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法定相続情報一覧図は手書きでOK?失敗しない作成手順&注意点
相続が発生すると、故人(被相続人)の財産を承継するための様々な手続きが必要になります。その際、相続人の特定や関係性を証明するために、膨大な量の戸籍謄本を収集し、手続きのたびに各機関に提出する手間が生じます。この煩雑な手続きを簡素化するために導入されたのが「法定相続情報証明制度」であり、その中心となるのが「法定相続情報一覧図」です。
本記事では、この法定相続情報一覧図の概要から、手書きでの作成が可能かどうか、そして失敗しないための具体的な作成手順と注意点について詳しく解説します。
1.法定相続情報一覧図とは?
法定相続情報一覧図とは、亡くなった方(被相続人)と、その相続人全員の関係性を一覧で分かりやすく図式化した公的な証明書です。これは、法務局が内容を確認・認証することで発行され、これまで相続手続きで必要とされた大量の戸籍謄本に代わるものとして利用できます。
2017年にこの制度が開始されて以来、相続手続きの負担軽減や不動産登記の促進に大きく貢献しています。
2.法定相続情報一覧図を活用するメリット
法定相続情報一覧図を利用することには、以下のような多くのメリットがあります。
手続きの効率化と時間短縮:
◦ 不動産の名義変更(相続登記)、預貯金の払い戻し・名義変更、株式や投資信託、自動車・船舶の名義変更、相続税の申告、遺族年金・未支給年金の請求、役員変更登記など、様々な相続手続きにおいて、戸籍謄本の束の代わりにA4サイズ1枚の法定相続情報一覧図の写しを提出することができます。
◦ これにより、各機関が戸籍謄本の内容を読み解く手間が大幅に削減され、手続きがスムーズに進みます。
複数枚の同時交付と再交付が可能:
◦ 申出時に必要な枚数を申請すれば、複数の写しを無料で交付してもらえます。これにより、複数の相続手続きを同時に進行させることができ、全体の期間短縮につながります。
◦ また、申出日から5年間は法務局で保管されるため、当初の申出人であれば期間中いつでも無料で再交付を受けることができます。
3.法定相続情報一覧図は手書きでも作成できる?
「法定相続情報一覧図」は、手書きでもパソコンでの作成でも差し支えありません。法務局のウェブサイトから提供されているひな形を利用することも可能です。
しかし、手書きで作成する際にはいくつかの注意点があります。
• 明瞭な楷書で記載する:判読が難しい崩し字で書くと、法務局でスキャンした際に文字が判別不能となる可能性があります。そうなると、手続きに使用できなくなる恐れがあるため、はっきりと、誰が見ても読める楷書で書くことが求められます。
• 消えない筆記具を使用する:鉛筆など、容易に消える筆記具での作成は認められていません。黒色のボールペンなど、永続性のあるインクを使用しましょう。
• 厳格な書き方ルール:法定相続情報一覧図は法務局が認証する公的な証明書であるため、記載内容や書式には厳格なルールが定められています。
これらの点から、手書きでの作成は可能であるものの、ミスなく確実に作成するためには、パソコンでの作成がより無難であると言えるでしょう.
4.失敗しないための法定相続情報一覧図の作成手順と注意点
法定相続情報一覧図を作成し、交付を受けるまでの流れは以下の通りです。
1. 必要書類の収集:
・被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本・除籍謄本・改正原戸籍謄本。
・被相続人の住民票の除票(取得できない場合は戸籍の附票)。
・相続人全員の現在の戸籍謄本または戸籍抄本。
・申出人の氏名・住所を確認できる公的書類の写し(運転免許証、マイナンバーカードなど)。
・作成する法定相続情報一覧図に相続人の住所を記載したい場合、各相続人の住民票。
◦ 数次相続の場合、最初の相続と次の相続をまとめて1枚の一覧図にすることはできません。それぞれの相続について個別に作成が必要です。
2. 法定相続情報一覧図の作成:
◦ タイトルには「被相続人 〇〇 法定相続情報」と記載します。
◦ 被相続人の情報:氏名、最後の住所、生年月日、死亡年月日を記載します。最後の本籍地は任意ですが、記載すると便利です。
◦ 相続人の情報:各相続人の氏名、生年月日、被相続人との続柄(例:「妻」「子」など)を記載します。住所の記載は任意ですが、記載すると住民票の写しの提出が不要になるなど、後々の手続きがスムーズになることがあります。
◦ 申出人となる相続人の氏名の横には「(申出人)」と併記します。
◦ 作成年月日、作成者の氏名、住所を記載します。
◦ 関係者の線でのつなぎ方:配偶者は二重線、親子は一重線で結ぶと分かりやすいでしょう。
◦ 押印は不要です。
3. 申出書の記入:
◦ 法務局のウェブサイトからダウンロードできる「法定相続情報一覧図の保管及び交付の申出書」に必要事項を記入します。
◦ 申出書にも押印は不要で、記名のみで差し支えありません。
◦ 利用目的欄には「株式の相続手続き」「遺産分割調停の申立て」など具体的な手続き名を記入し、必要な交付枚数を申請します。
4. 法務局への提出:
◦ 必要書類が揃ったら、以下のいずれかの法務局に提出します。
・被相続人の死亡時の本籍地
・被相続人の最後の住所地
・申出人の住所地
・被相続人名義の不動産の所在地
◦ 持参または郵送で提出が可能です。郵送の場合、戸籍謄本などの重要書類をやり取りするため、レターパックなど記録が残る方法が推奨されます。
◦ 提出された戸籍謄本などの原本は、手続き完了後に返却されます。
5. 法定相続情報一覧図の交付:
◦ 法務局での審査を経て、数日から1週間程度で認証印が押された法定相続情報一覧図が交付されます。混雑状況によっては2週間程度かかることもあります。
5.知っておきたい注意点
• 有効期限について:法定相続情報一覧図そのものに法的な有効期限は設けられていません。しかし、提出先の金融機関や証券会社などの民間機関によっては、独自ルールで発行日からの有効期限(例:3か月、6か月など)を定めている場合があります。手続きを行う前に、各提出先へ個別に確認することが重要です。
• 相続関係の変更と再作成:一覧図発行後に相続人に変更(例:養子縁組、認知など)があった場合、新しい一覧図を再申請する必要が生じる場合があります。また、相続放棄や相続欠格によって相続関係が変わった場合でも、一覧図そのものにはこれらの情報は記載されません。そのため、別途、相続放棄申述受理通知書や追加の戸籍謄本など、その事実を証明する書類が必要になる場合があります。
• 保管期間と再交付:法務局での一覧図の保管期間は、申出日の翌年から5年間です。この期間を過ぎると再交付はできず、再度最初から一覧図を作成し直して申出を行う必要があります。
6.専門家へのご依頼をご検討ください
法定相続情報一覧図の作成は、ご自身でも可能ですが、被相続人の戸籍が複数にわたる場合や、相続関係が複雑な場合には、戸籍の収集・読解から一覧図の作成まで、多くの手間と専門知識が必要となります。特に、普段仕事や家事で忙しい方にとっては、大きな負担となるでしょう。
このような場合、司法書士などの専門家に依頼することで、戸籍の収集から一覧図の作成、法務局への申出までの一連の手続きをスムーズに進めることができます。司法書士は不動産登記の専門家でもあるため、相続登記と法定相続情報一覧図の作成を同時に依頼することも可能で、手続きがより効率的になります。
相続手続きを円滑に進めるためにも、必要に応じて専門家のサポートを検討してみることをお勧めします。
法定相続情報一覧図の作成や相続に関するご不明な点、ご心配なことがございましたら、横浜市青葉区の高野司法書士事務所にご相談ください。

神奈川県横浜市青葉区にある高野司法書士事務所の高野直人です。遺言書作成や相続登記、相続放棄など、相続に関する手続きを中心にお手伝いしています。令和6年4月から相続登記が義務化されたこともあり、不安や疑問をお持ちの方も多いかと思います。当事務所では、平日夜間や土日祝日の無料相談も行っており、お一人おひとりに丁寧に対応しています。どうぞお気軽にご相談ください。