Archive for the ‘相続’ Category

相続財産の調査方法その2(不動産、生命保険、負債)

2025-07-13

前回ご説明した現金、預貯金、株式・有価証券以外の主要な相続財産である不動産、生命保険、そして負債について、具体的な調査方法とその重要性について詳しくご説明します。

1. 不動産

不動産の有無を調べるには、まず毎年送られてくる固定資産税課税明細書を確認するのが一般的な方法です。この明細書には、故人が所有する不動産の一覧が記載されており、不動産調査の手がかりとなります。もし課税明細書が見当たらない場合や、固定資産税が非課税の不動産、あるいは共有名義の不動産(代表者以外には明細書が送付されないことがあります)の有無を確認したい場合は、注意が必要です。

不動産の調査において非常に有用なのが名寄帳(なよせちょう)です。名寄帳とは、特定の市町村内に故人が所有するすべての不動産(土地や家屋)について、その所有状況が一覧で記載された帳簿のことです。固定資産税を課税するために市町村が作成しているもので、故人がその市町村内にどのような不動産を所有しているかを網羅的に確認する際に役立ちます。これも、不動産が所在する市区町村役場で取得可能です。

しかし、名寄帳も万能ではありません。その限界も理解しておく必要があります。

特定の市町村内の情報のみ:名寄帳はあくまで発行している市区町村内の不動産情報しか記載されていません。故人が他の市町村にも不動産を所有していた場合、その情報は名寄帳には載っていないため、それぞれの市町村で個別に名寄帳や固定資産評価証明書を取得する必要があります。

課税対象外の不動産:固定資産税が課税されないような、極めて小さな私道や里道などの不動産は、名寄帳に記載されない場合や、記載されていても評価額が0円となっていることがあります。

直近の取得不動産:固定資産税の課税情報は1月1日時点の状況に基づいて作成されるため、故人がその年の1月2日以降に新たに取得した不動産については、その年の名寄帳には反映されていません。

相続財産に不動産が含まれる場合、「権利証」(登記済権利証または登記識別情報通知)を確認することも重要です。これは不動産の所有者であることを示す重要書類であり、登記簿上の名義人が被相続人であるかどうかを確認する手がかりとなります。特に複数の不動産を所有していた可能性がある場合、権利証を確認することで、見落としていた不動産の存在に気づくことがあります。また、権利証には固定資産税が課税されない物件(私道や山林など)も含まれている可能性があり、課税明細書だけでは把握できない不動産を確認できる点も大きなメリットです。相続登記の際にも、権利証があると手続きがスムーズに進む場合があるため、保管状況を必ず確認しておきましょう。

これらの点を踏まえ、不動産の調査は、様々な角度から、複数の情報を総合的に見て行うことが重要です。

2. 生命保険

生命保険契約は、故人が保険料を支払っていた場合、契約内容や受取人によっては相続財産として扱われることがあります。これを「みなし相続財産」と呼びます。生命保険の調査は、故人の自宅に保管されている保険証券保険会社からの通知、契約更新の案内などがないかを探すことから始めます。故人が複数の保険に加入していた可能性もあるため、注意深く確認することが重要です。

もし保険証券などが見つからない場合でも、2021年4月からは、日本生命保険協会が運営する「生命保険契約照会制度」を利用して、故人が生命保険に加入していたかどうかを調べることが可能です。この制度を利用することで、故人が契約していた可能性のある生命保険会社を一括で照会することができます。

3. 負債(借金など)

故人に借金がある可能性を調べることは、相続放棄を検討する上で非常に重要です。主な調査方法としては、信用情報機関への開示請求が挙げられます。個人の信用情報を取り扱う機関として、全国銀行個人信用情報センター、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)などがあります。これらの機関に故人の信用情報を請求することで、金融機関からの借入履歴やクレジットカードの利用状況などを確認できます。郵送で手続きが可能ですので、各団体のウェブサイトを確認すると良いでしょう。

ただし、個人間の貸し借りや、金融業者ではない法人からの借入などは、信用情報機関に情報が登録されないため、これらの負債は故人の残した書類や手帳、人間関係などから地道に調べていくしか方法がありません。そのため、相続開始後すぐに故人の書類を破棄することは避けるべきです。また、故人が他人の保証人になっていた場合、その保証債務も相続の対象となる可能性があるため、特に注意が必要です。保証債務の有無が疑われる場合は、故人の人間関係や残された資料を詳しく調査することが大切です。

専門家への相談が最も確実な方法です

相続に関する手続きは複雑で、期限管理や書類収集、登記や税務など多岐にわたります。誤った判断や遅延が後々トラブルを招く可能性もあるため、不安を感じたら早い段階で専門家へ相談することをおすすめします。

東急田園都市線「青葉台駅」近くの高野司法書士事務所では、相続手続きや相続財産調査のご相談を初回無料で承っております。平日夜間や土日祝日のご予約も可能で、お忙しい方でもご安心いただけます。また、オンライン相談(Zoom等)や出張対応も柔軟に行っておりますので、横浜市青葉区・緑区・都筑区周辺にお住まいの方だけでなく、遠方のご家族様もぜひお気軽にご相談ください。

相続財産の調査方法その1(現金、預貯金、株式、有価証券)

2025-07-12

相続手続きの中で、特に重要かつ最初に手をつけるべきなのが、「相続財産の調査」です。この調査は、故人(被相続人)が遺したプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含め、すべての遺産を正確に把握し、その価値を適正に評価するプロセスを指します。

相続財産調査がなぜこれほど大切なのでしょうか。その後の相続手続き、特に遺産の分割方法の選択や、相続放棄・限定承認の判断、さらには相続税の申告に大きく影響するからです。例えば、もし調査が不正確だったり漏れがあったりすると、後になって新たな財産や負債が発覚し、相続人同士の予期せぬトラブルにつながる可能性があります。また、相続放棄や限定承認を検討する場合、原則として故人の死亡を知った日から3ヶ月以内という短い期間で家庭裁判所に申し立てを行う必要があるため、この期間内に正確な財産状況を把握することが不可欠です。

ここでは、現金、預貯金、株式、有価証券といった相続財産について、種類ごとに具体的な調査方法と、その後の手続きを円滑に進めるためのポイントをご紹介します。

1. 現金の調査方法

自宅に保管されていた現金(いわゆるタンス預金など)は、金融機関の記録に残らないため、発見が難しい場合があります。故人の自宅や貴重品が保管されていた場所を丹念に探し、メモや家計簿などの記録がないか確認することが重要です。これらは、正式な記録とは異なりますが、財産の全体像を把握する上で役立つことがあります。

2. 預貯金の調査方法

故人が利用していた預貯金口座を特定することから始めます。

利用金融機関の特定: まず、故人の自宅に保管されていた通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物(通知書、ダイレクトメールなど)を探し、取引があった可能性のある金融機関を洗い出します。通帳を発行していないインターネット銀行の口座や、紛失した通帳の口座も考慮に入れるべきです。

残高証明書の発行依頼: 特定した金融機関には、故人の死亡日時点での残高証明書の発行を依頼します。この手続きは、相続人のうちの一人からでも請求可能ですが、故人の死亡が記録された戸籍謄本(除籍謄本)や、請求者が相続人であることを証明する戸籍謄本など、必要な書類が金融機関によって異なるため、事前に確認することが望ましいです。

取引履歴の確認: 残高証明書と合わせて、過去の取引履歴の開示も依頼しましょう。通帳への記帳や取引明細を見ることで、定期的にお金が引き出されていた先や入金元が分かり、新たな財産(例えば貸金庫の利用料支払い履歴から貸金庫の存在が判明するケース)や負債の手がかりとなることがあります。

口座凍結への対応: 金融機関は、預金者の死亡を知るとその口座を凍結し、出金や振り込みができなくなります。凍結された預金を引き出すには、遺言書による指定、仮払い制度の利用、または遺産分割協議書(あるいは調停・審判書)に基づいて手続きを行う必要があります。また、相続人全員の協力が得られれば、金融機関所定の書式に署名捺印することで引き出しが可能になる場合もあります。

3. 株式・有価証券の調査方法

故人が所有していた株式、投資信託、債券などの有価証券も相続財産に含まれます。

証券会社の特定: まず、故人の自宅に保管されていた取引報告書、残高報告書、あるいは株券などの書類がないかを確認します。最近では多くの書類が電子交付されているため、紙の郵送物が届かないケースもあります。故人の生前の会話や行動、手帳のメモなどから、取引があった可能性のある証券会社を絞り込むことが重要です。

証券保管振替機構(ほふり)への照会: 2004年(平成16年)の商法改正により、株券は原則として発行されなくなり、株式等の情報は「証券保管振替機構(通称:ほふり)」という機関で一元的に管理されるようになりました。特定の証券会社が不明な場合でも、この証券保管振替機構に対して開示請求を行うことで、故人が保有していた株式や証券の情報を確認できる場合があります。これにより、故人が取引していた証券会社を特定する手がかりを得られることがあります。

各証券会社への問い合わせ: 特定できた証券会社、または証券保管振替機構から判明した証券会社には、故人名義の口座の有無や死亡日時点での残高について問い合わせを行い、残高証明書や取引履歴などの発行を依頼します。

その他の有価証券: 株式や投資信託以外にも、仮想通貨、ゴルフ会員権なども相続財産となり得るため、これらの有無も合わせて調査対象とすべきです。貸金庫の有無も確認し、中に有価証券や貴金属がないか確認することが重要です。

相続財産調査は専門家への依頼がスムーズ

相続財産調査は、上記の通り多岐にわたるため、ご自身で全て行うには多大な時間と労力、そして専門知識を要します。特に、期限が迫っている場合や、財産の種類が多岐にわたる場合は、精神的・肉体的負担も大きくなります。

このような場合、相続に強い専門家に依頼することが非常に有効です。司法書士は、戸籍謄本の収集による相続人の確定から始まり、財産目録の作成、不動産の名義変更(相続登記)、銀行や証券口座の解約手続きなど、相続財産調査からその後の手続きまでを一貫してサポートすることができます。また、相続人間での紛争が予想される場合は弁護士と、相続税の申告が必要な場合は税理士と連携するなど、幅広いネットワークを活かしたワンストップサービスを提供することで、お客様の負担を大幅に軽減することが可能です。

相続財産調査やその他の相続手続きでお困りの方は、横浜市青葉区の高野司法書士事務所までお気軽にご相談ください。当事務所では、初回のご相談を無料で承っており、平日夜間や土日祝日のご相談にも対応可能です(要事前予約)。お客様の状況に合わせた最適な解決策を、司法書士が責任を持って、分かりやすく丁寧にご案内いたします。

相続税の基本知識

2025-07-07

相続税とは、相続により財産を受け継ぐ際に課税される税金です。相続が発生した場合、亡くなった方の遺産が相続人に引き継がれますが、引き継がれた財産に対して一定の税率が課されることになります。相続税は、日本の税法に基づき、受け継いだ遺産の価値に応じて税額が決定され、申告と納税が必要です。

相続税が課税される対象と範囲

相続税が課税されるのは、相続財産です。相続財産には以下が含まれます:

  1. 現金、預貯金
  2. 不動産(土地、建物)
  3. 株式、投資信託などの金融資産
  4. 自動車、宝石、骨董品などの動産
  5. 生命保険金(受取人が相続人の場合)

相続財産に含まれないもの

  • 債務(借金など):相続人は遺産と共に被相続人の債務も相続しますが、相続税の計算においては債務も控除の対象となります。
  • 不法行為に基づく損害賠償金:相続税の課税対象には含まれません。

相続税の課税対象となる財産の評価方法

相続税の計算は、相続財産の評価額に基づいて行われます。しかし、財産の種類によって評価方法が異なり、特に不動産や株式の評価は複雑です。

  1. 不動産の評価方法
    不動産は、相続税法で定められた基準に従って評価されます。例えば、土地の評価額は「路線価」を基準に算出されることが多く、これはその土地が位置する道路の価値をもとに決められます。家屋の評価は、固定資産税評価額を参考にします。
  2. 株式の評価方法
    上場株式は、通常その時点の市場価格で評価されます。一方、非上場株式は評価方法が異なり、企業の業績や資産状況を基に計算されます。特に、非上場株式の評価には専門的な知識が必要なため、評価額を正確に計算するためには専門家のアドバイスを受けることが重要です。
  3. 現金や預貯金の評価
    現金や預貯金は、そのままの額面通りに評価されます。これらは他の財産と異なり、評価方法に迷うことなく、相続税の計算に含めることができます。
  4. 動産(自動車、宝石、骨董品など)の評価方法
    動産の評価は、主に市場価格や査定額に基づいて行われます。例えば、宝石や美術品などは、専門家による鑑定が行われ、その価格が評価額として使われます。

相続税の計算方法

相続税の計算は、大きく分けて以下のステップで行います。

  1. 遺産総額の算出
    まず、故人が残したすべての財産(現金、不動産、株式、預貯金など)を評価し、その総額を算出します。財産の評価方法は、種類によって異なります。
  2. 基礎控除の適用
    相続税には基礎控除という、相続財産から差し引くことができる額があります。基礎控除額は、相続人の人数によって決まるので、まずこの控除を遺産総額から引きます。基礎控除後の残額が課税対象となります。

基礎控除額=3,000万円+600万円×相続人の数

  1. 課税遺産総額の計算
    基礎控除を差し引いた後の金額が、実際に課税される遺産額です。この金額に相続税の税率を適用して、最終的な税額を算出します。
  2. 相続税の分割
    課税対象の遺産が複数の相続人に分割される場合、各相続人の相続分に応じて税額が配分されます。配分された税額をそれぞれが支払います。

この流れで、相続税が計算されます。

相続税の申告と納税

相続税の申告は、相続が発生してから10ヶ月以内に行う必要があります。申告期限を守らないと、延滞税や加算税が課せられる可能性があります。

申告方法

相続税の申告書は、所轄税務署に提出します。申告書には、相続財産の詳細や相続人の情報、評価額などを記入する必要があります。また、相続財産の証明となる書類を添付することが求められます。

納税方法

納税は、通常現金で行われますが、一定の条件を満たす場合は物納(不動産などを納税の代わりに提供)や延納(分割納税)を選ぶことができます。

相続税の軽減措置

相続税にはいくつかの軽減措置が設けられています。代表的なものは以下です:

  1. 小規模宅地等の特例
    自宅や事業用土地に対して、一定の条件を満たすと評価額が減額されます。これにより、税負担を軽減することができます。
  2. 配偶者控除
    配偶者が相続する財産には、1億6000万円まで控除が適用されるため、配偶者が相続する際の税負担を軽減できます。
  3. 生命保険金の特例
    生命保険金が相続人に支払われる場合、一定額までは非課税となる特例があります。
  4. 未成年者控除や障害者控除
    未成年者や障害者が相続人となった場合、その相続税が控除される特例があります。

相続税の節税対策

相続税を節税するための方法としては、以下のような対策が有効です:

  1. 生前贈与
    生前に財産を贈与することで、相続財産を減らすことができます。贈与税がかかりますが、贈与税には基礎控除があるため、それをうまく活用することで相続税の負担を軽減できます。
  2. 不動産の評価額を下げる
    不動産の評価額を減らすための方法として、土地の利用方法や建物の活用方法を見直すことが考えられます。
  3. 生命保険の活用
    生命保険の死亡保険金を利用することで、相続税を軽減することができます。保険金は非課税枠があり、うまく活用することで負担を減らすことができます。

まとめ

相続税は、相続人が故人の財産を受け継ぐ際に発生する税金です。相続財産の評価額に基づいて税額が決まり、基礎控除を差し引いた後の金額に税率が適用されます。相続税の申告は10ヶ月以内に行う必要があり、適切な対策を講じることが求められます。生前贈与や不動産の評価額の調整など、相続税の節税対策を行うことで、相続税の負担を軽減することが可能です。

相続人申告登記の概要について

2024-03-05

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。

さて、来月4月1日より、相続登記が申請義務化されますが、新しい制度である「相続人申告登記」の内容についてご説明したいと思います。

まず、相続登記の申請義務化のルールについて確認しておきましょう。

・基本的義務(不動産登記法第76条の2第1項)

相続や遺贈により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない。

 

・遺産分割成立時の追加的義務(不動産登記法第76条の2第2項、第76条の3第4項)

遺産分割によって、不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、遺産分割協議の内容に即した相続登記を申請する義務を負う。

上記を踏まえ、相続登記の申請義務化に伴う具体的な対応は以下のようになります。

【ケース1】 相続開始後3年以内に遺産分割協議が成立しなかった場合

➡①3年以内に相続人申告登記の申出または法定相続分での相続登記の申請を行う。

➡①の後、遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議成立日から3年以内に、遺産分割協議の内容に即した相続登記の申請を行う。

➡①の後、遺産分割協議が成立しなければ、それ以上の登記申請義務は生じない。

【ケース2】 相続開始後3年以内に遺産分割協議が成立した場合

➡①3年以内に遺産分割協議の内容に即した相続登記の申請を行う。

➡①が難しい場合等は、3年以内に相続人申告登記の申出または法定相続分での相続登記の申請を行い、遺産分割協議成立日から3年以内に、遺産分割協議の内容に即した相続登記の申請を行う。

【ケース3】 遺言書があった場合

➡①遺言によって不動産の所有権を取得した相続人が取得を知った日から3年以内に遺言の内容に即した相続登記の申請を行う。

➡①が難しい場合等は、3年以内に相続人申告登記の申出または法定相続分での相続登記の申請を行う。

被相続人が遺言書を残していたというケースを除いては、3年以内に遺産分割協議を成立させ、その内容の相続登記を申請することを目指していくことになろうかと思います。しかし、実際のケースでは3年以内に遺産分割協議がまとまりそうにないという場合も多いでしょう。

そのような場合にひとまず「相続人申告登記」を行うか、「法定相続分による相続登記」を申請するかどちらかを選択することになります。

ただし、この場合は、第76条の2第1項の基本的義務を果たしたことにはなりますが、遺産分割協議が成立した場合は、その成立から3年以内の追加的義務も履行する必要が生じます。

では、「相続人申告登記」とはどのような制度なのでしょうか。その特徴をみてみましょう。

【相続人申告登記】

相続人が申請義務を簡易に履行することができるようにするため新たに設けられた登記です。

①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなします。

➡相続人が複数存在する場合でも特定の相続人が単独で申し出ることが可能(他の相続人の分も含めて代理申出することも可能)

➡オンラインでの申出も可能(押印・電子署名が不要)

➡法定相続人の範囲及び法定相続分の割合の確定が不要

➡添付書面は、申出をする相続人自身が被相続人(所有権の登記名義人)の相続人であることが分かる当該相続人の戸籍謄本を提出することで足りる

先ほどもご説明したとおり、3年以内の遺産分割協議の成立が難しい場合は、「相続人申告登記」または「法定相続分による相続登記」を申請することになりますが、「法定相続分による相続登記」は法定相続人の範囲や法定相続分の割合の確定(登記記録に公示されるため)が必要となり、被相続人の出生から死亡に至る一連の戸籍(除籍)謄本等の収集も必須となり、登記申請にあたって手続的な負担がどうしても大きくなってしまいます。

そのため、無理に「法定相続分による相続登記」を選択せずに、相続人にとって、より簡易に手続きできる「相続人申告登記」を申請し、とりあえずの基本的義務を履行しておけることは相続人にとって大きなメリットであると思います。

なお、相続人申告登記は、次のように付記登記で登記されることになります。

 権 利 部(甲区) (所有権に関する事項)
 順位番号  登記の目的 受付年月日・受付番号  権利者その他の事項
 1  所有権移転 平成●年●月●日第●号

原因 平成●年●月●日売買

所有者 ●市●町●番地

甲野太郎

 付記1号  相続人申告 令和●年●月●日第●号

原因 令和●年●月●日申出

相続開始年月日 令和●年●月●日

甲野太郎の相続人として申出があった者

●市●町●番地

乙野次郎

亡くなった後の手続きリスト(期限4か月以内のもの)

2024-02-19

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。今回は、亡くなった後の手続きリスト(期限4か月以内のもの)についてご説明したいと思います。

1.相続の放棄(3か月以内)

プラスの財産よりも、借金などのマイナスの財産の方が多いときは、相続の放棄について検討します。故人が亡くなってから3か月以内に手続きを行う必要があります。相続を放棄するという意思を家庭裁判所に申し出る必要があります。

相続放棄については下記のリンクをご参照ください。

相続放棄について

2.相続の限定承認(3か月以内)

故人の財産について、プラスの財産の方が多いのか、マイナスの財産の方が多いのか分からない時があります。このような場合に、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法を限定承認と言います。限定承認は、故人が亡くなってから3か月以内相続人全員で家庭裁判所に申し出る必要があります。

限定承認については下記のリンクをご参照ください。

限定承認について

3.所得税の準確定申告(4か月以内)

故人に事業所得や不動産所得があった場合は、相続人が代わりに確定申告をする必要があります。これを準確定申告といい、故人が亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。

準確定申告が必要な具体例

・自営業者だった方

・不動産賃貸業を行っていた方

・2か所以上から給与を得ていた方

・400万円以上の年金受給があった方

・2,000万円を超える給与所得があった方

・給与所得や退職所得以外に20万円を超える所得があった方

期限 亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内
申告者 相続人
申告先 故人の住所地を管轄する税務署
必要なもの(※事前に役所にご確認ください)

・確定申告書及び申告書付表

・申告する方の身分証明書

・源泉徴収票(給与や年金)

・控除証明書(生命保険及び損害保険)

・医療費の領収書

当事務所のリーフレットを作成しました

2024-02-12

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。

当事務所では、遺産整理業務(遺産承継業務)、遺言書作成サポート、相続放棄サポートを中心に業務を行っております。お客様に配布するためのリーフレットを作成いたしましたのでご紹介させていただきます。相続登記義務化に関するQ&Aも記載しております。

リーフレット表

リーフレット裏

遺言書があっても相続登記申請を急ぐべき理由

2024-02-05

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。今回は、遺言書があっても相続登記申請を急ぐべき理由についてご説明したいと思います。

相続法の改正について

突然ですが、ここでクイズです。

被相続人: 父

相続人: 長男 二男

父が残した遺言書の内容: 私の所有する自宅不動産は長男に相続させる

上記のケースで、二男はAからお金を借りていました。Aは二男の債権者です。長男が自宅不動産の相続登記をする前に、借金をしていた二男の債権者Aが法定相続分(長男2分の1、二男2分の1)で相続したとする登記を申請してしまいました。

この場合、長男は、自分が自宅不動産の所有権すべてを相続したとAに主張することができるでしょうか。

答えは「No」です。しかし、以前は相続登記をしなくても自宅不動産は自分のものだと主張することができました。

どういうことかと言うと、令和元年(2019年)7月1日の改正相続法の施行により、遺言により法定相続分より多くの財産を相続した場合、登記、登録などの対抗要件を備えないと、第三者に対抗できなくなりました。法定相続分より多くの財産を取得した相続人は、他人に権利を奪われる可能性がありますので要注意です。

下記が改正された条文になります。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第899条の2 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
 
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

改正法の趣旨

なぜ、このような改正がされたのかというとAのような遺言の内容を知らない第三者を保護するためです。Aとしては、父に相続が発生したら二男が当然、法定相続分である自宅不動産の持分2分の1を相続するだろうから、二男が借金を返済できなくても、二男の不動産持分2分の1を差し押さえて、その売却代金から回収できると考えるでしょう。遺言の存在によって、Aの期待は一方的に裏切られてしまいます。

改正前

遺言があれば、相続登記をせずしてAのような債権者(第三者)に対して自分(二男)が所有者であることを主張できました。そのため、Aとしては、二男の持分を差し押さえてもその差し押さえは無効という結果になってしまいます。

改正後

遺言があっても、相続登記をしなければAのような債権者(第三者)に対して、自分(二男)の法定相続分を超える部分については、自分がその不動産の所有者であることを主張することができません。そのため、Aが先に二男の持分を差し押さえて売却換価することができます。

相続人の間では、改正前でも改正後でも登記なくして対抗することが可能です。すなわち、長男は二男に対して、自分が自宅不動産すべてを相続したと主張することが可能です。

対策は?

長男として対策方法はあるでしょうか。法定相続分を超えた部分につき、先に登記をした方が勝ちということになりますので、速やかに相続登記をすることが何より重要です。また、自筆証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所での検認という手続きが必要になり、検認後相続登記の申請までに一定の時間がかかってしまいます。生前から遺言書作成などに関われるのであれば、検認の手続きが不要な公正証書遺言で作成してもらうことも検討すべきかと思います。

相続登記義務化についてのチラシを作成しました

2024-01-26

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。

いよいよ、本年度4月1日から相続登記が義務化されますが、認知度はまだまだ低いようです。
当事務所では、一般の方に広く知っていただくため、相続登記義務化についてのチラシを作成いたしました。
相続について少しでも疑問点・お困りごとがございましたら、当事務所までお気軽にお問合せください。

相続登記義務化チラシ

亡くなった後の手続きリスト(期限14日以内のもの)

2024-01-11

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。今回は、亡くなった後の手続きリスト(期限14日以内のもの)についてご説明したいと思います。

1.死亡届と死亡診断書の提出(7日以内)

死亡届と死亡診断書はA3用紙1枚で、左半分が死亡届、右半分が死亡診断書となっています。病院や自宅で亡くなった場合は、医師に死亡診断書を出してもらいます。

期限亡くなったことを知った日から7日以内(国外で亡くなったときは、亡くなったことを知った日から3か月以内)
提出先亡くなった方の本籍地、届出をする方の住所地、亡くなった場所の役所のいずれか
届出人(死亡届への署名や押印)親族、同居していた人、家主、地主、後見人など(提出すること自体は代理人でも可能)
注意点・火葬許可申請書と一緒に提出します。
・提出した死亡届の原本は返却されません。提出前に5部はコピーを取っておくようにしましょう。
・届出人の印鑑(認印)と身分証明書が必要な場合があります。準備しておきましょう。

2.火葬許可申請書の提出(7日以内)

火葬や埋葬をするには、火葬許可申請書を提出して、火葬許可証を受け取る必要があります。火葬が終わると、火葬許可証に火葬執行済の押印がされ、そのまま埋葬許可証として利用できます。

期限
亡くなったことを知った日から7日以内(国外で亡くなったときは、亡くなったことを知った日から3か月以内)
提出先
「死亡届」の提出先と同様
届出人
「死亡届」の届出人(提出すること自体は代理人でも可能)
注意点
・死亡届と一緒に提出します。
・万が一、紛失してしまった場合は、火葬許可証を発行してもらった役所で再発行の手続きをします。
・届出人の印鑑(認印)と身分証明書が必要な場合があります。準備しておきましょう。

3.健康保険の資格喪失手続き

病気やケガで病院を受診する際に、全国民がお金を出し合って、医療費の援助を受けることができるのが健康保険の制度です。健康保険の制度は、自営業者の方などが加入する「国民健康保険」、会社員の方などが加入する「健康保険」、75歳以上の方が加入する「後期高齢者医療保険」の大きく3つに分けることができます。亡くなった場合は、援助を受けることができなくなるため、資格喪失の手続きを行います。

3-1 国民健康保険の場合(14日以内)

期限
亡くなった日から14日以内
提出先
亡くなった方が住んでいた市区町村の役所
届出人
世帯主、同一世帯の人など
必要なもの(※事前に役所にご確認ください)
・国民健康保険資格喪失届(役所で入手可能)
・国民健康保険の被保険者証
・亡くなったことを証する書面(戸籍謄本や死亡診断書の写しなど)
・印鑑(認印)
・窓口で手続きされる方の身分証明書
注意点
・世帯主が亡くなった場合は、世帯主の変更届とともに、世帯全員分の保険証(被保険者証)を返却する必要があります。

3-2 社会保険(健康保険)の場合(5日以内 )

期限
亡くなった日から5日以内
窓口
基本的に勤務していた会社の担当者
必要なもの(※事前に会社にご確認ください)
・健康保険・厚生年金保険の被保険者証(扶養されていた方の分を含む)
注意点
・亡くなった方の扶養に入っていた方は、別の家族の扶養に入るか、国民健康保険へ加入するか、どちらかの手続きが必要になります。

3-3 後期高齢者医療保険の場合(14日以内)

期限
亡くなった日から14日以内
提出先
亡くなった方が住んでいた市区町村の役所
届出人
世帯主、同一世帯の人など
必要なもの(※事前に会社にご確認ください)
・後期高齢者医療の資格喪失届(役所で入手可能)
・後期高齢者医療の被保険者証
・亡くなったことを証する書面(戸籍謄本や死亡診断書の写しなど)
・印鑑(認印)
・窓口で手続きされる方の身分証明書
 

4.公的介護保険の資格喪失手続き(14日以内)

40歳になると介護保険に加入することが義務付けられますが、実際に介護サービスを利用した場合に、サービスにかかった費用の一部を負担してもらえるのが介護保険制度です。①65歳以上の方、②40歳以上65歳未満で要介護・要支援の認定を受けていた方が亡くなった場合は、資格喪失の手続きを行います。
期限
亡くなった日から14日以内
提出先
亡くなった方が住んでいた市区町村の役所
届出人
世帯主、同一世帯の人など
必要なもの(※事前に役所にご確認ください)
・介護保険の資格喪失届(役所で入手可能)
・介護保険の被保険者証
・亡くなったことを証する書面(戸籍謄本や死亡診断書の写しなど)
・印鑑(認印)
・窓口で手続きされる方の身分証明書
注意点
 
・介護保険料を納めすぎていた場合は、役所からご遺族に対し、還付金が支払われます。

5.年金の受給停止手続き(14日または10日以内)

亡くなった方が年金を受け取っていた場合は、年金の受け取りを停止する手続きを行います。
期限
亡くなった日から14日以内(国民年金の場合)
亡くなった日から10日以内(厚生年金の場合)
提出先
最寄りの年金事務所または年金相談センター
必要なもの(※事前に年金事務所等にご確認ください)
・年金受給権者の死亡届(年金事務所で入手可能)
・亡くなった方の年金証書(紛失した場合は、理由を年金受給者の死亡届に記載する)
・亡くなったことを証する書面(戸籍謄本や死亡診断書の写しなど)
注意点
・手続きが遅れると、年金の支払いを止められず不正受給となりますのでご注意ください。
・亡くなった方が、日本年金機構にマイナンバーを登録していた場合は、手続き不要です。
・未支給の年金がある場合は、受給停止の手続きと併せて未支給年金の請求手続きを行うと便利です。ただし、請求権者が限定されていますのでご注意ください。

6.世帯主の変更手続き(14日以内)

世帯主の方がなくなり、残った世帯員が2名以上(15歳以上)の場合は、世帯主変更届を提出します。
期限
亡くなった日から14日以内
提出先
亡くなった方が住んでいた市区町村の役所
届出人
新しく世帯主になる方、または同じ世帯の方
必要なもの(※事前に役所にご確認ください)
・世帯主変更届(役所で入手可能)
・国民健康保険被保険者証など(加入していた場合)
・印鑑(認印)
・窓口で手続きされる方の身分証明書

keyboard_arrow_up

0455077744 問い合わせバナー 無料相談について