ごとの上限:上記計算結果が150万円を超える場合でも、1金融機関あたり150万円が上限となります。
- 例:預金残高600万円、法定相続人:配偶者と子2人(法定相続分がそれぞれ1/2、1/4)の場合
- 配偶者:600万円 × 1/3 × 1/2 = 100万円
- 子(1人あたり):600万円 × 1/3 × 1/4 = 50万円
必要書類(仮払い制度利用時)
この制度を利用する場合の主な必要書類は、以下の通りです。
- 被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
- 相続人全員の戸籍謄本
- 払戻しを希望する相続人の印鑑証明書
3. 高額な資金が必要な場合:家庭裁判所の仮処分
上記の払戻し制度の上限額(150万円)を超えて、緊急でまとまった資金が必要な場合は、家庭裁判所の保全処分(預貯金債権の仮分割の仮処分)を利用する方法があります。
この手続きは、遺産分割の調停や審判が家庭裁判所に申し立てられていることが前提となります。裁判所が払戻しの必要性(債務の弁済や相続人の生活費の支弁など)を認め、他の相続人の利益を害さないと判断した場合、一定の金額の引き出しが許可されます。
4.相続放棄を検討している場合の注意点
故人に借金などのマイナス財産が多い可能性がある場合、相続放棄を検討することが重要です。
相続放棄を検討しているにもかかわらず、故人の預金に手を付けてしまうと、単純承認とみなされ、相続放棄ができなくなるリスクがあります。
• 預金残高が少ない場合であっても、手続きの手間を考慮して、あえて口座凍結を解除せずに放置しておくという選択肢もあります。
• 相続財産に手を付けたかどうかは、預金をおろした目的や使途によって判断されますが、トラブルを防ぐためにも、相続放棄や限定承認を視野に入れている場合は一切預金に触れないことが賢明です。
相続放棄や限定承認は、自己のために相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があり、期限が定められています。
5.生前からできるトラブル回避のための準備
亡くなった後の預金引き出し手続きをスムーズに行い、残された家族の負担を軽減するためには、親が元気なうちに生前対策を講じることが非常に有効です。
1. 銀行口座の一覧表作成と整理
親がどの金融機関に口座を持っているか、残高はどの程度かという情報を一覧表にして把握しておくと、相続発生後の財産調査の負担が大幅に軽減されます。
また、複数の銀行に口座が分散していると、それぞれの銀行で手続きが必要となり、遺族の手続きの労力が大きくなります。可能な限り口座を統一・集約しておくことも、手続きを効率化するための有効な対策です。
2. 遺言書の作成を促す
遺言書が残されていれば、預貯金を含む財産の分配方法が明確になるため、遺産分割協議が不要になる、または大幅に短縮され、口座の凍結解除もスムーズになります。
遺言書がない場合、遺産分割協議書の作成が必要となり、相続人同士の話し合いが長引いたり、家族間の軋轢を生んだりする原因となりかねません。トラブルの未然防止のためにも、遺言書の作成は非常に有効な手段です。
6.まずは当事務所へご相談ください
親が亡くなった際の預貯金を引き出すプロセスは、まず故人の口座が凍結されることから始まります。この凍結を解除し、正式に預金を引き出すには、遺言書や遺産分割協議書の有無に応じた複雑な相続手続きと、戸籍謄本などの多くの必要書類の収集が必要です。
緊急で資金が必要な場合は、遺産分割前の払戻し制度を利用すれば、1金融機関あたり150万円を上限として、相続人単独で預金の一部を引き出すことができます。
いずれの方法を選択するにしても、他の相続人との情報共有と、使途を証明するための領収書や明細の保管を徹底し、相続トラブルや単純承認のリスクを避けることが何よりも重要です。
相続手続きは専門的な知識を要し、収集すべき書類や手続きの期限など、複雑な要素が多く含まれます。お客様の状況に合わせた最適な手続きを選択し、円滑な相続を実現するため、判断に迷うことがあれば、まずは当事務所にご相談ください。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
行方不明の相続人の探し方
相続が発生した際、遺産をどのように分けるかという問題は、残されたご家族にとって重要な課題となります。しかし、親族関係が複雑であったり、長年音信不通であったりする相続人、あるいは行方不明の相続人がいるケースでは、遺産分割協議の進行が困難となり、手続きが滞ってしまうことが少なくありません。
有効な遺産分割協議を成立させるためには、原則として相続人全員の同意が必須です。たとえ行方不明の相続人がいたとしても、その人を除外して他の相続人だけで協議を進め、遺産分割協議書を作成したとしても、その協議は無効となってしまいます。
本記事では、行方不明の相続人がいる場合に、どのように所在を探し、相続手続き、特に不在者財産管理人の選任や登記、そして生前の遺言書作成といった対策を通じて、この難局を乗り越えるかについて、専門的な観点から詳しく解説します。
1.相続人の所在を特定するための初期対応
相続手続きを進める上で、行方不明となっている相続人(以下「行方不明者」)の生死が確認されていない限り、その者は相続の権利を有しています。そのため、まずは行方不明者の所在を特定し、接触を試みることが最初のステップとなります。
1. 戸籍の附票を用いた住所調査
行方不明者の現在の住所を特定するためには、「戸籍の附票(こせきのふひょう)」を確認する方法が一般的です。
戸籍の附票は、本籍地の市区町村役場で管理されており、その戸籍が作成されてから現在に至るまでの住民票の異動の履歴が記録されています。他の法定相続人(配偶者や直系血族など)であれば、この戸籍の附票を請求し、現在の住所を確認できる可能性があります。
2. 住所判明後の連絡と交渉の試み
住所が判明した後は、判明した住所宛に連絡文書を送付し、相続が発生した旨や遺産分割協議が必要であることを丁寧に伝えましょう。
この際、相手の気分を害さないよう、言葉遣いを丁重にし、相続関係を示した「相続関係説明図」を同封するなど、状況を理解しやすいように配慮することが重要です。いきなり遺産分割協議書への捺印を求めたり、相続財産の詳細を手紙に書いたりすることは、トラブルの原因となる危険性があるため避けるべきです。
手紙を送付しても「転居先不明」で返送された場合や、連絡を無視される状況が続く場合には、次のステップとして家庭裁判所での法的な手続きを検討する必要があります。
2.法的手続き:不在者財産管理人選任と失踪宣告
所在調査を行っても行方不明者と連絡が取れない場合や、生死が不明な状態にある場合は、家庭裁判所での手続きを通じて相続手続きを進めることになります。行方不明となっている期間によって、取るべき手続きが異なります。
1. 不在者財産管理人の選任(行方不明期間が7年未満の場合)
行方不明者が生死不明となってから7年未満の場合(または、生存を前提として財産管理が必要な場合)には、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。
不在者財産管理人とは、従来の住所を去り、容易に戻る見込みのない者(不在者)の財産を管理・保存するために選任される人です。他の相続人は「利害関係人」として選任申立てを行うことができます。
選任された不在者財産管理人が、不在者に代わって遺産分割協議に参加するためには、家庭裁判所の許可(権限外行為の許可)を得ることが必須です。この制度は不在者の利益を保護するためのものであるため、遺産分割協議の内容が、不在者の法定相続分を下回るような案である場合、裁判所から許可が下りない可能性が高い点に注意が必要です。そのため、不在者が法定相続分以上の財産を取得する形で協議がまとまるのが一般的です。
不在者財産管理人の選任手続きには、申立てから数か月(約3か月~)の期間を要し、不在者の財産を管理するための予納金(管理費用)を納付しなければならない場合もあります。
2. 失踪宣告の申立て(行方不明期間が7年以上の場合)
行方不明者の生死が7年間以上明らかでない場合(普通失踪)、または特定の危難(災害や遭難など)が去ってから1年間生死不明の場合(特別失踪)は、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。
失踪宣告が認められると、その行方不明者は法律上死亡したものとみなされます。これにより、その者を除いた相続人だけで遺産分割協議を進めることが可能になります。ただし、失踪者が被相続人の死亡前に死亡したとみなされた場合、失踪者に子がいれば、その子が代襲相続人として協議に参加することになります。
失踪宣告の手続きには、調査や官報公告などが必要で、審判が確定するまでに通常1年以上の期間がかかることが多く、相続税の申告期限(10ヶ月以内)に間に合わない可能性があるため、緊急で手続きを進めたい場合は、不在者財産管理人の選任がより現実的な選択肢となることが多いです。
3.不動産の登記手続きにおける注意点
相続財産に不動産が含まれる場合、遺産分割協議が成立しなければ、特定の相続人が単独で所有権を得る相続登記(名義変更)を行うことは原則としてできません。
1. 遺産分割協議後の登記申請
行方不明者がいる状況で登記を行うためには、以下の方法で有効な遺産分割協議を成立させる必要があります。
1. 不在者財産管理人が家庭裁判所の許可を得て遺産分割協議に参加し、協議が成立した後、その結果に基づき登記を申請する。
2. 失踪宣告により行方不明者が死亡したものとみなされた後、残りの相続人または代襲相続人等で協議を行い、その結果に基づき登記を申請する。
2. 遺産分割協議なしで登記が可能なケース
遺産分割協議を行わずとも登記申請ができるケースが二つあります。
1. 法定相続分どおりに登記する場合: 行方不明者も含めた法定相続人全員の共有名義として、法定相続分どおりに登記を行うことは可能です。この登記は、共有物の保存行為とみなされるため、他の相続人のうち誰か一人が代表して申請することができます。 しかし、この方法で登記をしたとしても、不動産を売却するなど処分行為を行う際には、行方不明者を含む共有者全員の同意が必要となるため、問題の根本的な解決にはなりません。
2. 遺言書がある場合: 生前に作成された遺言書で不動産の取得者が指定されている場合、遺産分割協議を経る必要がないため、行方不明者がいる状況でも、遺言書に基づき指定された取得者が単独で相続登記を申請することができます。
4.生前対策:遺言書によるトラブルの回避
将来の相続において、行方不明となる可能性のある相続人(疎遠な親族など)がいる場合、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことが、残された相続人の手続き負担を大幅に軽減する最も確実な対策です。
1. 遺言書の法的効果
遺言書を作成し、財産の分配方法を明確に定めておけば、相続発生後、行方不明者がいても不在者財産管理人の選任や失踪宣告といった複雑な裁判所の手続きを基本的に回避できます。遺言書の内容に従って、不動産の登記を含め、相続手続きを迅速に進めることが可能になります。
2. 遺言執行者の指定
遺言書の中で「遺言執行者」を指定しておくことで、手続きはさらに円滑になります。遺言執行者は、遺言書の内容を実現するために必要な手続きを行う権限を持ち、行方不明の相続人がいたとしても、遺言書に従って不動産の登記などの手続きを進められます。遺言執行者は、不正を疑われるリスクを避けるため、親族以外の弁護士や司法書士などの専門家を指定することが推奨されます。
5.円滑な相続手続きのために専門家にご相談を
行方不明者の所在調査から始まり、不在者財産管理人の選任、失踪宣告の申立てといった裁判所での手続きは、法的な知識を必要とし、複雑で時間を要します。特に不動産の登記が関係する場合は、法的な選択肢を誤ると将来的なトラブルの原因となりかねません。
相続人が行方不明という特殊な状況下では、迅速かつ正確な手続きが必要です。どの法的手段を選択すべきか、また具体的な手続きをどのように進めるべきかお悩みの場合は、専門家である弁護士や司法書士にご相談いただくことで、お客様の状況に応じた最善の解決策を導き出し、相続問題を解決へと導くことが可能です。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
遺言書の検認期日、欠席しても大丈夫?
家庭裁判所から「遺言書検認期日通知書」が突然届くと、驚かれる方も少なくありません。特に、通知の中で特定の日時に裁判所への来所が求められている場合、仕事や家庭の事情で都合がつかないケースもあるでしょう。
この検認期日に欠席した場合、「相続権を失うのではないか?」「何らかの罰則を受けるのではないか?」といった不安を抱く方もいますが、申立人以外の相続人については、基本的には心配する必要はありません。
本記事では、遺言書の検認とは何かを解説するとともに、その手続きの流れや、検認期日に欠席した場合の影響について詳しく解説します。
1.遺言書の検認とは?
検認とは?
遺言書の検認とは、家庭裁判所において、遺言書の存在と内容を相続人に対して知らせ、同時に偽造や変造を防止することを目的とした手続きです。
検認の期日には、裁判官が遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などを確認し、その時点での遺言書の内容を明確に記録します。これは、遺言書を公的な機関でチェックし、その証拠を保全する役割を果たします。
検認が必要な遺言書は、主に公的機関以外で保管されていた自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用していないもの)と秘密証書遺言です。
検認が不要な遺言書
ただし、すべての遺言書に検認が必要なわけではありません。公正証書遺言や、自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局に保管されている自筆証書遺言は、公的な管理がされているため、検認は不要とされています。
検認を怠った場合の罰則(期限)
遺言書の保管者や発見した相続人は、遺言者が亡くなったことを知った後、遅滞なく(期限に注意)家庭裁判所に遺言書を提出して検認を申立てる手続きが義務付けられています。
もし検認を怠ったり、検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で遺言書を開封したりすると、5万円以下の過料に処せられる罰則が適用される可能性があるため、注意が必要です。勝手に遺言書を開封した場合、他の相続人から偽造や変造の疑いをかけられ、後の相続トラブルに発展するリスクもあります。
2.検認手続きの概要と流れ
検認手続きの流れは以下の通りです。
1. 申立て:遺言書の保管者または発見した相続人が、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認を申立てます。
2. 検認期日の通知:家庭裁判所は申立人と日程調整を行った後、検認期日を決定し、相続人全員に対して通知書を郵送します。期日は申立日から数週間~1ヶ月後が目安で、平日の日中に行われます。
3. 裁判所での検認:期日には、申立人が遺言書を持参し提出します。裁判官が、出席した相続人などの立ち会いのもと、遺言書を開封し、内容や状態を確認・記録します。
4. 検認済証明書の申請・発行:検認後、検認済証明書の申請を行い、発行を受けます。この証明書は、金融機関での手続きや不動産の相続登記など、その後の相続手続きで必要書類となります。
検認の必要書類
検認の申立てには、主に以下の必要書類が必要となります。
- 家事審判申立書(または検認申立書)
- 遺言書(申立人が期日に持参)
- 遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
- 相続人全員の現在の戸籍謄本
- 収入印紙(遺言書1通につき800円)
- 連絡用の郵便切手
3.検認期日への出欠の可否
申立人は必ず出席が必要
遺言書の検認を申立てた本人(申立人)は、検認期日に必ず出席しなければなりません。これは、申立人が期日に遺言書原本を家庭裁判所に持参し提出する役割を担っているためであり、欠席すると検認自体が不可能になってしまいます。申立人が欠席した場合、他の出席者に迷惑をかけ、検認を怠ったとして罰則の適用を受ける危険性もあります。
申立人が確実に期日に出頭できるように、申立て前に裁判所と日程調整をする際は、確実に出席できる日を選ぶことが重要です。また、やむを得ない事情で出席が難しい場合は、弁護士を代理人として出席させることも検討できます。
申立人以外の相続人は欠席が可能
申立人以外の相続人については、検認期日に出席する法的な義務はなく、欠席しても罰則やペナルティが科せられることはありません。出席するかどうかは、各相続人の自由な判断に委ねられており、欠席する旨を裁判所に連絡する必要も特にありません。相続人全員が揃わなくても検認の手続きは進められます。
4.検認の「効力」と欠席によるデメリット
検認は遺言書の効力を決定しない
検認手続きは、あくまで遺言書の状態を形式的に確認し、偽造・変造を防ぐための手続きであり、遺言書が有効か無効かを判断するものではないという点に注意が必要です。検認が完了したからといって、その遺言書が法的に有効であると確定するわけではありません。
もし遺言書の内容に疑問がある場合や、無効であると考える場合は、検認後に別途、遺言の無効を争う手続きを行うことになります。無効を主張する流れとしては、まず家庭裁判所に遺言無効確認の調停を申立て、調停で解決しない場合には訴訟へと移行します。
欠席によるデメリット
申立人以外の相続人が検認期日に欠席しても罰則はありませんが、いくつかのデメリットがあります。
1. 遺言の内容を確認するタイミングが遅れる:検認期日に立ち会わないと、遺言書の内容を知るのが一歩遅れます。遺言書の内容を早く知りたい場合は、出席が推奨されます。
2. 当日のやり取りを直接見聞きできない:期日では、裁判官から申立人などに対して遺言書の保管状況などの質問がされることがありますが、欠席するとそのやり取りや雰囲気を直接知ることができません。ただし、これらの内容は、後日家庭裁判所に検認調書の閲覧や謄写を申立てることで確認は可能です。
3. 期限のある手続きへの影響:遺言書の内容が不明な間は、相続に関する対応が難しくなることがあり、特に相続放棄のように「相続開始を知った時から3ヵ月以内」という期限が設けられている重要な手続きの判断に影響が出る可能性もあります。
5.まとめ
遺言書の検認は、自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した際に遅滞なく行わなければならない重要な手続きです。申立人は、申立書と必要書類を揃え、期日には必ず出席する必要がありますが、その他の相続人は欠席が可能です。欠席しても相続人の権利を失うことも、罰則が科せられることもありません。
ただし、検認は遺言書の効力を確定するものではなく、検認後の相続手続きやトラブル対応を見据えると、専門的な知識を持った者(弁護士など)に手続きをサポートしてもらうことは、その後の流れをスムーズに進める上で非常に有効な手段と言えるでしょう。
検認手続きやその後の相続問題についてご不安がある場合は、専門家にご相談いただくことをおすすめします。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
代償分割における遺産分割協議書の書き方
相続財産の分け方は多岐にわたりますが、特に遺産の大部分が不動産などの分割しにくい財産である場合、相続人全員が公平感を持って円滑に相続手続きを進めるために「代償分割」という方法が有効です。ここでは、代償分割の基本的な考え方から、遺産分割協議書の具体的な書き方、さらには税金に関する注意点まで詳しく解説します。
1.代償分割とは?遺産分割の選択肢
代償分割とは、特定の相続人が法定相続分を超える遺産(現物)を取得する代わりに、その差額分を金銭(代償金)などで他の相続人に支払って清算する遺産分割方法です。
この方法が特に選ばれるのは、不動産や事業用資産など、そのままでは均等に分けにくい財産が主な遺産である場合です。例えば、自宅不動産を特定の相続人が単独で取得したい場合や、事業を承継する相続人が事業用資産を細分化せずにまとめて引き継ぎたい場合などに適しています。
遺産分割には代償分割の他に、主に以下の3つの方法があります。
- 現物分割:遺産をそのままの形で各相続人が分け合う方法です。例えば、長男が不動産を、次男が預貯金を取得するケースです。しかし、遺産の価値が不均等になりやすく、不公平感が生じるリスクがあります。
- 換価分割:遺産を売却して現金化し、その金銭を相続人全員で分け合う方法です。公平な分配が可能ですが、先祖代々の土地や思い出の品など、遺産そのものが失われるというデメリットがあります。
- 共有分割:遺産の全部または一部を複数の相続人が共同で所有する方法です。一見公平に見えますが、将来的に売却や管理の際に全員の同意が必要となり、権利関係が複雑化し、トラブルの原因となりやすい側面があります。
これらの分割方法と比較して、代償分割は遺産の現物を保ちつつ、相続人間の公平性を確保できる点で優れた選択肢と言えます。
2.代償分割のメリットとデメリット
代償分割を選択する際には、その利点と注意点を理解しておくことが重要です。
1. 代償分割のメリット
• 公平な遺産分配が可能:遺産の価値に差がある場合でも、代償金を支払うことで相続人それぞれの取得する財産の価値を調整し、公平な分配を実現できます。
• 遺産の形状を維持できる:不動産や事業用資産などを売却せずに、希望する相続人がそのままの形で引き継ぐことが可能です。これは、先祖代々の土地や、事業継続に不可欠な資産の場合に特に大きなメリットとなります。
• 相続トラブルの回避:不動産を共有名義にするなどの複雑な権利関係や、売却の是非をめぐる意見の対立といったトラブルを防ぐことができます。
• 税制上の特例活用による節税効果:特定の条件を満たす場合、「小規模宅地等の特例」を適用できる可能性があります。この特例を利用すると、自宅の敷地などの相続税評価額が最大80%減額され、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があります。
2. 代償分割のデメリット
• 代償金の支払い能力が必要:遺産を多く取得する相続人は、他の相続人へ代償金を支払う義務が生じます。代償金が高額になる場合も多く、資金の準備が困難な場合は代償分割の実現が難しいこともあります。
• 代償金額をめぐるトラブルの可能性:代償金の金額やその評価基準について、相続人間で意見の相違が生じ、話し合いがまとまらないことがあります。特に不動産の評価は専門家でも難しく、争いの原因になりやすいです。
• 贈与税や譲渡所得税の課税リスク:後述しますが、遺産分割協議書に適切な記載がない場合、代償金が「贈与」とみなされて贈与税が課されたり、現金以外の財産を代償として譲渡した場合に譲渡所得税が発生したりする可能性があります。
3.遺産分割協議書に代償分割を明記する重要性
代償分割を行う上で最も重要なことの一つが、遺産分割協議書に代償分割の旨を明確に記載することです。この記載は、主に以下の2つの目的があります。
1. 贈与税の課税を避けるため:相続人間で代償金のやり取りが行われた際に、遺産分割協議書に代償分割であることの記載がないと、その金銭の授受が贈与と認定され、贈与税が課税されてしまう可能性があります。代償金は、相続財産を多く取得したことの対価として支払われるものであり、原則として贈与には該当しませんが、書面での明確な証明が不可欠です。
2. 将来的なトラブルの防止と証拠化:万が一、代償金の支払いの約束が守られなかった場合に備え、遺産分割協議書は重要な証拠となります。支払期限や分割払いの条件など、詳細な取り決めを明記することで、後々の「言った言わない」といった争いを防ぐことができます。
4.代償金の金額の決め方
代償金の金額の算定方法について、法律上の明確な定めはありません。そのため、相続人全員が納得できる金額であれば、どのように決めても差し支えありません。
特に代償分割の対象が不動産である場合、以下のいずれかの評価額を参考に代償金を決定するのが一般的です。
- 実勢価格(時価):実際に市場で取引される価格であり、最も現実的な価格といえます。不動産鑑定士による鑑定評価も、公平性を担保する上で有効な手段です。
- 公示価格:国土交通省が公表する土地の標準価格で、市場価格に近い水準です。
- 相続税評価額(路線価など):相続税や贈与税を計算する際に基準となる評価額で、公示価格の約80%程度となることが多いです。代償金を支払う相続人にとっては、支払額を抑えられるため有利となる傾向があります。
- 固定資産税評価額:固定資産税を算定する基準となる評価額で、公示価格の約70%程度となることが多いです。他の評価方法に比べて低めに設定されるのが一般的です。
これらの評価方法はそれぞれ金額が大きく異なるため、相続人全員がどの評価方法を採用するかについて十分に話し合い、合意することが非常に重要です。合意が得られない場合は、家庭裁判所の調停や審判で決定することも可能です。
5.遺産分割協議書の書き方:ひな型と記載例
遺産分割協議書は、法的な要件を満たし、かつ相続人全員の合意内容を正確に反映させる必要があります。以下に、代償分割における遺産分割協議書の基本的なひな型と、具体的な記載例をケース別に示します。
1. 遺産分割協議書の基本構成
遺産分割協議書には、法律で定められた厳密な様式はありませんが、以下の情報を正確に記載することが重要です。
- 被相続人の情報:氏名、生年月日、死亡日、本籍地、最終住所地。
- 相続人の情報:遺産分割協議に参加した全ての相続人の氏名と住所。
- 遺産の内容と分割方法:各相続人が取得する財産とその内容、または代償金の支払い条件を明記します。
- 代償金の具体的条件:支払額、支払期限、支払方法(振込先口座など)、振込手数料の負担者などを明確に記載します。
- 相続人全員の署名と実印での押印:全ての相続人が署名・押印することで、協議内容の真正性を担保します。相続登記や相続税申告では実印での押印と印鑑証明書の添付が必要となります。
2. 遺産分割協議書のひな型(記入例)
以下のひな型はあくまで一例です。個別の状況に合わせて適宜調整してください。
遺産分割協議書
被相続人 □□□(昭和△△年△月△日生)
死亡日 令和△△年△月△日
最後の本籍地 神奈川県□□市△△町〇丁目〇番
最後の住所 神奈川県□□市△△町〇丁目〇番△号
上記の被相続人□□□(以下「被相続人」という)の遺産相続に関し、共同相続人である被相続人の妻〇〇〇〇(以下「甲」という)、長男〇〇〇〇(以下「乙」という)、および長女〇〇〇〇(以下「丙」という)は、本日、遺産の分割について協議を行い、下記の通り分割取得することに合意した。
第1条(遺産の取得)
1.甲は、以下の遺産を取得する。
(1)土地
所 在 神奈川県横浜市青葉区□□町
地 番 △△番△
地 目 宅地
地 積 △△.△△平方メートル
(2)建物
所 在 神奈川県横浜市青葉区□□町 ○○番○
家屋番号 △△番△
種 類 居宅
構 造 木造瓦葺2階建て
床面積 1階部分 〇平方メートル
2階部分 ○平方メートル
(3)動産
前号建物に付随する家具・家財その他一切の動産
2.乙は、以下の遺産を取得する。
(1)預貯金
□□銀行□□支店 普通預金 口座番号△△△△
口座名義人 □□□
第2条(代償金の支払い)
甲は、前条1項に記載された遺産を取得する代償として、丙に対し金〇〇万円を令和〇年〇月〇日までに、以下の口座に振込送金の方法により支払う。その際にかかる振込手数料は、甲が負担する。
(振込先口座)
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人 □□□□
第3条(後日判明した遺産の取り扱い)
本協議書に記載なき遺産及び後日判明した遺産については、相続人甲、乙及び丙が各3分の1の割合で取得することとする。
以上のとおり、甲乙丙相続人全員による遺産分割協議が成立したことを証明するため、本協議書を3通作成し、甲乙丙相続人全員が署名押印のうえ、各1通ずつ所持する。
令和〇〇年〇月〇日(作成日を記入)
住 所 神奈川県横浜市青葉区□□△丁目△番△号
生年月日 昭和△△年△月△日
相続人甲(妻) 〇〇〇〇 実印
住 所 神奈川県川崎市□□区△△町△丁目△番△号
生年月日 昭和△△年△月△日
相続人乙(長男) 〇〇〇〇 実印
住 所 埼玉県△△市□□町△丁目△番△号
生年月日 昭和△△年△月△日
相続人丙(長女) 〇〇〇〇 実印
3. 遺産の記載方法(預貯金など)
• 不動産:所在、地番、地目、地積、種類、構造、床面積、家屋番号など、登記簿に記載されている通りに正確に記載します。
• 預貯金:金融機関名、支店名、預金の種類(普通預金、定期預金など)、口座番号、口座名義人を明記します。ただし、預貯金の金額は、協議書作成後も変動する可能性があるため、確定しているものを除き、具体的な金額を記載しない方が望ましいとされています。もし記載する場合は、「相続開始日の残高」といった但し書きを添えると良いでしょう。
4. 代償金を金銭で支払う場合の記載例
特定の相続人が遺産を取得し、他の相続人へ代償金を金銭で支払う場合の記載例です。支払期限と振込先口座、振込手数料の負担についても明確に記載することが重要です。
第〇条(代償金の支払い)
相続人〇〇〇〇は、第〇条に記載された遺産を取得する代償として、相続人□□□□に対し、金〇〇万円を令和〇年〇月〇日までに、以下の口座に振込送金の方法により支払う。その際にかかる振込手数料は、相続人〇〇〇〇が負担する。
(振込先口座)
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇
口座名義人 □□□□
5. 代償金が金銭以外の場合の記載例
代償金が金銭ではなく、別の不動産などの財産を譲渡する形で支払われる場合の記載例です。譲渡する財産を特定し、所有権移転登記の手続きと支払期限、費用負担を明記します。
第〇条(代償財産の譲渡)
相続人〇〇〇〇は、第〇条に記載された遺産を取得する代償として、相続人□□□□に対し、相続人〇〇〇〇が所有する下記不動産の所有権を譲渡し、令和〇年〇月〇日までに所有権移転登記手続を完了させる。なお、所有権移転登記に関する費用は相続人〇〇〇〇が負担する。
(不動産)
所 在 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目
地 番 〇〇番
地 目 宅地
地 積 〇〇.〇〇平方メートル
6. 複数の相続人に代償金を支払う場合の記載例
一人の相続人が遺産を取得し、複数の相続人へ代償金を支払う場合の記載例です。各相続人への支払額と支払期限、振込先口座を個別に明記します。
第〇条(代償金の支払い)
相続人〇〇〇〇は、第〇条に記載された遺産を取得する代償として、下記のとおり代償金を支払う。いずれも、振込手数料は相続人〇〇〇〇が負担する。
1.相続人□□□□に対して
代償金額 金□□万円
支払期限 令和〇年〇月〇日限り
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号□□□□□□□
口座名義人 □□□□
2.相続人◇◇◇◇に対して
代償金額 金◇◇万円
支払期限 令和〇年〇月〇日限り
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号◇◇◇◇◇◇◇
口座名義人 ◇◇◇◇
7. 分割払いで代償金を支払う場合の記載例
代償金が高額で一括払いが難しい場合、相続人全員の合意があれば分割払いも可能です。分割払いの記載例では、支払い回数、毎回の金額、支払期限を具体的に明記します。
第〇条(代償金の分割支払い)
相続人〇〇〇〇は、第〇条に記載された遺産を取得する代償として、相続人□□□□に対し、金〇〇万円を次のとおり分割して支払う。
1.令和〇年〇月から令和〇年〇月まで □回
毎月末日限り 金□万円
2.令和〇年〇月〇日限り 金□万円
第〇条(支払い方法)
前条の支払いは、以下の口座に振込送金の方法により行う。振込手数料は相続人〇〇〇〇が負担する。
(振込先口座)
〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号□□□□□□□
口座名義人 □□□□
8. 遅延損害金や抵当権を設定する場合
代償金の支払いが滞った場合に備え、遺産分割協議書に遅延損害金や抵当権の設定について定めておくことも検討できます。
6.代償分割における税金(特に贈与税)
代償分割を行う際には、贈与税をはじめとする税金について十分に理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
1. 贈与税のリスクと回避策
代償分割で支払われる代償金は、原則として贈与税の課税対象にはなりません。代償金は、遺産分割の一環として、相続分の公平性を保つために支払われるものだからです。しかし、以下のような場合には贈与税が課される可能性があります。
- 割協議書に代償分割の旨が明記されていない場合:これが最も一般的な贈与税リスクです。単なる金銭の贈与とみなされ、受け取った側に贈与税が課税されてしまいます。
- 回避策:遺産分割協議書には、「代償分割による代償金である」ことを明確に記載することが必須です。
- 遺産の評価額を著しく超える代償金が支払われた場合:代償金の金額が、取得した遺産の価値を大幅に上回る場合、その超過分が贈与とみなされて贈与税の課税対象となることがあります。
- 回避策:遺産の評価額を適正に算出し、過大な代償金の支払いを避けることが重要です。
- 遺産を全く相続していない人が代償金を支払う場合:生命保険金は受取人固有の財産であり、遺産分割の対象とはなりません。もし、遺産を全く相続していない人が、生命保険金を原資として他の相続人に金銭を支払った場合、それは代償分割とは認められず、贈与と判断される可能性が高いです。
2. 譲渡所得税の発生条件
代償金を金銭で支払う場合は、譲渡所得税はかかりません。しかし、遺産を取得した相続人が、金銭以外の資産(例えば、自身が所有する不動産や株式など)を代償として他の相続人に譲渡した場合には、その資産の譲渡益に対して譲渡所得税が発生する可能性があります。これは、その資産を時価で譲渡したとみなされるためです。現金以外の財産を代償とする場合は、事前に税理士などの専門家に相談し、税額を試算しておくことをお勧めします。
3. 相続税の課税価格計算
代償分割における相続税の課税価格は、代償金の支払い側と受取側でそれぞれ以下のように計算されます。
• 代償金を支払う相続人:課税価格 = 相続した遺産の評価額 − 支払った代償金の金額。
• 代償金を受け取る相続人:課税価格 = 相続した遺産の評価額(他の遺産を取得した場合)+ 受け取った代償金の金額。
4. 小規模宅地等の特例による節税効果
代償分割では、一定の条件を満たす場合、小規模宅地等の特例を適用することで相続税の負担を軽減できることがあります。この特例は、被相続人の居住用や事業用の宅地などを相続した場合に、その土地の評価額を最大80%減額できる制度です。この特例の適用要件をよく確認し、代償分割と合わせて活用することで、効果的な節税対策となる可能性があります。
7.代償分割を円滑に進めるための注意点
代償分割を円滑に進め、将来的なトラブルを防ぐためには、いくつかの重要な注意点があります。
1. 支払期限の猶予や分割払いの交渉
代償金が高額で、支払期限までに一括で用意することが難しい場合もあるでしょう。このような場合、相続人全員で話し合いを行い、支払期限の延長(猶予)分割払いの交渉をすることが考えられます。 分割払いにする場合は、支払い回数、毎回の金額、支払期日などを明確に定めて遺産分割協議書に記載しておくことが、後々のトラブル防止のために非常に重要です。
2. 遺産分割協議書を公正証書で作成するメリット
遺産分割協議書は、私的に作成したものでも法的な効力は持ちます。しかし、相続人同士の信頼関係が薄い場合や、代償金額が高額であるなどの理由で代償金の支払いが滞る懸念がある場合は、遺産分割協議書を公正証書で作成することを検討しましょう。 公正証書に「強制執行受諾文言」(代償金の支払いをしない場合は直ちに強制執行に服するという文言)を記載しておくことで、万が一支払いが滞った際に、裁判所を介することなく強制執行の手続きを行うことが可能になります。これは、代償金を確実に回収するための強力な手段となります。
8.専門家への相談の勧め
代償分割は、相続法や税法に関する専門的な知識を要する複雑な手続きです。遺産の評価、税務リスクの回避(特に贈与税)、遺産分割協議書の適切な作成、支払期限や分割払い条件の交渉など、一般の方が行うには非常に難しい側面が多々あります。
相続に詳しい司法書士や弁護士、税理士などの専門家に相談することで、個々の状況に応じた的確なアドバイスを受け、最適な分割方法の選択、適正な遺産評価、贈与税などの税金リスクの回避、そして不備のない遺産分割協議書の作成をサポートしてもらうことができます。専門家のサポートを得ることで、相続手続きを円滑かつ円満に進められる可能性が高まります。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
相続人申告登記の記載例と必要書類
2024年4月1日から、不動産に関する相続登記の申請が義務化されました。この法改正は、長年にわたり社会問題となっていた「所有者不明土地」の増加に歯止めをかけることを目的としています。所有者不明土地は、公共事業や復旧・復興事業の妨げとなるだけでなく、民間取引の阻害や土地の管理不全化、さらには隣接する土地への悪影響といった深刻な問題を引き起こしています。その主な原因は、相続登記がされないこと(62%)や住所変更登記がされないこと(34%)とされています。
この義務化に伴い、相続人の方々の負担を軽減し、手続きを円滑に進めるための新たな制度として「相続人申告登記」が創設されました。本記事では、この相続人申告登記について、その必要書類や記載例、利用する際のデメリット、費用、そしてどこで申出を行うかについて詳しく解説します。
1.相続人申告登記とは?義務化の背景と制度の概要
相続登記の申請義務化により、不動産を取得した相続人は、自己のために相続が開始したことを知り、かつ所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請することが義務付けられました。正当な理由なくこの義務を怠ると、10万円以下の過料が科される可能性があります。
しかし、相続発生後すぐに遺産分割協議がまとまらないケースや、相続人が多数で戸籍書類の収集に時間と手間がかかるケースも少なくありません。そこで、このような状況下でも相続人が相続登記の申請義務を簡易に履行できるよう創設されたのが「相続人申告登記」です。
この制度を利用すると、相続人は「所有権の登記名義人について相続が開始した旨」と「自らがその相続人である旨」を登記官に申し出るだけで、一時的に義務を履行したとみなされます。申出を受けた登記官は、必要な審査を行った上で、申出をした相続人の氏名や住所等を職権で登記簿に付記します。これにより、登記簿を見た人が不動産の所有者(相続人)の情報を把握しやすくなり、所有者不明土地の発生予防に繋がることが期待されています。
相続人申告登記の大きな利点は、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定するための複雑な戸籍謄本等の収集が不要となる点です。相続人が複数いる場合でも、特定の相続人が単独で申出を行うことが可能です。
2.相続人申告登記の必要書類
相続人申告登記の申出には、主に以下の書類が必要となります。
1. 申出人の戸籍関係書類
- 被相続人の死亡日、被相続人と申出人との関係性、および申出人自身の生存の事実を証明できる戸籍全部事項証明書などが必要です。
- 数次相続が発生している場合は、登記名義人から中間相続人、そして中間相続人から最終申出人への相続関係を一代ずつ証明できる戸籍関係書類が必要となります。
- ただし、申出人以外の他の相続人の戸籍は、原則として不要とされています。
2. 申出人の住所を証する情報
- 原則として住民票の写しなどが必要です。
- ただし、申出書に氏名のふりがな、生年月日(外国人の場合は氏名のローマ字表記)を正確に記載し、かつ住民基本台帳ネットワークシステムの情報と照合可能であれば、住民票の写しの提出を省略することができます。
3. 法定相続情報一覧図または法定相続情報番号
- 法定相続情報証明制度を利用している場合、法定相続情報一覧図の写しやその番号を提供することで、上記の戸籍関係書類や住所を証する情報の一部または全部の添付を省略できる場合があります。
4. 被相続人の同一性証明書類
- 被相続人の登記記録上の住所と戸籍に記載されている本籍が異なる場合など、登記記録上の人物と戸籍上の人物が同一であることを証明するために、住民票の除票や戸籍の附票の写しなどが必要となることがあります。
5. 代理権限証明情報
- 司法書士などの専門家が代理人として申出を行う場合、代理権限を証する書面(委任状など)の提出が必要です。書面による申出の場合、この代理権限証明情報への押印または署名は不要とされています。
申出書の申出人の押印については、申出人本人が書面で申出を行う場合は押印不要です。オンラインでの申出の場合も、申出情報への電子署名は不要とされています。
3.相続人申告登記の申出書の記載例
相続人申告登記の申出書は、法務局のウェブサイト等でひな形が公開されています。以下に主要な記載事項を説明します。
• 申出の目的:「相続人申告」と明記します。
• 登記名義人(被相続人)の情報:死亡した不動産登記名義人の氏名と、その相続が開始した年月日(被相続人の死亡日)を記載します。
• 申出人の情報:申出人自身の現在の住所、氏名、電話番号を記載します。氏名のふりがなと生年月日を記載すれば、住所証明情報の提出を省略できます。
• 不動産の表示:申出の対象となる不動産を、登記記録(登記事項証明書)に記載されているとおり正確に記載します。不動産番号を記載すれば、所在や地番、家屋番号といった詳細な表示を省略することが可能です。
• 添付情報:提出する書類名を記載します。
• 相続関係説明図:任意で提出することができます。これを提出すると、添付した戸籍謄本等の原本還付が可能となります。
4.相続人申告登記の記載例
相続人申告登記の実際の登記記録の記載例は以下のようになります。

5.相続人申告登記のデメリット
相続人申告登記は、相続登記の申請義務の履行を簡易にするための応急措置であり、いくつかのデメリットがあります。
• 終局的な権利の公示ではない:この登記は、あくまで「相続人が存在すること」を公示するものであり、最終的な権利関係(例えば、誰がどの不動産を単独で取得したかなど)を明確に公示するものではありません。
• 登記識別情報は通知されない:相続人申告登記を行っても、登記識別情報は通知されません。登記識別情報は、不動産の所有者が自身の権利を証明し、将来的な登記申請の際に必要となる重要な情報です。
• 別途、遺産分割の結果に基づく相続登記が必要:遺産分割協議が成立した場合や、遺言によって特定の相続人が不動産を取得した場合は、その内容を踏まえた所有権移転登記を別途申請する義務が生じます。この登記は、遺産分割が成立した日(遺言の場合は所有権取得を知った日)から3年以内に行う必要があります。
• 不動産の処分に制約:相続した不動産を売却したり、抵当権を設定したりするといった処分行為を行う場合、相続人申告登記のみでは不十分であり、別途、遺産分割協議に基づく所有権移転登記などを行う必要があります。
これらのデメリットを理解し、相続人申告登記は、遺産分割協議に時間がかかりそうな場合など、相続登記の義務履行期間に間に合わせるための一時的な手段として活用することが望ましいと言えます。最終的には、遺産分割協議を速やかに成立させ、その内容を反映した相続登記を行うことが重要です。
6.相続人申告登記にかかる費用
相続人申告登記は、その簡易な性質から、登録免許税が非課税とされており、審査手数料も不要です。
ただし、申出に必要な戸籍謄本や住民票の写しなどの公的書類の取得には、別途実費がかかります。また、これらの手続きを司法書士などの専門家に依頼する場合は、別途報酬が発生します。
7.どこで申出を行うか
相続人申告登記の申出は、原則として対象となる不動産の所在地を管轄する法務局に対して行います。書面による申出の場合は、管轄法務局の窓口に提出するか、郵送で送付します。
また、オンラインでの申出も可能であり、「かんたん登記申請」というサービスも利用できます。オンライン申出の場合、物理的な管轄の制約を受けにくいという利便性があります。
詳細な手続きについては、事前に管轄法務局に確認することをお勧めします。
8.分からないことがあれば専門家にご相談ください
相続人申告登記は、相続登記の義務期間内に間に合わせるための一時的な措置としての性格が強く、長期的な視点で見れば、遺産分割協議をまとめ、その結果を反映した最終的な相続登記を行うことが最も望ましい対応と言えるでしょう。必要書類を正確に準備し、適切な申出を行うことが重要です。
新しい制度の円滑な運用には、国民への十分な周知と理解が不可欠です。不明な点があれば、法務局や専門家へ相談し、適切な手続きを進めるようにしましょう。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
生前に遺留分放棄をする方法
相続は、時に複雑な人間関係や財産の問題を引き起こします。特に、ご自身の死後に特定の人物に財産を集中させたい、あるいは将来の相続トラブルを避けたいと考える場合、相続人予定者による「遺留分の放棄」を家庭裁判所で申し立てることが有効な手段となり得ます。本記事では、遺留分放棄の基本的な概念から、その手続き、メリット、そして注意点について詳しく解説します。
1.遺留分とは何か
まず、遺留分について理解を深めましょう。遺留分とは、法律によって一部の相続人に対して最低限保障されている遺産の取得割合のことです。これは、故人の遺言によって財産が特定の相続人に集中させられたとしても、残された家族の生活保障や相続への期待を保護するために認められている強い権利です。
遺留分が認められるのは、配偶者、子(代襲相続人を含む孫など)、および直系尊属(父母や祖父母)です。一方で、故人の兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
遺留分が侵害された場合、遺留分権利者は「遺留分侵害額請求」を行うことで、侵害された遺留分に相当する金銭を取り戻すことができます。
2.遺留分放棄とは
遺留分放棄とは、遺留分を持つ相続人が、自身の遺留分の権利を自ら手放すことを指します。この放棄により、その相続人は遺留分侵害額請求を行うことができなくなります。遺留分放棄は、被相続人の生前でも死後でも行うことが可能です。
3.遺留分放棄と相続放棄の違い
「放棄」という言葉が含まれるため混同されがちですが、遺留分放棄と相続放棄は全く異なる制度です。主な違いは以下の通りです。
放棄の対象:
◦ 相続放棄は、相続人が相続人としての地位そのものを放棄し、故人の資産も債務も一切承継しないことを表明します。これにより、最初から相続人ではなかったものとみなされます。
◦ 遺留分放棄は、あくまで遺留分を請求する権利を手放す行為であり、相続権そのものを失うわけではありません。遺留分を放棄しても、相続人としての地位は維持され、遺言や遺産分割協議によって財産を相続する可能性が残ります。
手続きの時期:
◦ 相続放棄は、故人の死後、「自己のために相続があったことを知ったとき」から原則3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。生前の相続放棄は法律上認められていません。
◦ 遺留分放棄は、故人の生前でも死後でも可能です。ただし、生前に行う場合は家庭裁判所の許可が必須となります。
他の相続人への影響:
◦ 相続放棄があった場合、放棄した相続人の相続分は他の相続人に割り振られるため、他の相続人の法定相続分が増加する可能性があります。
◦ 遺留分放棄は、他の共同相続人の遺留分に影響を及ぼしません。放棄によって生じた部分は、被相続人が自由に処分できる財産に組み込まれます。
4.生前に遺留分放棄をする方法(手続きと必要書類)
故人の生前に遺留分を放棄する場合、家庭裁判所の許可が必須です(民法1049条1項)。家族間での私的な合意書や念書だけでは、法的な効力は生じません。これは、相続人になる方が不当な圧力により意思に反して権利を放棄することを防ぐための措置です。
手続きの流れ
1. 申立人の準備: 遺留分を放棄する相続人自身が申立人となります。
2. 申立先の家庭裁判所: 故人となる予定の人の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てを行います。
3. 必要書類の提出: 以下の必要書類を揃えて提出します。
- 遺留分放棄の許可申立書
- 故人となる人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
- 財産目録(不動産、現金、預貯金、株式など)
- 申立手数料として収入印紙800円分
- 連絡用郵便切手(金額は裁判所によって異なります)
4. 家庭裁判所による審査(審問): 申立書が受理されると、まず裁判所から「照会書」が送付されるのが一般的です。申立人は、遺留分放棄に至った経緯や相続財産の状況、放棄が真意によるものかなどについて、書面で回答します。その内容を確認したうえで、裁判所がさらに詳しい事情を把握する必要があると判断した場合には、審問期日が指定され、裁判官との面談が行われます。
5.遺留分放棄の許可基準
家庭裁判所が遺留分放棄を許可するにあたっては、以下の点が重視されます。
• 申立人の自由意思に基づくこと: 他者からの不当な干渉や強要がないか。
• 放棄理由の合理性・必要性: 財産の散逸防止、不動産の細分化回避、遺産紛争の回避、事業承継など、合理的な理由があるか。
• 代償の有無: 遺留分放棄の代償として、相当な財産の生前贈与や特別な利益が申立人に与えられているか。
これらの基準を満たさない場合、申し立ては却下される可能性があります。
6.念書(合意書)の書き方
故人の生前における遺留分放棄については、前述の通り、家庭裁判所の許可が必須であり、念書や合意書に法的効力はありません。
一方で、故人の死後に遺留分を放棄する場合は、家庭裁判所の許可は不要です。この場合、遺留分侵害額請求を行わない意思を相手方に伝えることで放棄したことになります。口頭でも有効ですが、後々のトラブルを防ぐために、遺留分放棄の念書や合意書を作成し、書面で意思表示をすることが一般的です。
念書を作成する際は、以下の点を明確に記載しましょう。
- 念書の内容: 遺留分を放棄する旨と、対象となる被相続人を特定する情報(氏名など)を明記します。
- 作成年月日: 念書を作成した日付を記載します。
- 作成者の情報: 遺留分を放棄する遺留分権利者本人の氏名、住所、署名捺印が必要です。
念書の書式は、パソコンで作成したものを利用し、日付や署名捺印を自筆で行う方法でも構いませんし、全文を手書きで作成しても問題ありません。
7.遺留分放棄のメリット
生前に遺留分放棄を行うことには、いくつかのメリットがあります。
• 遺言通りの円滑な相続を実現できる: 特定の人物に財産を集中させたい場合、他の相続人に遺留分放棄をしてもらえれば、故人の希望通りの遺言をトラブルなく実現できます。特に、事業承継で会社の株式や不動産を後継者に集中させたい場合などに有効です。
• 相続トラブルを未然に防げる: 遺言の内容に不満を持つ相続人が遺留分侵害額請求を行うことで、親族間で深刻な争いが生じることがあります。事前に遺留分放棄が合意されていれば、これらのトラブルを回避し、円満な相続に繋がります。
8.遺留分放棄の注意点
遺留分放棄は重要な権利を放棄する行為であるため、いくつかの注意点があります。
• 原則として撤回が難しい: 一度家庭裁判所の許可を得て遺留分放棄が認められると、原則として撤回や取り消しはできません。例外的に、許可審判当時の事情が大きく変化し、客観的に放棄を継続させることが不合理と認められる場合のみ、取り消しが認められることがあります。
• 負債の相続は回避できない: 遺留分を放棄しても、相続人としての地位を失うわけではないため、故人に借金などの負債があった場合、その債務を相続する義務は残ります。負債の承継を免れたい場合は、別途相続放棄の手続きが必要です。
• 他の相続人の遺留分は増えない: 共同相続人の一人が遺留分を放棄しても、他の相続人の遺留分が増加することはありません。放棄された部分は、故人が自由に処分できる財産となります。
• 代償の検討: 生前に遺留分放棄をしてもらう場合、家庭裁判所の許可を得るには、放棄する相続人の自由意思が尊重されていることが大前提となります。そのうえで、代償として生前贈与や借金の肩代わりなどが行われているかどうかは、裁判所が許可を判断する際の重要な要素とされています。
• 遺言書の重要性: 遺留分放棄が行われても、遺言書がなければ、放棄した相続人は依然として法定相続分に基づいて遺産分割協議に参加する権利を持ちます。故人の意図通りの財産配分を実現するためには、遺留分放棄と合わせて公正証書遺言などの遺言書を作成しておくことが強く推奨されます。
• 未成年者の放棄: 未成年者が遺留分を放棄する場合、法定代理人(親権者など)の同意が必要です。もし未成年者と法定代理人との間で利益が相反する状況であれば、特別代理人の選任が必要となります。
9.遺留分放棄した相続人に財産を残す方法
遺留分を放棄した相続人に対しても、故人が何らかの財産を残したいと考える場合があるでしょう。そのような時には、以下の方法が考えられます。
• 遺言書を活用する: 遺言書によって、遺留分を放棄した相続人に対しても財産を指定して残すことが可能です。特に公正証書遺言は、その確実性から推奨されます。
• 生命保険を活用する: 生命保険の死亡保険金は、原則として相続財産に含まれないため、指定された受取人が全額を受け取ることができます。遺留分を放棄した相続人を受取人に指定すれば、確実に財産を渡すことが可能です。
• 生前贈与を行う: 故人が亡くなる前に、相続人へ財産を贈与しておく方法です。贈与税の基礎控除などを活用することで、計画的に財産を移転することができます。
10.専門家にご相談ください
生前における遺留分放棄は、故人の意思を尊重した円滑な相続を実現し、将来の相続トラブルを避けるための有効な手段です。しかし、家庭裁判所の厳格な手続きと許可が必要であり、一度放棄すると原則として撤回できないなど、慎重な検討が求められます。
遺留分放棄を検討する際は、ご自身の財産状況や家族関係を総合的に考慮し、後悔のない選択をすることが大切です。特に複雑な事情がある場合などは、相続問題に詳しい専門家にご相談いただくことをお勧めします。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。
