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兄弟相続のトラブルを回避する方法

2025-08-01

1.兄弟間の相続トラブルが増えている背景

かつての日本では「長男が家を継ぐ」「兄弟は協力して親の遺産を整理する」といった価値観が根強く、相続をめぐる争いはそれほど多くありませんでした。しかし近年では、家族構成や価値観の多様化、経済状況の変化などにより、兄弟姉妹間での相続トラブルが増加傾向にあります。

特に問題になりやすいのが「遺産分割」をめぐる意見の対立です。不動産や預貯金などの財産をどう分けるかについて、兄弟それぞれが異なる希望や解釈を持ちやすく、感情の対立に発展することも少なくありません。「親の介護をしてきたのに取り分が少ない」「突然、相続放棄した兄弟がいて遺産分割協議が混乱した」「代襲相続人が登場して複雑になった」など、さまざまな事例が報告されています。

また、相続に必要な戸籍の取得や、税金の申告・支払い、名義変更など、実務面でも複雑な対応が求められるため、兄弟間で十分に情報共有ができていないと、誤解や不信感から深刻な対立に発展することもあります。

この記事では、兄弟間の相続で起こりがちなトラブルを紹介しながら、その回避方法をわかりやすく解説していきます。相続を「争族」にしないためにも、事前に知っておきたいポイントを確認しておきましょう。

2.よくある兄弟間の相続トラブル事例

兄弟姉妹間での相続トラブルは、財産の多寡にかかわらず発生します。ここでは、実際によく見られるトラブルのパターンを整理し、それぞれの背景や要因について説明します。

1. 親の介護をめぐる貢献度の不公平感

兄弟のうち一人だけが長年にわたって親の介護を担ってきたケースでは、「介護してきたのだから、他の兄弟より多く相続したい」という気持ちが生まれることがあります。しかし、法定相続分に介護の貢献は直接反映されません。これにより、「苦労したのに他と同じ取り分なのか」と不満が生じ、他の兄弟との間に亀裂が入ることもあります。

このような場合には「寄与分」という制度を利用することも検討できますが、証明が難しく、争いに発展するケースもあります。

2. 遺言書がない・遺言の内容に不満

親が遺言書を残していない場合、相続人全員での遺産分割協議が必要となりますが、全員の意見がまとまらず協議が長期化することが少なくありません。逆に、遺言書があっても内容に偏りがある場合、「なぜ兄だけに不動産が?」などと不信感を抱かれ、トラブルに発展することもあります。

自筆証書遺言に不備があり、法的に無効と判断されることで、さらに混乱が生じる例も見られます。

3. 相続放棄による意外な展開

兄弟の中で一人だけが相続放棄をしたことで、他の相続人の取り分が変動し、不満を招くことがあります。とくに借金があるケースでは、相続放棄によって残された相続人に負担が集中してしまうことも。

4. 代襲相続による新たな関係者の登場

相続人の一人が先に亡くなっており、その子(孫など)が代襲相続人として権利を持つ場合、従来の兄弟姉妹とは異なる世代が遺産分割協議に加わることになります。関係性が薄く、連絡先が分からない、そもそも相続に関心がないといった事情により、手続きが遅延・停滞する原因にもなります。

3.遺産分割協議でトラブルを回避するための工夫

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要な手続きです。円滑に進めるためには、感情論に発展する前に、具体的な工夫を講じておくことが重要です。この章では、兄弟間でのトラブルを未然に防ぐために有効な対応策をご紹介します。

1. 初期段階での「情報共有」を徹底する

遺産分割協議を開始する前に、遺産の全容、法定相続人の範囲、相続税の見込み、遺言書の有無など、全員が同じ情報を共有することが重要です。情報に偏りがあると、不信感や不公平感を生み、協議が決裂する原因になります。

たとえば以下の情報をまとめて共有するとスムーズです:

  • 財産目録(不動産、預貯金、有価証券、借金など)
  • 被相続人の戸籍・住民票除票
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 税理士・司法書士からの意見書(可能なら)

2. 話し合いの場では「感情論」を避ける工夫

遺産分割協議が進むうちに、「あのとき面倒を見たのは自分だ」「付き合いがなかったのに相続だけ主張するのはずるい」といった感情論に発展することが多くあります。これを防ぐには、事前に議題を整理し、協議の目的を「遺産の円満な分割」に集中させる必要があります。

特に兄弟間の場合は、過去の家族関係が影響しやすいため、必要に応じて第三者(司法書士やファシリテーター)を同席させると効果的です。

3. 寄与分や特別受益は「明確な根拠」を提示する

「自分だけが介護した」「生前に多く援助してもらった」などの主張がある場合、それを協議に反映させたいと考えるのは自然なことです。しかし、感覚的な訴えではなく、客観的な証拠(介護日誌、送金記録、不動産名義の変更書類など)を用意することがトラブル回避につながります。

寄与分や特別受益は、協議の場で争いになりやすいため、第三者による意見や法的な解釈をもとに冷静に判断することが望まれます。

4. 書面による「遺産分割協議書」の作成を必ず行う

口頭での合意だけで終わらせず、必ず遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名押印することが大切です。登記や銀行手続きに使用できる正式な書類であると同時に、将来のトラブルを防ぐ「証拠」となります。

また、相続登記や金融機関への提出を見据えて、協議書の文言や構成は専門家と相談しながら慎重に行いましょう。

5. 専門家の同席や仲介を活用する

兄弟姉妹での相続協議は、どうしても感情が絡みやすく、冷静な話し合いが難しくなることがあります。こうした場合、司法書士や弁護士といった専門家に協議の立会いを依頼することで、中立的かつ法的観点からのアドバイスを得ることができ、話し合いを前に進めやすくなります。

4.相続放棄が有効なケースとその判断ポイント

相続放棄とは、法律上当然に発生する相続権を「放棄する」ことで、最初から相続人ではなかったとみなされる制度です。兄弟間の相続においても、相続財産がプラスよりもマイナス(借金など)のほうが多い場合や、遺産をめぐるトラブルに巻き込まれたくない場合など、相続放棄が有効な選択肢となるケースがあります。

ここでは、相続放棄をすべきかどうか判断するためのポイントをわかりやすく解説します。

1. 借金などの負債が遺産に含まれている場合

相続では、財産(プラスの遺産)だけでなく、借金や未納の税金(マイナスの遺産)も引き継ぐことになります。兄弟姉妹が相続人となる場面では、親の遺産がすでに長期間管理されておらず、借金や滞納金の存在が明らかになることもあります。

このような場合、相続放棄を行えば、借金の支払い義務を免れることができます。ただし、プラスの財産があるかどうかは放棄前に慎重に調査する必要があります。

2. 他の相続人との関係悪化を避けたい場合

兄弟姉妹との関係がもともと良くなかったり、遺産分割協議が争いになりそうな場合には、あえて相続放棄を選ぶことでトラブルを回避するという選択肢もあります。

相続放棄をすれば、遺産分割協議に参加する必要がなくなり、関係者とのやり取りを最小限に抑えることが可能です。ただし、特定の財産だけを放棄するということはできないため、全ての相続権を失うことになります。

3. 相続放棄の手続きと期限に注意

相続放棄は、家庭裁判所に対して「相続放棄の申述」を行うことで成立します。注意すべきは、その期限です。相続を知った日から3か月以内に申立てを行う必要があり、これを過ぎると単純承認(すべてを相続する)とみなされるおそれがあります。

万一、期限内に相続財産の内容がよく分からない場合は、「熟慮期間の伸長申立て」を行って3か月の猶予を延ばすことも可能です。

4. 相続放棄後の代襲相続や他の影響に注意

兄弟姉妹の相続では、相続放棄によって思わぬ相続関係の変化が生じることがあります。たとえば、放棄した兄弟に子(甥・姪)がいる場合でも、代襲相続は発生しません(親の相続放棄は、代襲原因ではないため)。

また、放棄によって次順位の相続人(他の兄弟やその子など)に相続が移るため、相続関係が複雑になるケースもあります。放棄の影響範囲は慎重に確認する必要があります。

5. 相続放棄後の注意点(財産を使わない・処分しない)

相続放棄を考えている場合は、「相続財産を管理・使用しないこと」が非常に重要です。たとえば、被相続人の預金を引き出して使ったり、不動産を貸したりする行為は、「単純承認」とみなされ、放棄が認められなくなる可能性があります。

また、通帳の記帳や遺品整理なども「相続人としての管理行為」にあたると疑われる可能性があるため、判断に迷う行動は事前に司法書士など専門家に相談することをおすすめします。

5.兄弟間で代襲相続が発生するケースと対応

兄弟姉妹が相続人となるケースでは、「代襲相続(だいしゅうそうぞく)」が発生することがあります。代襲相続とは、本来相続人となるはずだった人が、相続開始以前に死亡している場合に、その子が代わりに相続人となる制度です。

この章では、兄弟相続における代襲相続の仕組みと注意点を、具体例を交えながら解説します。

1. 兄弟姉妹に代襲相続が認められるケースとは

代襲相続が認められるのは、民法第887条・第889条の規定によりますが、兄弟姉妹が相続人となる場合でも、その兄弟姉妹が既に死亡していた場合、その人の「子(甥・姪)」が代襲相続人として相続に参加します。

たとえば以下のようなケースです:

  • 被相続人に配偶者も子もおらず、兄弟姉妹が相続人となる場合
  • そのうちの一人の兄弟が被相続人より先に死亡していた場合
  • その兄弟に子がいた場合、その子(甥や姪)が代襲相続人となる

ただし、甥や姪がすでに死亡していても「再代襲相続」は認められない点に注意が必要です。

2. 戸籍調査がより複雑になる

代襲相続が発生すると、相続人の調査や確定作業が通常の相続よりも複雑になります。通常の相続の場合は、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍と、相続人の現在の戸籍があれば手続きが進むことが多いです。しかし、代襲相続がある場合は、次のような追加書類が必要となります。

  • 代襲者の親(たとえば、亡くなった兄弟姉妹)の除籍謄本
  • 甥・姪(代襲者)の現在の戸籍謄本

場合によっては、複数の市区町村にまたがる戸籍の取得が必要になり、時間と手間がかかります。特に転籍を繰り返している家庭では、古い戸籍をたどることに苦労することがあります。

3. 代襲相続人との遺産分割協議の実務上の問題

代襲相続人が多数いる場合、それぞれに遺産分割協議書への署名・押印と印鑑証明書の提出が必要です。中には、長年疎遠になっている甥や姪、海外在住の代襲相続人が含まれることもあり、連絡が取れない、協議に応じないといったトラブルが発生するケースもあります。

特に、相続財産が不動産中心で売却予定がある場合、全員の同意が必要になるため、協議が難航することが少なくありません。

4. 代襲相続人が未成年の場合の注意点

代襲相続人が未成年者である場合には、法定代理人(多くは親権者)が手続に関与することになります。ただし、未成年者と親権者が利害関係を有する場合(たとえば親も相続人の場合)には、「特別代理人」の選任が必要になる場合があります。

この手続は家庭裁判所に申し立てる必要があり、事務的・時間的な負担が増すため、あらかじめ確認しておくことが重要です。

5. 遺言がある場合の代襲相続の影響

遺言がある場合、その内容によっては代襲相続人が相続できない場合もあります。たとえば、被相続人が兄弟の一人にだけ全財産を相続させるという遺言を残していた場合、その兄弟が先に亡くなっていても、その子には相続権が移らないことがあります。

これは、代襲相続は「法定相続」に適用される制度であり、「遺言による相続」には原則として適用されないからです。したがって、遺言がある場合には内容を精査し、代襲相続人の有無とその扱いを確認する必要があります。

6.兄弟間の相続で必要になる戸籍収集と注意点

兄弟姉妹が相続人となる場合、他の相続形態と比べて戸籍の収集が煩雑になりやすい点に注意が必要です。ここでは、兄弟間の相続において、どのような戸籍書類を、どこまで集める必要があるのかを具体的に解説します。

1. 兄弟相続で必要な基本的な戸籍類

兄弟姉妹が相続人となるのは、被相続人に配偶者も子もおらず、かつ親(直系尊属)もすでに亡くなっている場合です。このようなケースでは、相続人である兄弟姉妹を確定させるために、以下の戸籍が必要となります。

  • 被相続人の出生から死亡までの全戸籍(改製原戸籍・除籍謄本を含む)
  • 被相続人の両親の出生から死亡までの全戸籍(改製原戸籍・除籍謄本を含む)
  • 被相続人の兄弟姉妹の現在の戸籍謄本

2. 代襲相続がある場合の追加書類

兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっており、その子(甥・姪)が代襲相続人になる場合は、さらに以下の戸籍が必要になります。

  • 代襲相続人(甥・姪)の現在の戸籍謄本
  • 亡くなった兄弟姉妹(甥・姪の親)の出生から死亡までの全戸籍(改製原戸籍・除籍謄本を含む)

特に注意すべきは、代襲相続人が多数いるケースや、甥・姪が既に亡くなっている場合です。この場合、再代襲は認められないため、その人の子どもには相続権が及びませんが、確認のための戸籍は必要になります。

3. 戸籍の「つながり」を確認することが重要

兄弟相続で特に重要なのは、「被相続人と相続人とのつながりを明らかにする戸籍が揃っているか」です。

また、婚外子や養子縁組などが含まれる場合、親子関係や兄弟関係が戸籍で明確に証明されていないと、法定相続人として認められないケースもあるため注意が必要です。

7.兄弟の相続トラブルを防ぐために今できること

兄弟姉妹間の相続は、親の死後に初めて向き合う課題であることが多く、そのぶん感情的な対立や手続き上の混乱が起こりやすいものです。

こうした事態を避けるためには、被相続人が遺言書を作成しておくこと、そして相続人側も事前に関係者の把握や手続きの準備を進めておくことが重要です。また、相続税や登記などの面でも複雑な判断が求められることがあるため、相続に精通した専門家へ早めに相談することが、円満な相続の第一歩になります。

高野司法書士事務所では、兄弟間の相続における不動産の名義変更や、遺産分割協議書の作成、相続放棄の手続きなど、相続に関するご相談を幅広く承っております。横浜市青葉区をはじめ、緑区、都筑区、町田市などの近隣地域の方からも多くのご依頼をいただいております。

「兄弟で揉めない相続をしたい」「今の状況に不安がある」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。あなたのご事情に寄り添い、最適な解決策をご提案いたします。

相続手続きは誰に相談すべきか? 弁護士・司法書士・行政書士・税理士・銀行の違いと選び方

2025-07-24

相続が発生した際、多くの方が直面するのが「まず何をすればよいのか」「誰に相談するべきなのか」という問題です。遺産の内容や相続人の状況によって、必要となる手続きや関与する専門家が異なり、「司法書士?行政書士?弁護士?税理士?銀行?」といった疑問を抱くのは、ごく自然なことです。

相続手続きには、不動産の名義変更(相続登記)や預貯金の解約、遺産分割協議書の作成、相続税の申告など、多岐にわたる手続きが含まれます。また、相続人間での意見の対立や、相続放棄、遺言書の有無、認知症の相続人がいる場合など、法的な判断が求められる場面も少なくありません。

このように複雑な相続手続きにおいて、正しい知識と適切なサポートを受けることは、スムーズな相続の第一歩となります。本記事では、相続手続きの内容に応じて、どの専門家に相談すべきかをわかりやすく解説し、それぞれの専門家の特徴や役割の違い、相談すべきタイミングについて詳しくご紹介します。

1.弁護士に相談すべきケース

相続手続きの中で、「争いごとが生じている」または「法的な主張・反論が必要な場面」では、弁護士のサポートが必要不可欠です。弁護士は裁判上の代理権を有し、調停・審判・訴訟などの場で依頼者の権利を守ることができます。

1. 遺産分割協議がまとまらない場合

相続人同士の関係が悪化していたり、財産の配分に納得できない相続人がいると、遺産分割協議が難航します。このような場合は、弁護士が代理人として相手と交渉したり、家庭裁判所での調停・審判などへの対応が可能です。

たとえば:

  • 「長男がすべてを相続すると主張している」
  • 「誰かが勝手に財産を使い込んでいた」
  • 「遺産の評価額について意見が分かれている」

こういった場面では、法的知見を活かした調整が求められ、弁護士の力が非常に有効です。

2. 遺言の無効主張・遺留分侵害額請求

相続人の中には、遺言の内容に不満を抱くケースもあります。たとえば、遺言によって自分の取り分が大幅に減らされている場合、「遺留分侵害額請求」を主張することができます。

また、

  • 「遺言は書かれた当時、被相続人に判断能力がなかったのでは?」
  • 「誰かに書かされた可能性がある」

など、遺言の無効を主張するケースでは、裁判での立証が必要となるため、弁護士に依頼することが不可欠です。

3. 使い込みや不正行為が疑われるとき

預貯金の引き出しなど他の相続人による「使い込み」が疑われる場合、証拠収集や法的対応を進めるには弁護士のサポートが必要です。

  • 「被相続人の口座から、亡くなる直前に多額の引き出しがあった」
  • 「家を勝手に売却していた」

こうした問題は、親族間でも深刻な争いに発展する可能性が高く、当事者間での話し合いでは解決が困難です。第三者である弁護士が介入することで、冷静かつ法的に適正な解決を目指すことができます。

弁護士への相談は、相続人同士のトラブル・遺言の無効・遺留分請求・訴訟対応といった「対立を含む相続」において特に重要です。反対に、争いのない相続手続きにおいては、次章以降で紹介する他の専門家(司法書士・税理士・行政書士)の出番となります。

2.司法書士に相談すべきケース

司法書士は、相続手続きの中でも「登記」や「戸籍調査」、「法定相続情報一覧図の作成」、「遺産整理業務」など、書類作成・手続き代行の専門家です。相続人間に争いがない、比較的スムーズに進められるケースでは、司法書士への相談が最も適しています。

1. 相続登記(不動産の名義変更)をしたいとき

不動産を相続する際には、その不動産の名義を故人から相続人へ変更する「相続登記」が必要です。2024年4月からは相続登記が義務化されており、期限内に登記しなかった場合は過料が科される可能性があります。

司法書士は、以下のような場面で相続登記をサポートします:

  • 戸籍で収集して相続関係を確認し、相続関係説明図、遺産分割協議書を作成
  • 登記に必要な添付書類(評価証明書、住民票など)の収集代行
  • 相続登記の申請手続きの代行
  • 法定相続人が多い場合や数次相続など、複雑な相続にも対応

2. 法定相続情報一覧図を取得したいとき

複数の相続手続き(銀行、証券会社、年金など)を同時に進める場合、各所で戸籍一式を何度も提出しなければなりません。そこで便利なのが「法定相続情報一覧図」です。司法書士は、戸籍の収集から一覧図の作成、法務局への申出まで一括して代行できます。

  • 戸籍の調査・収集が面倒
  • 代襲相続や養子縁組など複雑な関係がある
  • 遺産の分配前にまず手続きを進めたい

こうしたとき、司法書士の専門知識が役立ちます。

3. 相続放棄の申述書を作成して家庭裁判所に提出したいとき

相続人が負債を背負うことを回避するために選択する「相続放棄」は、家庭裁判所への申立てが必要です。司法書士は、必要書類の収集と申述書の作成をサポートします。

  • 申立書の書き方がわからない
  • 戸籍が複雑で自分では揃えられない
  • 提出期限(原則3ヶ月)を過ぎそうで不安

このような方には、司法書士への早期相談が安心です。

4. 銀行口座や証券口座の解約・名義変更手続き

相続に伴う金融資産の承継業務(遺産整理業務)にも対応できます。高齢の相続人や忙しいご家族に代わって、以下のような業務を一括でサポートできます:

  • 銀行預金の相続手続き
  • 証券会社とのやりとり
  • 相続財産目録の作成

これにより、ご家族は安心して一任することができます。

5. 行方不明の相続人や認知症の相続人がいるケースの初期対応

相続人の中に認知症の方がいる、あるいは行方不明者がいる場合でも、司法書士は状況に応じて以下の手続きをサポートします。

  • 成年後見制度の活用に関するアドバイス
  • 不在者財産管理人の選任手続きの書類作成
  • 相続関係が複雑な場合の調整・助言

弁護士による訴訟まで発展する前の段階で、司法書士が初期対応を行うことで、スムーズに手続きを進めることが可能になります。

このように、司法書士は「争いがない相続手続き」において、幅広く実務を担うことができます。費用面でも比較的リーズナブルであり、相続登記や書類作成、調査業務に関しては最も身近で頼れる専門家です。

3.税理士に相談すべきケース

相続手続きにおいて「税金」に関する問題が発生する場面では、税理士の力が不可欠です。特に相続税の申告が必要なケースや、生前贈与・相続対策を行う際には、税務の専門家である税理士に相談することで、大きな損失を防ぐことができます。

1. 相続税の申告が必要なケース

相続税には基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり、それを超える遺産を相続する場合は、原則として被相続人の死亡から10か月以内に相続税の申告と納税を行わなければなりません。

税理士に相談すべき具体例:

  • 相続財産の評価額が基礎控除を上回る可能性がある
  • 現金以外の財産(不動産・有価証券)が多く、評価が難しい
  • 納税資金の準備が困難で物納・延納を検討している

税理士は、不動産の評価額の適正化や節税のための特例適用(小規模宅地の特例、配偶者控除など)を判断し、最も有利な形で申告を行います。

2. 生前贈与を活用した相続対策をしたいとき

将来の相続税負担を見越して生前贈与を行う際、税務上の知識が欠かせません。暦年贈与や相続時精算課税制度の選択など、制度によって贈与税や相続税に与える影響が大きく異なるため、税理士のアドバイスが重要です。

  • 毎年の贈与額の管理
  • 不動産や非上場株式の贈与に伴う評価
  • 2024年の税制改正(生前贈与加算期間の延長など)への対応

こうした生前対策を行うなら、相続に詳しい税理士と連携して、中長期的な視点でプランニングを進めるのが賢明です。

3. 相続人間で公平に分けたいが税負担が偏る場合

遺産を公平に分けたいと思っても、財産の中身によっては相続人ごとに税負担が大きく異なることがあります。

例えば、

  • 不動産を取得した相続人にだけ高額な相続税が発生
  • 金融資産はすぐに使えるが、土地や建物は納税資金の準備が難しい

こうした問題を避けるには、税理士の試算に基づいて相続財産の分割を設計する必要があります。

4. 二次相続まで考慮した節税対策をしたいとき

一次相続では配偶者の税額軽減が使えるため、税金がゼロまたは少額で済むケースも多くあります。しかし、配偶者が死亡した後に発生する二次相続では、配偶者控除が使えず、税負担が跳ね上がるケースがあります。

このため、一次相続と二次相続を通算して最も節税効果の高い分割方法を提案できるのが、経験豊富な税理士の役割です。

税理士は、財産評価・税額の試算・申告書の作成など、税務に関わるあらゆる業務を担う専門家です。相続税の有無に関わらず、財産の全体像を把握しておきたい場合や、将来の備えとして早めに対策を取りたい方は、相続に強い税理士への相談が大変有効です。

当事務所では、相続に特化した信頼できる税理士と提携しており、ご希望に応じてご紹介が可能です。

4.行政書士に相談すべきケース

行政書士は、官公署に提出する書類の作成や、権利義務・事実証明に関する文書の作成を専門とする国家資格者です。相続においても、一定の範囲で相談・手続きを行うことが可能です。

1. 遺産分割協議書や遺言書、相続関係説明図などの書類作成を専門家に依頼したい場合

相続の内容が複雑でなく、書類の作成や収集だけを依頼したい、あるいはその作成の補助を受けたいときは行政書士が適しています

2. 預貯金・有価証券・自動車などの名義変更や金融機関手続きをまとめて任せたい場合

遺産に不動産が含まれず、主に金融資産や動産が中心の場合、名義変更や解約などの事務手続きも行政書士が代行可能です(不動産登記は司法書士のみが担当)

3. 被相続人が許認可の必要な事業などを営んでおり、相続に伴う行政手続きや届出、変更申請が必要な場合

農地、酒販、建設業など、事業・許認可に関する行政への届出や手続きが必要な時は、行政書士が制度上の手続き全般をサポートできます

一方で、行政書士は法律トラブルの調整や代理行為、登記申請、税務申告などには対応できません。そのため、相続人間で意見が対立していたり、相続財産に不動産や多額の金融資産が含まれる場合などは、司法書士や税理士などと連携しながら進める必要があります。

5.銀行に相談する場合の特徴と注意点

相続に関連して銀行を訪れるのは、被相続人の預貯金がある場合や、銀行が提供する相続関連サービスを利用したいと考えるときです。銀行は「相続手続きの窓口」として機能することがありますが、他の士業とは異なり、法的手続きの代理や調整を行うことはできません。そのため、銀行に相談する場合には、その役割や限界を正しく理解しておく必要があります。

1. 相続手続きサポートサービス

一部の銀行では、相続手続きをサポートする有料の「相続代行サービス」「相続手続きパック」を提供しています。これらは提携する司法書士・税理士・行政書士などの士業に手続きを外注し、ワンストップで手続きを完了させるサービスです。

【メリット】

  • 一括で対応してくれるため、時間や手間を軽減できる
  • 信頼感のある銀行経由で依頼できる

【デメリット】

  • 費用が割高になる傾向がある(仲介手数料が含まれる)
  • 提携先の専門家を選べず、個別対応の柔軟性に欠ける
  • 必ずしも相続に強い専門家が対応するとは限らない

2. 銀行は「窓口」であり「専門家」ではない

銀行員は、法律や税務の専門家ではありません。そのため、遺産分割のアドバイスを求めたり、相続放棄・登記・税務申告といった判断を仰いでも、対応はできず、専門家への相談を勧められるだけとなる場合が大半です。

また、銀行によっては、提出された書類の審査に非常に厳しく、少しの不備でも受理されないことがあるため、事前に専門家にチェックしてもらうことが望ましいです。

3. 銀行の遺言信託サービスについて

多くの大手銀行では、「遺言信託サービス」という名称で、遺言書の作成や保管、そして死後の遺言執行までを含むサービスを提供しています。これは、公正証書遺言の作成を銀行が提携する司法書士や弁護士とともにサポートし、遺言内容の実現までを一貫して担うというものです。

【主なサービス内容】

  • 公正証書遺言作成の支援
  • 遺言書の銀行金庫での保管
  • 被相続人の死亡後、遺言内容に従って相続手続きを執行(遺言執行者として就任)

【利用メリット】

  • 銀行が関与することで安心感がある
  • 専門家との連携が取れているため、一定の信頼性がある
  • 書類の保管場所が明確になる

【注意点】

  • 費用が非常に高額になる傾向がある
    • 初期費用(遺言書作成サポート料):10~30万円前後
    • 保管料:毎年数千~1万円程度
    • 遺言執行報酬:遺産総額の1.5~3%前後(例:5,000万円の遺産なら75万円〜150万円)

遺言信託サービスの費用体系は銀行ごとに異なりますが、「安心と手間の軽減」の代わりに、高額な手数料を支払うことになる点は十分に検討すべきポイントです。

また、実際の遺言執行時には別途、提携する専門家への報酬も加算されることが多く、最終的なコストが予想以上にかさむという声も少なくありません。

このように、銀行の提供するサービスは便利ではあるものの、「費用対効果」や「柔軟性の低さ」には注意が必要です。必要に応じて、地元の司法書士や税理士に直接相談した方が、より柔軟かつ低コストで対応できる場合も多いことを念頭に置いておくとよいでしょう。

6.相続手続きの相談先を選ぶ際のポイントと注意点

相続手続きは、財産の種類や相続人の状況、相続税の有無などによって複雑さが大きく異なります。そのため、「誰に相談するのが適切か」を正しく判断することが、円滑かつ的確な相続手続きへの第一歩になります。

ここでは、相続手続きの相談先を選ぶ際に押さえておくべきポイントと、よくある失敗例について解説します。

1. 依頼先を誤るとどうなるか?

相続手続きは専門性が高く、対応できる業務範囲が各士業(司法書士・税理士・行政書士・弁護士)や機関(銀行など)によって異なります。そのため、適切でない専門家に依頼すると、以下のような問題が起こることがあります。

  • 業務範囲外のことは対応できず、別の専門家を再度探す必要がある
  • 書類の再提出や重複作業で時間・手間・費用がかさむ
  • 必要以上の高額な費用を請求される(例:銀行の遺言執行手数料など)

このようなトラブルを防ぐためにも、事前に相続手続きの全体像を把握し、自分のケースに合った専門家を選ぶことが重要です。

2. 相続の全体像を把握することが出発点

相談先を選ぶ前に、まずは以下のような情報を整理しておきましょう。

  • 遺産の主な内容(不動産・預貯金・株式・負債など)
  • 相続人の構成(配偶者・子ども・兄弟姉妹など)
  • 遺言書の有無(自筆・公正証書など)
  • 納税の可能性(相続税の発生が見込まれるか)
  • 家族間の関係性(トラブルの有無、疎遠な相続人の存在など)

こうした情報をもとに、どの専門家が最適かを判断することができます。

3. ワンストップ対応できる窓口が理想

最近では、相続に強い司法書士や税理士の中には、複数の専門家と連携してワンストップで対応する事務所も増えています。たとえば、以下のような対応が可能なケースがあります。

  • 不動産の相続登記 → 司法書士
  • 預貯金の解約 → 司法書士または行政書士
  • 相続税申告 → 税理士
  • 家族間の争い対応 → 弁護士
  • 不動産売却・換価 → 宅建士や提携不動産会社

つまり、信頼できる窓口をひとつ設けることで、複数の専門家と無駄なく連携できるという点が、大きなメリットとなります。

4. 相談先を選ぶ際のチェックポイント

以下のような点を確認すると、相談先選びの失敗を防ぐことができます。

チェックポイント確認内容
① 得意分野相続登記、相続税、遺言など、扱っている業務の実績があるか
② 費用の明確性相談料、報酬などが明朗かどうか
③ ワンストップ対応他士業との連携体制が整っているか
④ 地域密着性地元の事情や役所、法務局の運用に詳しいか
⑤ 説明のわかりやすさ専門用語を避け、丁寧に説明してくれるか

たとえば、初回相談時に「相続登記と税務申告のどちらも必要になる可能性があるのですが…」という質問をした際、必要な手続きを整理して説明し、他の専門家と連携する姿勢を見せるかどうかがひとつの判断材料になります。

5. よくある誤解と注意点

相続手続きに関するよくある誤解として、次のようなものがあります。

  • 「とりあえず銀行に相談すればすべてやってくれる」
    → 実際には、銀行は手続きを代行せず、遺言信託など高額なサービスを勧めることもあります
  • 「弁護士に頼まないと法的に無効になる」
    → 相続登記や銀行手続きは司法書士や行政書士でも対応可能です。争いがなければ弁護士に依頼しなくても良いケースも。
  • 「市役所に相談すれば全部教えてくれる」
    → 市役所は基本的に制度の概要説明のみで、実務的な支援や申請書作成は行いません

7.相続手続きの相談は信頼できる専門家へ

相続手続きは、故人の意思や遺産の内容、相続人の状況によって多様な対応が求められます。特に、手続きが煩雑になりがちな不動産の名義変更や銀行口座の解約、相続税の申告、さらには遺言書の取り扱いや相続放棄といった場面では、それぞれ専門的な判断が必要になります。

誰に相談するかによって、手続きの正確さやスムーズさ、さらには費用や精神的負担にも大きな差が生じます。

  • 書類の不備でやり直しになる
  • 間違った判断で余計な税金を支払うことになる
  • 家族間のトラブルを招く可能性がある

こうしたリスクを避けるためには、相続手続きに精通した信頼できる専門家に早めに相談することが何よりも重要です。

司法書士は、相続登記や預貯金の手続き、遺言書の検認サポート、相続放棄の申述など、実務に直結する手続きを幅広くサポートできる立場にあります。また、必要に応じて弁護士・税理士・行政書士と連携し、ワンストップで対応する体制を整えている事務所も少なくありません。

「何から手をつけてよいかわからない」「誰に相談すべきかわからない」という方こそ、まずは一度、相続に強い司法書士にご相談されることをおすすめします。

当事務所では、横浜市青葉区を拠点に、緑区・都筑区・町田市など近隣地域の方々から多くのご相談をいただいております。状況を丁寧にお伺いし、必要な手続きや優先順位をわかりやすくご案内いたします。

相続手続きでお困りの方は、お気軽にご相談ください。初回相談も承っております。

法定相続情報一覧図の概要とその活用方法

2025-07-19

相続が発生すると、不動産の名義変更、銀行口座の解約、保険金の請求、証券の名義変更など、さまざまな相続手続きが必要になります。こうした手続きには、多くの場合、戸籍謄本や住民票、除籍謄本などの書類をそろえ、各機関に提出する必要があります。しかし、この一連の書類集めや手続きの負担は、遺族にとって非常に大きなものです。

特に、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍をすべて集め、相続人の範囲を証明するための「戸籍一式」を何部も用意しなければならない点は、多くの相続人にとって大きな壁となっています。これにより、相続手続きが遅れたり、途中で手続きを断念したりするケースも少なくありません。

このような煩雑な相続手続きを簡素化するために、近年注目されているのが「法定相続情報一覧図」です。法定相続情報一覧図は、法務局が公的に発行する「相続関係をまとめた一覧表」であり、これを利用することで、相続手続きの効率化が大きく進みます。

実際に、法定相続情報一覧図を取得しておけば、金融機関や証券会社、市区町村、税務署などの各機関で、原本戸籍をその都度提出せずに手続きが進められるようになります。これは、相続手続きを行う上での大きな時間短縮・負担軽減につながります。この記事では、「法定相続情報一覧図」についてできる限りわかりやすく解説していきます。

1.法定相続情報一覧図とは何か?

法定相続情報一覧図とは、被相続人(亡くなった方)の法定相続人が誰であるかを、戸籍に基づいて一覧にまとめた書類で、法務局が正式に認証するものです。簡単に言えば、「誰が相続人であるか」を公的に証明する図表のようなものです。

制度の概要

この制度は、法務省が平成29年(2017年)5月29日からスタートさせたもので、相続登記や金融機関での手続きの簡略化を目的としています。被相続人の出生から死亡までの戸籍、除籍、改製原戸籍等をすべて収集し、それをもとに作成した相続関係を一覧にし、法務局に申出をすることで、「法定相続情報一覧図の写し」が交付されます。

この写しは、登記簿や戸籍と同じく公的な証明書類として扱われ、以下のような手続きに活用できます。

  • 不動産の相続登記(名義変更)
  • 銀行口座や証券口座の解約・名義変更
  • 生命保険金の請求
  • 税務署や年金事務所への相続関連申告

証明内容

一覧図には、以下のような内容が記載されます:

  • 被相続人の氏名・生年月日・死亡日・本籍
  • 相続人の氏名・生年月日・被相続人との関係

図の形式で記載されるため、第三者にも非常に分かりやすく、金融機関等の担当者が相続関係をすぐに把握できるというメリットがあります。

法定相続情報一覧図と戸籍謄本の違い

これまでの相続手続きでは、各機関ごとに戸籍一式を提出する必要があり、コピーが使えない場面も多いため、何部も原本を取り寄せなければなりませんでした。加えて、戸籍の形式もバラバラで、見づらいことも多かったのが実情です。

一方で、法定相続情報一覧図は、戸籍に基づく内容を法務局が確認し、認証したうえで作成される「公的な相続関係図」ですので、これ1通をもってさまざまな機関での手続きを進めることができるのです。

なお、一覧図は申出人(相続人の1人)からの申し出により、無料で取得することができます。また、写しは複数部取得することができるため、各機関に同時並行で手続きを進める場合にも非常に便利です。

2.法定相続情報一覧図を取得するために必要な書類

法定相続情報一覧図を取得するには、法務局への「法定相続情報証明制度の申出」を行う必要があります。申出にはいくつかの書類を揃える必要がありますが、それらはすべて、被相続人と相続人の関係を明確に証明するためのものです。

ここでは、必要書類の一覧と、それぞれの取得方法や注意点について詳しくご紹介します。

1. 申出書(指定様式あり)

「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」は、法務局所定の様式に従って作成する必要があります。これは申出人が誰であるか、どのような内容の一覧図を保管・交付してもらいたいかを明記するものです。

様式は法務局のホームページからダウンロードできますし、司法書士に依頼した場合は代理で作成してもらえます。

2. 法定相続情報一覧図

相続人関係を示す図で、被相続人を起点とし、配偶者・子ども・兄弟姉妹など、相続人の関係がわかるように記載されます。

※注意点
この一覧図そのものには法的な効力はありませんが、法務局が内容を戸籍で確認し、「認証」されたものが正式な「法定相続情報一覧図の写し」となります。

図には以下の内容が必要です:

  • 被相続人の氏名・生年月日・死亡日・本籍
  • 各相続人の氏名・生年月日・続柄

3. 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのすべて)

被相続人の生涯にわたる戸籍をすべて取得する必要があります。これは、出生から婚姻・転籍・改製などを経た戸籍が複数に分かれている場合が多いためです。

  • 除籍謄本
  • 改製原戸籍
  • 戸籍謄本(全部事項証明書)

これらを組み合わせて、出生から死亡までの連続した戸籍の流れを証明する必要があります。

4. 相続人全員の戸籍謄本

法定相続人が誰であるかを確認するために、すべての相続人について現在の戸籍(戸籍謄本)を取得する必要があります。

  • 配偶者、子ども
  • 代襲相続が発生している場合は、亡くなった相続人の出生~死亡までの戸籍、および代襲者の現在の戸籍を追加で取得する必要があります。
  • 相続人が兄弟姉妹になる場合は、親や祖父母の戸籍も必要になることがあります。

5. 被相続人の住民票の除票

被相続人がどこに住んでいたかを証明するための書類で、通常は市区町村役場で取得可能です。

6. 相続人の住民票(または住所がわかる書類)

申出人の現住所を確認するための住民票、または免許証のコピーなどが必要になります。

また、相続人の住所を法定相続情報一覧図に記載する場合には、記載するすべての相続人について住民票を添付する必要があります。

こうした書類の収集は、ご自身でも可能ですが、複雑な戸籍の読み解きや、相続人の特定、記載ミスの防止などの点から、司法書士に依頼することで安心かつスムーズに進められます。

3.申請方法と手続きの流れ

法定相続情報一覧図を取得するには、法務局に対して「法定相続情報証明制度の申出」を行う必要があります。この手続きは、あくまで無料で利用できる制度ですが、書類の準備や作成には一定の手間と正確性が求められます。

ここでは、申出から一覧図を受け取るまでの流れを、ステップごとに詳しく解説します。

ステップ1:必要書類の収集

まずは上記でご紹介した書類をすべて準備します。特に注意すべき点は以下の通りです:

  • 被相続人の戸籍は「出生から死亡まで」が必須
  • 相続人全員の戸籍(結婚などで別戸籍になっている場合も含む)
  • 被相続人の住民票の除票も必要

必要書類の準備だけで1ヶ月ほどかかることもあるため、早めの対応が肝心です。

ステップ2:法定相続情報一覧図の作成

戸籍から読み取った相続関係をもとに、法定相続情報一覧図(いわゆる家系図)を作成します。ここでは正確な関係性(配偶者・子・代襲相続人など)と、生年月日・続柄などの記載が求められます。

※図の記載内容にミスがあると法務局から再提出を求められるため要注意です。

ステップ3:申出書の作成

法務局の指定様式に従い、申出書を作成します。ここで記載する主な内容は:

  • 申出人の氏名・住所
  • 被相続人の氏名・本籍・死亡日
  • 提出する書類の一覧
  • 交付を希望する一覧図の部数

一覧図は原則として「写し(認証文付き)」で交付されます。必要に応じて複数部(例えば銀行・不動産・保険など用)を申請できます。

ステップ4:法務局への申出(窓口または郵送)

書類一式を準備できたら、法務局(被相続人の本籍地または最後の住所地などを管轄する登記所)へ提出します。提出方法は以下の2通りです。

  • 窓口提出:直接持参して提出。
  • 郵送提出:郵送の場合は返信用封筒・切手の同封が必要。

※管轄法務局が不明な場合は、専門家または法務局に問い合わせるとよいでしょう。

ステップ5:法務局による審査・保管・交付

法務局では、提出された戸籍類と一覧図を照合し、相続関係が正確に記載されているかを確認します。

  • 問題がなければ一覧図を「法定相続情報一覧図の写し」として交付
  • 問題があれば、訂正の連絡が入る(再提出が必要)

審査期間は通常1~2週間程度が目安です(混雑状況により異なります)。

ステップ6:交付された一覧図の利用

交付された一覧図は、銀行・証券会社・不動産登記・保険・税務署など、様々な相続関連手続きに利用できます。複数部用意しておけば、並行して複数の手続きを進めることが可能になり、相続事務が大幅に効率化されます。

4.実際に役立つ場面と活用事例

法定相続情報一覧図は、単なる「家系図」ではありません。相続人の関係と身分関係を法務局が証明した、極めて信頼性の高い公的資料であり、相続手続きの現場ではさまざまな場面で大きな効果を発揮します。

ここでは、実務上どのような場面で一覧図が役立つのか、具体的な事例とともに解説します。

1. 銀行・証券会社での相続手続きがスムーズに

銀行や証券会社で相続手続きを行う場合、従来は以下のような大量の書類を提出しなければなりませんでした。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍
  • 相続人全員の戸籍
  • 遺産分割協議書
  • 印鑑証明書
  • 各金融機関ごとの所定の相続書類

しかし、法定相続情報一覧図を提出することで、複数枚にわたる戸籍を提出する手間が省けるうえ、金融機関によっては「戸籍一式の原本還付」が不要になり、手続き時間の短縮や事務負担の軽減につながります。

2. 不動産の相続登記(名義変更)に活用

相続によって土地や建物を取得した場合は、相続登記(名義変更)が必要です。この手続きでも、法定相続情報一覧図が使えます。

通常の登記申請では、添付書類として戸籍謄本一式が必要ですが、一覧図を使えばそれらの代用となり、法務局でもスムーズに受理されます。

登記官にとっても読みやすく、ミスの防止にもつながり、複雑な相続関係を簡潔に説明できる一覧図の効力が際立ちます。

3. 税務署への相続税申告にも有効

相続税の申告では、法定相続人の構成や続柄を証明する資料として戸籍謄本一式の提出が求められますが、一覧図を提出すれば代替資料として利用可能です。

また、税理士に申告業務を依頼する際にも、法定相続情報一覧図を渡すことで、相続関係の説明が一目で伝わり、スムーズな手続き進行に寄与します。

4. 遺産分割協議前の相続人の確定に活用

被相続人に複数の婚姻歴や子どもがいた場合など、相続人が誰なのか分かりにくいケースもあります。こうした場合、一覧図を先に取得しておくことで、相続人全員の構成を確認できる資料として活用できます。

特に、将来的に相続人の誰かが認知症を患ってしまったり、所在不明になる可能性がある場合、早めの一覧図作成は「トラブル予防の第一歩」にもなります。

5. 複数の手続きを同時進行できる

遺産分割が済んでいない状態でも、法定相続情報一覧図は取得可能です。このため、たとえば不動産の名義変更手続きを進めつつ、銀行手続きや生命保険の請求を並行して進めるなど、相続事務の同時進行が可能になります

煩雑で長期化しがちな相続手続きにおいて、手間と時間を減らすことができるのは、一覧図を使う最大の利点のひとつです。

6. 家族への説明資料としても有効

「相続関係が複雑で、家族に説明しづらい」というケースは少なくありません。法定相続情報一覧図があれば、第三者にもわかりやすく、誤解を避けた説明が可能です。

これにより、家族間の不要な誤解や感情的な対立を避けることにもつながります。

5.よくある質問とその回答(Q&A)

法定相続情報一覧図は便利な制度ですが、初めて耳にする方や、制度を利用したことがない方にとっては、不明点や不安も多いかもしれません。ここでは、実際によく寄せられる質問とその回答をまとめました。

Q1. 法定相続情報一覧図はどこで申請できますか?

A1. ①亡くなった方の本籍地、②亡くなった方の最後の住所地、③申出人の住所地、④亡くなった方名義の不動産の所在地、のいずれかを管轄する法務局で申請することができます。郵送での申請も可能ですが、提出書類に不備があると差し戻されるため、心配な方は司法書士などの専門家に相談すると安心です。

Q2. 一覧図は誰でも取得できますか?

A2. 申請できるのは、被相続人の法定相続人、またはその代理人(司法書士・弁護士など)に限られます。他人が勝手に申請することはできません。

Q3. 法定相続情報一覧図は何枚までもらえますか?

A3. 一回の申出につき複数枚の交付が可能です。たとえば、銀行・法務局・税務署など、それぞれに提出する場合、用途に応じた枚数を事前に申請しておくとよいでしょう。追加で交付を希望する場合も、一覧図の写しが保管されている間であれば、再交付申請が可能です。

Q4. 遺産分割協議が済んでいない段階でも申請できますか?

A4. はい、できます。法定相続情報一覧図は、あくまで法定相続分に基づいた相続関係を証明する資料であるため、遺産分割協議の有無にかかわらず取得可能です。むしろ、相続人の構成確認のために先に一覧図を取得しておくのが有効な場合もあります。

Q5. 遺言書がある場合でも一覧図は使えますか?

A5. 遺言書があっても、遺言執行者が手続きを進めるための資料として一覧図を使うことは可能です。ただし、相続人以外へ遺贈する内容の遺言などの場合は、一覧図がそのまま相続関係の証明には使えないこともあるため、専門家の確認をおすすめします。

Q6. 一覧図を使えば、すべての相続手続きが簡単になりますか?

A6. 一覧図は非常に有用な資料ですが、遺産分割協議書や印鑑証明などの提出は依然として必要なケースが多いです。また、提出先によって対応が異なる場合もあるため、事前に確認することが重要です。

Q7. 法定相続情報一覧図を使うときの注意点は?

A7. 法定相続情報一覧図は非常に便利な制度ですが、以下のような注意点があります。

① 数次相続が発生している場合

一次相続(A→B)手続中に相続人Bが死亡し、その遺産分割前にさらに次(Cが相続)という複数の相続が連鎖したケースを数次相続といいます。

法定相続情報一覧図は被相続人ごとに1通作成が原則で、数次相続が発生した場合は、各被相続人ごとに個別の一覧図が必要となるため、一枚の一覧図でまとめて表現することはできません

一次相続・二次相続の全体像を整理したうえで、それぞれの相続時点ごとの法定相続人を確定し、個別の一覧図を作成します。

数次相続の場合、各相続の申出人情報や代襲・再代襲関係にも注意が必要です

② 相続放棄した相続人がいる場合

相続放棄は基本的に戸籍に記載されず、法定相続情報一覧図にも反映されません。よって、放棄した相続人も、法定相続人として一覧図に記載されます

そのため、実際の相続手続きでは法定相続情報一覧図に加えて、「相続放棄申述受理証明書」等で別途放棄の事実を証明する必要があります

第1順位相続人全員が相続放棄した場合、実際には第2、第3順位(例えば親や兄弟姉妹)が相続人となるが、制度上はそのまま一覧図に記載されないケースもあり、手続きの現場で混乱が生じやすい点に留意が必要です

③ 推定相続人が廃除されている場合

廃除された相続人(例:推定相続人が被相続人との関係で廃除裁判により相続権を失った場合)は、戸籍に廃除の旨が記載されるため、法定相続情報一覧図には記載されません

廃除が確定する前(裁判手続き中など)は、一覧図上では通常どおり相続人として記載されます。決定後は、あらためて廃除後の内容で再申出が必要です

廃除された相続人に子がいる場合、その子は代襲相続人として記載されますが、「被代襲者」としての表記は注意が必要です。記載内容に誤りがあると訂正手続きとなります

④ 実際の遺産分割とは異なる内容になることもある

法定相続情報一覧図は「法定相続分に基づく相続関係」を記載するものであり、実際の遺産分割協議の内容や遺言の内容は反映されません

そのため、一覧図に記載された内容だけで、金融機関や不動産登記などの各種手続きが完了するとは限らず、別途、遺産分割協議書や遺言書の写し等が必要になるケースが多くあります。

6.当事務所のサポート体制について

法定相続情報一覧図は、手続きの簡略化や一括対応を可能にする非常に便利な制度です。しかし、申請には戸籍の収集や相続関係の正確な把握が不可欠であり、誤った内容で申請してしまうと、後々の登記や預金解約手続きに支障をきたすリスクもあります。

当事務所では、横浜市青葉区を中心に、緑区・都筑区・町田市など近隣エリアの方から多数のご相談をいただいており、法定相続情報一覧図の申出や相続登記・預金解約・遺産整理まで、トータルでの相続手続き支援を行っております。

初回相談は無料で、平日夜間・土日祝のご相談にも柔軟に対応いたします。

相続手続きを放置して後悔したケース

2025-07-17

相続手続きは、大切な方を亡くされた後に直面する、避けては通れない重要なプロセスです。しかし、その複雑さや精神的な負担から、つい手続きを「後回し」にしてしまう方も少なくありません。その結果、様々な問題が発生し、後々「あの時、もっと早くやっておけばよかった」と後悔するケースも存在します。

今回は、相続手続きを放置することで生じる可能性のある落とし穴と、それらを未然に防ぐための対処法について詳しく解説します。

1.相続手続きを放置すると何が起きるのか?

相続は、故人の財産だけでなく、負債も含めて次の世代に引き継ぐ大切なプロセスです。この手続きを適切に進めないと、以下のような金銭的、法的、そして精神的な問題が発生し、かえって大きな負担となることがあります。特に、相続財産や相続人の確定、遺産分割、相続税の申告など、多岐にわたる手続きにはそれぞれ重要な意味があり、無視できない期限も存在します。

後悔につながる具体的なケース

相続手続きの放置が原因で起こりがちな具体的な後悔のケースを見ていきましょう。

金銭的な負担とトラブル

手続きの遅れは、予期せぬ金銭的な損失や負担を招くことがあります。

故人の預貯金が凍結されるリスク

金融機関は預金者の死亡を知ると、その口座を凍結します。これにより、葬儀費用など故人の死後の急な出費が必要な場合でも、原則として自由に預金を引き出せなくなります。遺産分割協議が成立していない状況で、一部の相続人が他の相続人の了解なしに預金を引き出した場合、刑事責任に問われる可能性は低いとされていますが、後に不正な引き出しと疑われ、返還請求や損害賠償請求といった民事トラブルに発展する可能性があり、注意が必要です。また、使途を明確に説明できない場合や、引き出しの事実を隠していた場合も、他の相続人からの不信感を生み、トラブルが拡大する原因となり得ます。

多額の税金負担

相続税の申告には原則として「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」という厳格な期限があります。相続手続きを放置し、期限内に申告を行わなかった場合、延滞税や加算税といったペナルティが発生する可能性があります。

また、期限内に適切な申告をしなかったことにより、本来適用できたはずの各種特例(例:小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減など)を使えず、結果として多額の相続税を負担することになるケースも少なくありません。税務署は「知らなかった」「忙しかった」といった事情では原則として猶予を認めてくれません。

相続税の納税資金が不足するおそれ

相続税の納税は基本的に「現金一括払い」が原則です。相続手続きを放置しているうちに、預貯金口座が凍結されて引き出せず、現金が用意できないという状況に陥ることもあります。相続税の「物納制度(不動産等での納税)」を利用するためにも、期限内に適切な手続きを進める必要があり、放置は命取りになりかねません。

手続きの煩雑化と法的な問題

手続きを放置すると、時間の経過とともにさらに複雑化し、法的な問題に直面することもあります。

不動産の名義変更(相続登記)の義務化

2024年4月1日からは、不動産の相続登記が義務化されました。これを怠ると、過料が科される可能性があるだけでなく、将来的に不動産の売却や担保設定ができなくなるなど、活用が著しく制限されることになります。長期間放置された不動産は、相続人がさらに増え、名義変更が非常に困難になるケースも少なくありません。

相続人の確定の困難化

相続人の調査には、故人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取り寄せる必要があります。時間が経つと、戸籍の収集自体が複雑になり、相続人が増えることで全員の同意を得ることが難しくなります。

海外在住の相続人がいる場合の課題

相続人の中に海外に居住している方がいる場合、遺産分割協議には相続人全員の参加と同意が大前提となります。しかし、時差や距離の問題で話し合いの機会を設けるのが困難となることがあります。また、海外在住者には日本の印鑑証明書や住民票がないため、代わりに現地の日本領事館などで「署名証明書(サイン証明)」や「在留証明書」を取得する必要があります。これらの書類の手配にも時間と手間がかかり、手続きが滞る原因となります。日本国籍を有していない相続人がいる場合は、さらに手続きが複雑になることもあります。

親族間の争いと精神的負担

相続手続きの遅延によって、親族間の争いの火種となることは最も避けたい事態です。

遺産分割協議の難航

相続人全員が合意しなければ遺産分割協議は成立せず、一人でも参加しない、または同意しない相続人がいれば手続きを進めることができません。話し合いが長引くと、お互いへの不満や不信感が募り、「争続」と呼ばれる深刻な家族間の争いへと発展するケースは珍しくありません。特に不動産など分割しにくい財産がある場合、争いの原因になりやすいでしょう。

相続放棄の機会喪失

被相続人に借金などの負債があった場合、相続放棄を選択することでその支払いを免れることができますが、原則として相続開始を知った日から3ヶ月以内という厳格な期限があります。この期間内に財産調査や手続きを行わないと、意図せず借金も相続してしまい、後で後悔することになります。一部の相続人が故人の預金を引き出すことで、法定単純承認とみなされ相続放棄ができなくなる可能性もあります。

2.なぜ相続手続きは放置されがちなのか?

多くの方が相続手続きを放置してしまう背景には、以下のような理由が挙げられます。

手続きの複雑さや専門知識の不足

相続は多岐にわたる法律や税金の知識が必要とされ、一般の方には非常に難解に感じられます。

忙しさや時間的な制約

仕事や育児などで忙しく、煩雑な手続きに時間を割くことが難しいケースが多いです。

精神的な負担

大切な人を亡くしたばかりで、精神的に手続きを進める余裕がないと感じることもあります。

どこから手をつけてよいかわからない

3.後悔しないための早期の行動を

何から始めるべきか、誰に相談すべきか分からず、行動に移せない方も少なくありません。

相続手続きは、放置してしまうことで金銭的な損失や家族間のトラブル、複雑な法的リスクを招く恐れがあります。「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、早めの対応が何よりも大切です。高野司法書士事務所では、相続手続き全般にわたり丁寧かつ迅速にサポートいたします。東急田園都市線・青葉台駅から徒歩6分とアクセスも良好です。初回相談は無料ですので、不安や疑問があればお気軽にご相談ください。大切なご家族の想いを、円満なかたちで未来へつなぐお手伝いをいたします。

相続人が海外在住の場合の相続手続きと注意点

2025-07-16

近年、仕事や結婚、留学などで海外に居住する日本人が増加しており、それに伴い、相続人の中に海外在住の方が含まれるケースも珍しくなくなってきました。相続が発生した際、海外に居住する相続人であっても、被相続人の財産を相続することは可能です。

しかし、日本に居住している相続人が行う手続きとは異なる点や、特有の注意点が存在します。本記事では、海外在住の相続人がいる場合の相続手続きの進め方、必要書類、そして特に留意すべき点について詳しく解説します。

1.相続手続きの基本的な流れ

被相続人が亡くなり相続が開始された際、遺言書が存在しない場合、被相続人の遺産を相続する権利を持つすべての相続人が集まり、遺産の分割方法について話し合う「遺産分割協議」を行う必要があります。この協議は、相続人全員の参加と内容への同意が大前提であり、たとえ一人でも参加しない相続人がいた場合、その協議は無効とされてしまうため注意が必要です。

遺産分割協議が無事にまとまったら、後々のトラブルを防ぐために、遺産の分割方法を明記した「遺産分割協議書」という書面を作成し、相続人全員が署名し実印を押印するのが一般的です。

2.海外在住の相続人における遺産分割時の必要書類と取得方法

相続人の中に海外居住者がいる場合でも、相続手続きの基本的な流れに大きな違いはありませんが、日本に住所登録をしておらず海外に居住している相続人には、実印と印鑑証明書がないという点が大きな相違点となります。そのため、これらの書類に代わる証明書を準備する必要があります。

署名証明書(サイン証明書)

日本の印鑑証明書に代わるものとして、本人の署名および拇印が確かに領事の面前でなされたことを証明する「署名証明書」を、現地の日本大使館や領事館などの在外公館で発行してもらう必要があります。多くの場合、遺産分割協議書を直接在外公館に持参し、領事の目の前で署名することで、その署名が本人のものであると証明してもらいます。一時的に日本に帰国している場合は、日本の公証役場で同様のサイン証明書を取得することも可能です。このサイン証明は、日本における印鑑証明書と同様の公的な証明書類として扱われます。署名証明書には2種類あるため、事前に金融機関や法務局など、提出先でどちらの形式が必要か確認しておくと良いでしょう。また、遺産分割協議書以外にも署名押印が必要な書類がある場合、別途署名証明書が必要になる可能性もあります。

在留証明書

遺産分割協議の結果、不動産を相続する場合には住民票が必要になりますが、海外在住者には住民票が発行されない国が大半です。そのため、住民票に代わる「在留証明書」の発行が必要となります。在留証明書は、署名証明書と同様に現地の在外公館で発行されます。発行には、日本国籍を有していること、現地に既に3か月以上滞在し住所が公文書などで明らかになっていること、そして発行手数料の支払いが必要です。パスポートに加え、賃貸契約書や公共料金の請求書など、滞在期間と居住地がわかる書類を持参する必要があります。不動産の相続登記手続きを行う際には住所を証明する書面が必要となるため、日本に一時帰国する前に、海外の居住地における在外公館で「在留証明書」を予め取得しておくことが望ましいとされています.

相続証明書(海外の国籍を有する場合)

相続人の中に、日本の国籍を放棄し、外国籍を取得した方がいる場合、日本の戸籍謄本を取得することができません。この場合、出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書など、その国の公的な証明書が日本の戸籍謄本の代わりとして「相続証明書」に該当することがあります。被相続人が日本国籍であれば、たとえ相続人が外国籍であっても日本の法律(民法)に基づいて相続手続きが行われます。

3.海外在住者の遺産分割・相続手続きにおける注意点

相続人の中に海外在住の方がいる場合、遺産分割や相続手続きを進める上でいくつかの注意点があります。

書類の準備とやりとりに時間がかかる

海外在住者との相続手続きでは、書類のやり取りが郵送を中心に行われるため、国内相続人同士の手続きよりも時間がかかる傾向にあります。遺産分割協議書の署名・証明書の取得・送付、場合によっては追加書類の取り寄せなど、1往復に1〜2週間以上かかることも珍しくありません。
また、書類の不備や翻訳の問題があれば、再送や補足説明が求められることもあります。速達や国際宅配便を利用しても、現地の郵便事情や通関手続きの影響で遅延するリスクがあるため、早めの準備と余裕のあるスケジュール設定が重要です。
特に不動産の相続登記や金融機関の手続きなどでは、書類の提出期限が設けられることがあるため、司法書士など専門家に相談しながら確実に進めることが望まれます。

翻訳や認証が必要なケースがある

海外で発行された書類(例:サイン証明、公証書、戸籍に準ずる書類など)を日本の法務局や金融機関に提出する場合、原則として日本語訳を添付する必要があります。この翻訳は、一般的には本人または第三者(司法書士・翻訳会社など)が行い、内容の正確性を保証するため署名を添えるのが通常です。
さらに、現地の公証制度による文書を使用する場合は、アポスティーユ認証または日本領事館による領事認証が必要になるケースも多く、事前の確認が欠かせません。国によってはアポスティーユ制度に加盟しておらず、手続きが煩雑になることもあります。
翻訳や認証が不十分な場合、手続きが差し戻されたり、受理されなかったりする恐れがあるため、手続きに不慣れな方が独力で進めることはリスクが大きいと言えるでしょう。専門家のチェックを受けながら進めることで、スムーズかつ確実な対応が可能になります。

日本の相続税申告が必要となる

日本の被相続人から遺産を受け取った場合、海外に在住している相続人であっても日本の相続税が課税され、税務申告が必要となります。原則として、被相続人が保有していた財産は、日本国内の財産だけでなく、海外の財産も課税対象となります。ただし、被相続人と相続人の双方が10年以上海外に在住している場合、被相続人の日本国内の財産のみが課税対象となり、海外の財産は対象外となります。

4.専門家への相談の勧め

相続人に海外在住者が含まれている場合、相続手続きは国内のケースと比べて煩雑になりやすく、書類の準備や各種手続きに時間がかかることも少なくありません。法的な要件の確認や相続人同士の調整には、専門的な知識と経験が必要です。

こうした状況でも、相続に詳しい専門家に相談することで、必要な手続きを的確かつ円滑に進めることができます。当事務所では、ご相談者様のご事情を丁寧に伺い、最適な方法をご提案するとともに、必要に応じて税理士や弁護士など他の専門家と連携しながら、安心して相続手続きを進められるよう総合的にサポートしています。

横浜市青葉区をはじめ、緑区・都筑区・町田市など周辺エリアで相続に関するお困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。初回相談も承っております。

相続人に行方不明者がいる場合の相続手続き

2025-07-15

相続手続きにおいて、法定相続人の中に「行方不明者」がいる場合、手続きは非常に複雑になります。なぜなら、相続は原則として相続人全員の同意に基づいて進めなければならず、一人でも協議に参加できない相続人がいると、遺産分割協議が成立しないためです。このような状況を放置しておくと、不動産の名義変更ができない、預貯金が引き出せないなど、日常生活に大きな支障をきたすこともあります。この記事では、行方不明者が相続人にいる場合の具体的な対応策について、わかりやすく解説します。

1. 行方不明の相続人がいる場合の基本的な対応方針

相続人の一人が行方不明である場合、まずその所在を調査することが基本です。住民票の履歴や戸籍の附票を確認し、過去の住所地をたどることで手がかりが得られる場合もあります。できる限りの調査を尽くしてもなお、行方不明の相続人の居場所が判明しない場合や、連絡が取れない状態が続く場合には、法的な手続きを検討する必要があります。

・不在者財産管理人の選任
・失踪宣告の申立て

2. 不在者財産管理人の選任による解決方法

行方不明者が現実には生存している可能性がある場合、家庭裁判所に「不在者財産管理人」の選任を申立てることが一般的です。これは民法第25条に基づき、不在者(所在が知れず、長期間音信不通の者)の財産を管理する者を裁判所が選任する制度です。この制度を利用すると、不在者財産管理人が遺産分割協議に参加し、代理人として同意することが可能となります。ただし、不在者財産管理人が財産を処分する場合(遺産分割などを含む)は、家庭裁判所の許可を得る必要があるため、申立ての際には具体的な分割案を用意しておくとスムーズです。

3. 失踪宣告による対応(特別失踪・普通失踪)

行方不明の期間が長期にわたり、生死さえ不明な場合には、「失踪宣告」を検討することになります。失踪宣告には「普通失踪」と「特別失踪」の2種類があります。

・普通失踪:音信不通の状態が7年以上続いた場合に申立て可能。
・特別失踪:戦争、震災、事故などの危難に遭遇してから1年以上経過した場合に申立て可能。

失踪宣告が認められると、その人は法律上「死亡した」とみなされるため、その方の相続手続きも行うことが可能になります。ただし、後に生存が判明した場合には法的な影響も大きく、慎重な判断が求められます。

失踪宣告がされた場合、いつ死亡したとみなされるか

  • 普通失踪の場合:家庭裁判所が失踪宣告をした日ではなく、音信不通の状態が始まってから7年が経過した日に死亡したとみなされます。
  • 特別失踪の場合:災害や事故などの危難が去った時に死亡したとみなされます。

たとえば、大規模な地震発生後に所在不明となり、1年以上経って特別失踪の宣告が出された場合、その地震が発生した日が「死亡日」として扱われます。これにより、相続開始時点が特定され、相続分の確定や遺産分割の基準にも大きく関係してきます。

4. 行方不明者の相続分を除いた遺産分割はできる?

行方不明の相続人を除いて他の相続人だけで遺産分割を進めることは原則として認められません。全員の同意が必要だからです。

しかし、不在者財産管理人を選任し、家庭裁判所の許可を得て協議を行えば、行方不明者に代わって協議に参加することができます。

また、失踪宣告が出れば、その人は死亡したと見なされるため、相続人としての地位を失い、代わりに次順位の相続人が登場することになります。

5. ケース別で見る実務対応のポイント

【ケース1】兄弟姉妹のうち一人が数十年音信不通である
⇒ まずは戸籍・附票をたどって所在調査。そのうえで不在者財産管理人の申立て。

【ケース2】相続開始時点ですでに失踪から7年以上が経過している
⇒ 家庭裁判所へ普通失踪の申立てを検討。失踪宣告が認められれば相続人の扱いは不要に。

【ケース3】相続人の一人が認知症・施設入所中など連絡不能
⇒ 行方不明とは異なり、後見人の選任が必要。成年後見制度の利用を検討。

6. 専門家への相談が確実な一歩

相続人に行方不明者がいるケースでは、通常の相続手続きが行えず、家庭裁判所を介した法的対応が不可欠になります。特に、不在者財産管理人の選任や失踪宣告の申立てなどは、専門的な書類作成と手続きが必要となるため、一般の方が独力で進めるのは難しいのが実情です。

お困りごとがあれば、横浜市青葉区の高野司法書士事務所までお気軽にご相談ください。司法書士がお客様の状況を丁寧に伺い、最適な解決策をご提案いたします。

相続財産の調査方法その2(不動産、生命保険、負債)

2025-07-13

前回ご説明した現金、預貯金、株式・有価証券以外の主要な相続財産である不動産、生命保険、そして負債について、具体的な調査方法とその重要性について詳しくご説明します。

1. 不動産

不動産の有無を調べるには、まず毎年送られてくる固定資産税課税明細書を確認するのが一般的な方法です。この明細書には、故人が所有する不動産の一覧が記載されており、不動産調査の手がかりとなります。もし課税明細書が見当たらない場合や、固定資産税が非課税の不動産、あるいは共有名義の不動産(代表者以外には明細書が送付されないことがあります)の有無を確認したい場合は、注意が必要です。

不動産の調査において非常に有用なのが名寄帳(なよせちょう)です。名寄帳とは、特定の市町村内に故人が所有するすべての不動産(土地や家屋)について、その所有状況が一覧で記載された帳簿のことです。固定資産税を課税するために市町村が作成しているもので、故人がその市町村内にどのような不動産を所有しているかを網羅的に確認する際に役立ちます。これも、不動産が所在する市区町村役場で取得可能です。

しかし、名寄帳も万能ではありません。その限界も理解しておく必要があります。

特定の市町村内の情報のみ:名寄帳はあくまで発行している市区町村内の不動産情報しか記載されていません。故人が他の市町村にも不動産を所有していた場合、その情報は名寄帳には載っていないため、それぞれの市町村で個別に名寄帳や固定資産評価証明書を取得する必要があります。

課税対象外の不動産:固定資産税が課税されないような、極めて小さな私道や里道などの不動産は、名寄帳に記載されない場合や、記載されていても評価額が0円となっていることがあります。

直近の取得不動産:固定資産税の課税情報は1月1日時点の状況に基づいて作成されるため、故人がその年の1月2日以降に新たに取得した不動産については、その年の名寄帳には反映されていません。

相続財産に不動産が含まれる場合、「権利証」(登記済権利証または登記識別情報通知)を確認することも重要です。これは不動産の所有者であることを示す重要書類であり、登記簿上の名義人が被相続人であるかどうかを確認する手がかりとなります。特に複数の不動産を所有していた可能性がある場合、権利証を確認することで、見落としていた不動産の存在に気づくことがあります。また、権利証には固定資産税が課税されない物件(私道や山林など)も含まれている可能性があり、課税明細書だけでは把握できない不動産を確認できる点も大きなメリットです。相続登記の際にも、権利証があると手続きがスムーズに進む場合があるため、保管状況を必ず確認しておきましょう。

これらの点を踏まえ、不動産の調査は、様々な角度から、複数の情報を総合的に見て行うことが重要です。

2. 生命保険

生命保険契約は、故人が保険料を支払っていた場合、契約内容や受取人によっては相続財産として扱われることがあります。これを「みなし相続財産」と呼びます。生命保険の調査は、故人の自宅に保管されている保険証券保険会社からの通知、契約更新の案内などがないかを探すことから始めます。故人が複数の保険に加入していた可能性もあるため、注意深く確認することが重要です。

もし保険証券などが見つからない場合でも、2021年4月からは、日本生命保険協会が運営する「生命保険契約照会制度」を利用して、故人が生命保険に加入していたかどうかを調べることが可能です。この制度を利用することで、故人が契約していた可能性のある生命保険会社を一括で照会することができます。

3. 負債(借金など)

故人に借金がある可能性を調べることは、相続放棄を検討する上で非常に重要です。主な調査方法としては、信用情報機関への開示請求が挙げられます。個人の信用情報を取り扱う機関として、全国銀行個人信用情報センター、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)などがあります。これらの機関に故人の信用情報を請求することで、金融機関からの借入履歴やクレジットカードの利用状況などを確認できます。郵送で手続きが可能ですので、各団体のウェブサイトを確認すると良いでしょう。

ただし、個人間の貸し借りや、金融業者ではない法人からの借入などは、信用情報機関に情報が登録されないため、これらの負債は故人の残した書類や手帳、人間関係などから地道に調べていくしか方法がありません。そのため、相続開始後すぐに故人の書類を破棄することは避けるべきです。また、故人が他人の保証人になっていた場合、その保証債務も相続の対象となる可能性があるため、特に注意が必要です。保証債務の有無が疑われる場合は、故人の人間関係や残された資料を詳しく調査することが大切です。

専門家への相談が最も確実な方法です

相続に関する手続きは複雑で、期限管理や書類収集、登記や税務など多岐にわたります。誤った判断や遅延が後々トラブルを招く可能性もあるため、不安を感じたら早い段階で専門家へ相談することをおすすめします。

東急田園都市線「青葉台駅」近くの高野司法書士事務所では、相続手続きや相続財産調査のご相談を初回無料で承っております。平日夜間や土日祝日のご予約も可能で、お忙しい方でもご安心いただけます。また、オンライン相談(Zoom等)や出張対応も柔軟に行っておりますので、横浜市青葉区・緑区・都筑区周辺にお住まいの方だけでなく、遠方のご家族様もぜひお気軽にご相談ください。

相続財産の調査方法その1(現金、預貯金、株式、有価証券)

2025-07-12

相続手続きの中で、特に重要かつ最初に手をつけるべきなのが、「相続財産の調査」です。この調査は、故人(被相続人)が遺したプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含め、すべての遺産を正確に把握し、その価値を適正に評価するプロセスを指します。

相続財産調査がなぜこれほど大切なのでしょうか。その後の相続手続き、特に遺産の分割方法の選択や、相続放棄・限定承認の判断、さらには相続税の申告に大きく影響するからです。例えば、もし調査が不正確だったり漏れがあったりすると、後になって新たな財産や負債が発覚し、相続人同士の予期せぬトラブルにつながる可能性があります。また、相続放棄や限定承認を検討する場合、原則として故人の死亡を知った日から3ヶ月以内という短い期間で家庭裁判所に申し立てを行う必要があるため、この期間内に正確な財産状況を把握することが不可欠です。

ここでは、現金、預貯金、株式、有価証券といった相続財産について、種類ごとに具体的な調査方法と、その後の手続きを円滑に進めるためのポイントをご紹介します。

1. 現金の調査方法

自宅に保管されていた現金(いわゆるタンス預金など)は、金融機関の記録に残らないため、発見が難しい場合があります。故人の自宅や貴重品が保管されていた場所を丹念に探し、メモや家計簿などの記録がないか確認することが重要です。これらは、正式な記録とは異なりますが、財産の全体像を把握する上で役立つことがあります。

2. 預貯金の調査方法

故人が利用していた預貯金口座を特定することから始めます。

利用金融機関の特定: まず、故人の自宅に保管されていた通帳、キャッシュカード、金融機関からの郵便物(通知書、ダイレクトメールなど)を探し、取引があった可能性のある金融機関を洗い出します。通帳を発行していないインターネット銀行の口座や、紛失した通帳の口座も考慮に入れるべきです。

残高証明書の発行依頼: 特定した金融機関には、故人の死亡日時点での残高証明書の発行を依頼します。この手続きは、相続人のうちの一人からでも請求可能ですが、故人の死亡が記録された戸籍謄本(除籍謄本)や、請求者が相続人であることを証明する戸籍謄本など、必要な書類が金融機関によって異なるため、事前に確認することが望ましいです。

取引履歴の確認: 残高証明書と合わせて、過去の取引履歴の開示も依頼しましょう。通帳への記帳や取引明細を見ることで、定期的にお金が引き出されていた先や入金元が分かり、新たな財産(例えば貸金庫の利用料支払い履歴から貸金庫の存在が判明するケース)や負債の手がかりとなることがあります。

口座凍結への対応: 金融機関は、預金者の死亡を知るとその口座を凍結し、出金や振り込みができなくなります。凍結された預金を引き出すには、遺言書による指定、仮払い制度の利用、または遺産分割協議書(あるいは調停・審判書)に基づいて手続きを行う必要があります。また、相続人全員の協力が得られれば、金融機関所定の書式に署名捺印することで引き出しが可能になる場合もあります。

3. 株式・有価証券の調査方法

故人が所有していた株式、投資信託、債券などの有価証券も相続財産に含まれます。

証券会社の特定: まず、故人の自宅に保管されていた取引報告書、残高報告書、あるいは株券などの書類がないかを確認します。最近では多くの書類が電子交付されているため、紙の郵送物が届かないケースもあります。故人の生前の会話や行動、手帳のメモなどから、取引があった可能性のある証券会社を絞り込むことが重要です。

証券保管振替機構(ほふり)への照会: 2004年(平成16年)の商法改正により、株券は原則として発行されなくなり、株式等の情報は「証券保管振替機構(通称:ほふり)」という機関で一元的に管理されるようになりました。特定の証券会社が不明な場合でも、この証券保管振替機構に対して開示請求を行うことで、故人が保有していた株式や証券の情報を確認できる場合があります。これにより、故人が取引していた証券会社を特定する手がかりを得られることがあります。

各証券会社への問い合わせ: 特定できた証券会社、または証券保管振替機構から判明した証券会社には、故人名義の口座の有無や死亡日時点での残高について問い合わせを行い、残高証明書や取引履歴などの発行を依頼します。

その他の有価証券: 株式や投資信託以外にも、仮想通貨、ゴルフ会員権なども相続財産となり得るため、これらの有無も合わせて調査対象とすべきです。貸金庫の有無も確認し、中に有価証券や貴金属がないか確認することが重要です。

相続財産調査は専門家への依頼がスムーズ

相続財産調査は、上記の通り多岐にわたるため、ご自身で全て行うには多大な時間と労力、そして専門知識を要します。特に、期限が迫っている場合や、財産の種類が多岐にわたる場合は、精神的・肉体的負担も大きくなります。

このような場合、相続に強い専門家に依頼することが非常に有効です。司法書士は、戸籍謄本の収集による相続人の確定から始まり、財産目録の作成、不動産の名義変更(相続登記)、銀行や証券口座の解約手続きなど、相続財産調査からその後の手続きまでを一貫してサポートすることができます。また、相続人間での紛争が予想される場合は弁護士と、相続税の申告が必要な場合は税理士と連携するなど、幅広いネットワークを活かしたワンストップサービスを提供することで、お客様の負担を大幅に軽減することが可能です。

相続財産調査やその他の相続手続きでお困りの方は、横浜市青葉区の高野司法書士事務所までお気軽にご相談ください。当事務所では、初回のご相談を無料で承っており、平日夜間や土日祝日のご相談にも対応可能です(要事前予約)。お客様の状況に合わせた最適な解決策を、司法書士が責任を持って、分かりやすく丁寧にご案内いたします。

亡くなった後の手続きリスト(期限4か月以内のもの)

2024-02-19

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。今回は、亡くなった後の手続きリスト(期限4か月以内のもの)についてご説明したいと思います。

1.相続の放棄(3か月以内)

プラスの財産よりも、借金などのマイナスの財産の方が多いときは、相続の放棄について検討します。故人が亡くなってから3か月以内に手続きを行う必要があります。相続を放棄するという意思を家庭裁判所に申し出る必要があります。

相続放棄については下記のリンクをご参照ください。

相続放棄について

2.相続の限定承認(3か月以内)

故人の財産について、プラスの財産の方が多いのか、マイナスの財産の方が多いのか分からない時があります。このような場合に、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法を限定承認と言います。限定承認は、故人が亡くなってから3か月以内相続人全員で家庭裁判所に申し出る必要があります。

限定承認については下記のリンクをご参照ください。

限定承認について

3.所得税の準確定申告(4か月以内)

故人に事業所得や不動産所得があった場合は、相続人が代わりに確定申告をする必要があります。これを準確定申告といい、故人が亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内に行う必要があります。

準確定申告が必要な具体例

・自営業者だった方

・不動産賃貸業を行っていた方

・2か所以上から給与を得ていた方

・400万円以上の年金受給があった方

・2,000万円を超える給与所得があった方

・給与所得や退職所得以外に20万円を超える所得があった方

期限 亡くなったことを知った日の翌日から4か月以内
申告者 相続人
申告先 故人の住所地を管轄する税務署
必要なもの(※事前に役所にご確認ください)

・確定申告書及び申告書付表

・申告する方の身分証明書

・源泉徴収票(給与や年金)

・控除証明書(生命保険及び損害保険)

・医療費の領収書

当事務所のリーフレットを作成しました

2024-02-12

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。

当事務所では、遺産整理業務(遺産承継業務)、遺言書作成サポート、相続放棄サポートを中心に業務を行っております。お客様に配布するためのリーフレットを作成いたしましたのでご紹介させていただきます。相続登記義務化に関するQ&Aも記載しております。

リーフレット表

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