遺言書がなく相続人が複数人いる場合に、特定の遺産(相続財産)を特定の相続人が単独所有する形で相続するには、遺産分割協議が必要です。遺産分割協議がまとまったら合意したことの証明として遺産分割協議書という書面を作成しておくことが重要です。
遺産分割協議は共同相続人全員が参加しなければなりません。相続人の1人でも除いて行った遺産分割協議は無効になります。相続人全員が協議の内容に納得した上で、遺産分割協議書に実印を押印することになります。
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1.遺産分割協議書を作成することの重要性
①後のトラブルを防止するため
相続人全員が遺産分割協議の内容に合意したのであれば、それだけで遺産分割協議は成立していますので、遺産分割協議書を作成する必要はないと考えることもできます。
しかし口約束だけで済ませてしまうと後に言った言わないのトラブルの原因になることがありますので、遺産分割協議書を作成しておいた方が良いでしょう。
②法務局での不動産の相続登記、銀行での預金の相続手続きのため
法務局で行う不動産の相続登記(名義変更)、銀行や郵便局での預金や貯金の相続手続き、証券会社での株式の相続手続きの際も、ほとんどのケースで遺産分割協議書が必要になります。
③相続税の申告の手続きのため
相続税の申告が必要な場合、特に配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例などの適用を受ける場合は、申告の添付書類として遺産分割協議書が必要になるケースがあります。
2.遺産分割協議の方法
遺産の分割方法には 次の3つの方法があります。
- 現物分割による方法
- 代償分割による方法
- 換価分割による方法
①現物分割による方法
現物分割とは、現物の相続財産をそのままの状態で分ける方法です。3つの分割方法の中で一番一般的な分割方法です。
相続財産のうち、配偶者が不動産を、長男が株式を、長女が預貯金を相続するというように分ける方法です。相続人が特定の相続財産を引き継ぐだけのため、手続きがシンプルな点がメリットです。
一方、現物分割をする財産が、数千万円する不動産と、数百万円の預貯金という場合は、不動産を相続する相続人と預貯金を相続する相続人で財産の金額に大きな差があるため不公平感が生まれます。
②代償分割による方法
代償分割とは、特定の相続人が法定相続分以上の財産を取得する代わりに、他の相続人に対し、代償金(金銭)を支払うことによって清算する方法です。現物分割をすることが困難な場合に有効な方法です。
例えば、相続財産が自宅のみで、その価値が3,000万円、配偶者と子供が相続人の場合に、配偶者が自宅を相続して子供には1500万円の代償金を支払うようなケースです。
代償金を支払うことで相続分を調整し公平に出来るため、相続人を平等に扱えるのがメリットですが、相続人間で財産の評価方法をめぐり見解が分かれてしまったり、代償金を負担する相続人が自らの財産から金銭を捻出しなければならない点がデメリットです。
③換価分割による方法
換価分割とは、相続財産を売却して現金に換えて、法定相続分に応じて相続人間で分配する方法です。
諸経費を差し引いた後の売却代金を分配するため平等に分配することが出来る点がメリットです。
一方、売却時期によって売却価格が異なるため必ずしも高額で売却することが出来るわけではないことや、譲渡所得税の課税が行われてしまうことなどがデメリットとして挙げられます。
3.遺産分割協議書の書き方
遺産分割協議書の書き方に法律的な決まりはありません。被相続人(亡くなった方)を特定出来る情報と相続財産を漏れなく正確に記載し、相続人の誰が、どの財産を、どのように取得するのかを明確に表示することが重要です。
4.当事務所にご依頼いただいた場合のサービスの流れ
①戸籍謄本の収集、相続人の確定
被相続人の出生から死亡までの(除)戸籍謄本、相続人の戸籍謄本等を収集し、相続人調査を行い、相続人を確定します。なお、遺産分割協議には相続人全員が参加しなければなりません。以下のようなケースでは特別な手続きが必要になります。
- 相続人に所在不明(行方不明)の方がいる
⇨家庭裁判所で不在者財産管理人の選任を申し立てる - 相続人に未成年者がいる
⇨家庭裁判所で特別代理人の選任を申し立てる
(親権者との利益が相反する場合) - 相続人に認知症で判断能力がない方がいる
⇨家庭裁判所に成年後見人の選任を申し立てる
②相続財産の調査
被相続人の財産について調査します。具体的には以下の書類を収集して財産を把握して、財産目録を作成します。
不動産
登記済権利証や課税明細書、名寄帳
預貯金、株式や投資信託
通帳や取引残高報告書、残高証明書
債務など(借金や未払の固定資産税や医療費)
通帳、契約書、請求書、借用書など
③遺産分割協議
相続人と相続財産を確定出来たら相続人全員で相続財産をどのように分けるか協議を行います。寄与分(被相続人への特別な貢献)、特別受益(生前の贈与)などを考慮すべきケースなど、法律的な知識が必要になる場合もありますので、必要に応じて当事務所にて適切にアドバイス致します。
また、相続税を考慮した遺産分割をすべき場合は、提携の税理士とともに対応させていただきます。
④遺産分割協議書の作成
相続人全員での話し合いがまとまったら当事務所で遺産分割協議書を作成致します。内容をご確認いただき、相続人全員にご署名の上、実印で押印いただきます。
遺産分割協議書は相続手続きにおいて重要な役割を果たします。相続人調査、相続財産調査を正確に行うことは大前提です。作成した遺産分割協議書の内容に問題があるとその後に金融機関での預貯金解約手続きや法務局での相続登記で利用することができず、再度作成せざるを得なくなります。
当事務所では、正確な相続人調査、財産調査に基づく遺産分割協議書の作成をサポートしております。