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財産分与による不動産所有権移転登記の手続きガイド

2025-09-23

離婚に伴い、夫婦が協力して築いた財産を公平に分け合う「財産分与」は、新たな生活を始める上で非常に重要な手続きです。もしこの財産の中に不動産(土地や建物など)が含まれる場合、不動産の所有権を正式に新しい名義人に移すために、法務局で「所有権移転登記」を行う必要があります。

不動産の登記は、単に名義が変わるというだけでなく、分与された財産を守り、将来的なトラブルを避けるために不可欠な手続きです。本記事では、財産分与を原因とする所有権移転登記の基本的な知識、必要な書類、および手続きを進める上での重要な注意点について詳しく解説します。

1.財産分与と登記の法的性質

財産分与の定義と期間制限

財産分与は、離婚に際して夫婦の共有財産を清算する手続きであり、民法に基づき認められています。分与の対象となるのは、婚姻中に共同で努力して築き上げた財産であり、名義が夫婦どちらか一方であっても、原則として分与の対象に含まれます。

財産分与を請求する権利には期限があり、離婚が成立した時から2年以内に行う必要があります。

登記を行わないことのリスク

財産分与によって不動産を取得しても、所有権移転登記を行わずに放置していると、さまざまなリスクが発生します。

最も大きなリスクは、不動産の所有権を第三者に対して主張できないという点です。例えば、分与した側の元配偶者が、登記名義がまだ自分にあることを利用して、その不動産を第三者に売却し、先に第三者に登記を備えられてしまうと、分与を受けた側は不動産の所有権を失う可能性があります。

また、以下のようなデメリットも生じます。

  1. 固定資産税の納税義務者と扱われるリスク:登記簿上に所有者として記載されている人が原則として固定資産税の納税義務者とされます。登記を放置すると、不動産を渡した側の元配偶者宛に納税通知書が送られ続け、その元配偶者が滞納した場合、不動産が差し押さえられるリスクがあります。
  2. 取引上の不都合:登記が完了していないと、その不動産を自分のものとして売却したり、担保に入れたりする取引ができなくなります。
  3. 元配偶者の債権者による差押え:登記を放置している間に、不動産を渡す側の元配偶者の債権者が、その不動産を差し押さえる登記をする可能性もあります。

    これらのリスクを回避し、完全な所有権を確保するためにも、財産分与後は速やかに所有権移転登記を行うことが強く推奨されます。

    2.登記手続きの基本的な流れと申請方法

    財産分与による所有権移転登記は、離婚が成立した後でなければ申請できません。これは、財産分与が離婚という法律効果によって発生するものだからです。

    登記申請の方法は、離婚の成立方法によって主に二つのパターンに分かれます。

    1. 協議離婚の場合:共同申請の原則

    夫婦間の話し合い(協議)により離婚が成立した場合、原則として不動産を渡す側(登記義務者)もらう側(登記権利者)共同で登記申請を行う必要があります。

    この共同申請のため、分与する側の元配偶者の協力が不可欠となります。離婚後に元配偶者に協力を求めることが難しくなるケースが予想されるため、離婚届を提出する前に、登記手続きに必要な書類の準備や、登記申請の段取りを済ませておくことが非常に重要です。

    2. 裁判上の離婚の場合:単独申請の可能性

    離婚調停、審判、または訴訟など裁判所の手続きを経て離婚が成立した場合、調停調書や判決書などの記載内容次第で、不動産をもらう側(登記権利者)が単独で登記申請できる可能性があります。

    単独申請が可能となるのは、調停調書等に「相手方は、申立人に対し、本日付財産分与を原因とする所有権移転登記手続きをする」といったように、一方の当事者に対して登記手続きを命じる文言が具体的に記載されている場合です。

    もし調停調書などに「両当事者は協力して登記手続きを行う」という旨の記載しかない場合は、協議離婚と同様に共同申請が必要となりますので注意が必要です。

    3.財産分与登記に必要な主な書類

    財産分与による所有権移転登記の必要書類は、売買や贈与の場合と概ね似ていますが、離婚の事実を確認するための書類が必要となる点が異なります。

    共同申請(協議離婚)の場合の主な必要書類

    区分書類名備考
    渡す側(登記義務者)登記識別情報または登記済権利証不動産を取得した際の権利証
    印鑑証明書登記申請日時点で発行から3ヶ月以内のもの
    実印登記原因証明情報や委任状への押印に使用
    もらう側(登記権利者)住民票住所を証明するための書類(期間制限なし)
    認印委任状への押印に使用
    共通/その他離婚の記載のある戸籍謄本離婚の事実と年月日を確認するために必要
    固定資産評価証明書登録免許税の計算に必要(本年度のもの)
    登記原因証明情報財産分与の合意内容(日付、当事者、対象物件)を記載した書面。離婚協議書や別途作成した書面が該当。
    委任状司法書士に依頼する場合、双方の署名捺印が必要

    単独申請(裁判上の離婚)の場合の主な必要書類

    単独申請が可能な場合、不動産を渡す側の書類(権利証や印鑑証明書)は不要となります。

    区分書類名備考
    もらう側(登記権利者)登記原因証明情報(調停調書、審判書、判決書等)裁判所が作成した公的な書面
    住民票
    固定資産評価証明書
    離婚の記載のある戸籍謄本離婚日が調書等から判明しない場合に必要
    認印
    その他委任状(もらう側のみ)

    4.財産分与登記における重要な注意点

    財産分与の登記手続きは、単に書類を揃えるだけでなく、特に以下のような法的・実務的な問題に注意を払う必要があります。

    1. 住宅ローンが残っている不動産の取り扱い

    財産分与の対象不動産に住宅ローンが残っている場合、所有権移転登記を行う際には特に慎重な検討が必要です。

    債務者は変わらない:所有権移転登記により不動産の名義が変わっても、住宅ローンの債務者(借主)は自動的には変更されません

    契約違反のリスク:ほとんどの住宅ローン契約には、銀行などの債権者の承諾なく所有権を移転することを禁止する条項(所有権移転の制限)が含まれています。無断で名義変更を行うと、契約違反となり、残りの債務を一括返済するよう請求される可能性があります。

    承諾の困難性:債権者が所有権移転や債務者の変更(借り換えを除く)に承諾を与えることは、現実には難しい場合が多いです。金融機関は、債務者の信用に基づいて融資を行っているため、返済能力や居住実態が変わる名義変更は基本的に認めません。

    リスクへの対処:借り換え(新しい名義人がローンを組み直し、元のローンを一括返済する)が可能であれば理想的です。しかし、それが難しい場合、ローンの完済後に名義変更をするという約束をすることもありますが、その場合、完済前に元配偶者による売却や破産のリスクが残ります。

    住宅ローンが絡む財産分与は複雑であり、法的なリスクも大きいため、必ず事前に専門家に相談し、慎重に対処すべきです。

    2. 登記名義人の住所・氏名変更登記

    財産分与の際に不動産を渡す側(登記義務者)の登記簿上の住所や氏名が、現在の印鑑証明書に記載された情報と異なる場合は、所有権移転登記に先立って、または同時に、所有権登記名義人住所(氏名)変更の登記が必要となります。

    この変更登記には、住所変更の経緯がわかる住民票の写しや戸籍の附票、氏名変更の経緯がわかる戸籍謄本などが追加で必要となります。特に、何度も転居している場合、住民票の保管期限(以前は原則5年)により過去の経緯がわからなくなり、手続きが複雑化するリスクがあります。

    なお、裁判所の手続きによる離婚の場合、不動産をもらう側が、渡す側の住所変更登記を協力なしに代位で申請できる場合があります。

    また、住所変更登記を行うと、変更後の住所が登記簿に記載され一般に公開される点にも注意が必要です。DVやストーカー被害などにより現住所を秘匿する必要がある場合は、公示用住所を記載する特例措置(代替措置)の利用が考えられます。

    3. 登記原因の日付について

    登記申請書に記載する「登記原因の日付」は、原則として財産分与の合意が成立した日となります。

    ただし、協議離婚の場合で、財産分与の合意が離婚届の提出前になされた場合は、財産分与の効力発生は離婚によって生じるため、登記原因の日付は離婚届が提出された日となります。

    4. 登記に伴う税金(登録免許税と譲渡所得税)

    財産分与による登記手続きでは、いくつかの税金が関わってきます。

    登録免許税:登記を行う際に法務局に納める税金です。財産分与を原因とする所有権移転登記の税率は、原則として固定資産税評価額の1000分の20(2%)です。

    不動産取得税:財産分与が夫婦の共有財産の清算を目的とするものであれば、原則として不動産取得税は課税されません。

    贈与税:財産分与は贈与ではないため、原則として贈与税はかかりません。ただし、分与された財産が婚姻中の協力によって得た財産として過大であると認められる場合や、贈与税等の脱税を目的とした離婚だと認められる場合は、その過当な部分に対して課税される可能性があります。

    譲渡所得税:不動産を渡す側に課される可能性のある税金です。財産分与を行った時点で、不動産が取得時よりも時価が高騰していた場合、その差額に対して譲渡所得税(国税)や住民税(地方税)が課税されることがあります。

    この譲渡所得税については、不動産を渡す側が居住していた自宅であれば、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」の適用が考えられますが、この特例は夫婦間の譲渡には適用されません。したがって、離婚届が提出され、夫婦でなくなった日以降の財産分与である必要があります。

    5. 事前の準備と公正証書の活用

    協議離婚の場合、離婚後の手続き協力を確保するため、離婚前に準備を進めることが重要です。

    また、財産分与、養育費、慰謝料など離婚に関する取り決めを明確化するために、離婚協議書を公正証書として作成することをお勧めします。公正証書に強制執行認諾文言を記載しておけば、金銭の支払いが滞った際に、裁判を経ることなく直ちに強制執行(差押え)が可能になります。

    ただし、公正証書を作成しても、不動産登記については金銭の支払いではないため、公正証書のみでは単独申請はできず、原則として元配偶者の協力(共同申請)が必要となる点には注意が必要です。

    5.専門家へご相談ください

    登記申請は離婚成立後に行う必要がありますが、スムーズかつ確実に名義変更を完了させるためには、離婚届提出前の段階から、必要な書類の準備や、元配偶者との協力体制の確保を計画的に進めることが成功の鍵となります。手続きに不安がある場合や、ご自身での対応が難しいと考える場合は、法的手続きの専門家である司法書士などに相談し、正確で円滑な手続きのサポートを受けることを検討すると良いでしょう。

    住宅ローン完済後、司法書士に頼むべき?抵当権抹消手続きの流れと注意点

    2025-09-20

    住宅ローンや事業資金の借入金を全額返済すると、担保として不動産に設定されていた抵当権を抹消できる状態になります。この抵当権抹消登記は法務局で行う手続きであり、登記簿上から担保設定の記載を消すことで、不動産の売却や追加融資をスムーズに行えるようになるメリットがあります。

    ローンを完済しても、抵当権は自動的に消えるわけではありません。抹消するためには、所有者自身が法務局で申請手続きを行う必要があります。将来、不動産を売却したり新たな融資を受けたりする際には、抵当権抹消登記が完了していることが前提となります。もし手続きを放置したままにすると、後々の手続きが煩雑になり、スムーズに進められないといったデメリットが生じる可能性があります。

    本記事では、抵当権抹消登記の基本的な流れ、必要な必要書類費用、そして専門家である司法書士に依頼すべきケースについて解説します。

    1.抵当権抹消手続きの基本的な流れ

    抵当権抹消登記は、一般的に次の3つのステップで進められます。

    1. 債務の完済と必要書類の受領

    住宅ローンを完済すると、債権者である銀行などの金融機関から、抵当権抹消登記に必要な書類が交付されます。金融機関が登記手続きを代行してくれるわけではないため、完済後に送付されてくる書類の内容を速やかに確認することが重要です。

    2. 必要書類の準備と申請書の作成

    銀行から受け取った書類に加えて、抵当権抹消登記申請書など、自身で用意する必要書類を揃えます。

    2-1. 金融機関から交付される主な書類

    金融機関からは、ローン完済後10日前後を目安に郵送で以下の書類が届くことが多いです。

    • 登記原因証明情報:借入金を完済し、抵当権を解除したことを証明する書類です。銀行によっては「抵当権解除証書」「弁済証書」「抵当権放棄証書」など、名称が異なる場合があります。
    • 登記識別情報(または登記済証):抵当権設定時に発行された書類で、所有権の権利を証明する「権利証」とは異なりますが、登記手続きに必要な情報です。
    • 委任状:本来、抵当権抹消は債権者(銀行)と所有者が共同で申請するものですが、所有者単独で手続きを行うために、銀行から所有者への委任を示す書類が必要です。
    • 金融機関の資格証明書または会社法人等番号銀行が法人として実在することを証明する登記事項証明書などです。2015年(平成27年)以降は、申請書に会社法人等番号を記載することで、この書面の添付を省略できます。
    2-2. 所有者自身が用意する主な書類

    所有者自身が用意する必要書類のメインは、抵当権抹消登記申請書です。 また、登記簿上の住所や氏名が現在の情報と異なる場合は、前提として住所変更登記氏名変更登記が必要となり、そのために住民票や戸籍の附票、戸籍謄本などを追加で用意する必要があります。

    3.登記申請書の作成と法務局への提出

    抵当権抹消登記申請書は、法務局の公式サイトから書式をダウンロードして作成できます。

    3-1. 申請書の主な記載事項

    申請書には以下の内容を正確に記載する必要があります。

    • 登記の目的:抹消する抵当権の順位番号を記載します。
    • 原因:抵当権が消滅した日付(ローン完済日など)と原因(弁済または解除など)を記載します。
    • 登記権利者:不動産の所有者の住所・氏名を記載します。
    • 登記義務者銀行などの金融機関の本店や商号、代表者名、会社法人等番号を記載します。
    • 不動産の表示:抵当権抹消の対象となる不動産を、登記事項証明書の内容通りに記載します。
    • 登録免許税:納付する登録免許税の総額を記載します。
    • 連絡先の電話番号:法務局の担当者から連絡が来る場合に備え、平日の日中に連絡が取れる電話番号を記載します。不備があった場合、この連絡先に連絡が入り、法務局に出向いて補正(修正)作業を行う必要があります。
    3-2. 申請方法

    申請書必要書類が揃ったら、不動産の所在地を管轄する法務局に提出します。提出は窓口への持参、郵送、またはオンライン申請(電子文書の場合)が可能です。

    2.抵当権抹消にかかる主な費用

    抵当権抹消登記にかかる費用は、主に以下の3点です。

    1. 登録免許税: 登記を行うことに対して課される税金で、原則として不動産1個につき1,000円です。土地と建物がある一般的な一戸建ての場合、合計で2,000円となります。登録免許税は、収入印紙を購入し、申請書に貼り付けて納付します。

    2. 登記情報関連の「費用」: 事前に登記情報を確認するための費用や、登記完了後に抹消を確認するための登記事項証明書の取得費用がかかります。事前調査費用は1件あたり331円~361円程度、登記事項証明書の取得費用は1件あたり490円~600円程度です。

    3. 雑費用: 郵送で申請や書類の受け取りを行う場合の郵送料や切手代などがかかります。また、銀行によっては書類発行(解除証書など)に手数料を指定する場合があります。

    3.「司法書士」に頼むべきか?判断のポイント

    抵当権抹消登記は、必要書類が全て揃っていて、複雑な事情がなければ、申請書を作成し、個人で申請することも可能です。この場合、司法書士に支払う報酬(費用)を節約できるのがメリットです。

    しかし、以下のようなケースでは、正確性と迅速性を確保するため、登記の専門家である司法書士に依頼することが無難です。

    1. 司法書士に依頼すべき主なケース

    書類の紛失や不備がある場合銀行から受領した書類を紛失したり、書類の記載内容に不備があったりすると、手続きが煩雑になり、時間がかかります。特に登記識別情報(権利証)は再発行ができないため、「事前通知制度」の利用や司法書士による「本人確認情報制度」の利用が必要となります。

    不動産の売却を控えている場合:不動産売却の決済日までに確実に抵当権を抹消する必要があるため、迅速かつ正確な手続きが求められます。特に売却代金でローンを完済する場合、所有権移転登記と抹消登記を同時に行う必要があり、慣習として司法書士が対応します。

    住所・氏名が変更されている場合:抵当権抹消の前に住所変更登記氏名変更登記が必要となり、手続きが一つ増えるため、専門家に任せる方がスムーズです。

    複雑な事案:相続が発生している場合、複数の金融機関が関わる場合、または古い抵当権で銀行の合併や商号変更があり、連絡先が不明な場合などは、手続きの難易度が大きく上がります。

    2. 司法書士に依頼した場合の「費用」

    司法書士に抵当権抹消登記のみを依頼した場合の報酬(手数料)は、一般的に1万円~2万円程度が相場とされています。これに前述の登録免許税やその他の実費用が加算されます。

    4.手続きをスムーズに進めるための注意点

    1. 必要書類はすぐに確認・管理する

    住宅ローンを完済し、銀行から必要書類を受け取ったら、速やかに内容を確認しましょう。銀行が発行する資格証明書など、一部の書類には発行日から3ヶ月といった有効期限が設けられているものがあります。期間が空くと、再取得の手間が発生し、手続きが煩雑になる可能性があります。

    また、登記識別情報は再発行ができないため、紛失してしまうと手続きが複雑化し、時間もかかります。受け取った書類は大切に保管し、完済後は早めに抹消登記を申請することが推奨されます。

    2. 住所や氏名に変更がある場合は要注意

    不動産の登記簿に記載されている所有者の住所や氏名が、現在の情報と異なる場合、抵当権抹消登記の前提として、住所変更登記または氏名変更登記が必要です。これらの変更登記にも、不動産1個につき1,000円の登録免許税が発生します。

    3. 連絡先を正確に記載する

    申請書には、法務局からの連絡を受けるための電話番号(平日の日中に連絡が取れるもの)を正確に記載しましょう。申請後に不備が見つかった場合、法務局の担当者から連絡があり、申請者が法務局に出向いて修正(補正)を行う必要があるためです。

    5.お困りの場合は司法書士へご相談を

    抵当権抹消登記は、住宅ローン完済後に不動産の自由な活用を確保するために必須の手続きです。登録免許税を含めた費用は少額ですが、必要書類の収集や申請書の作成には手間と時間がかかります。

    完済後は、銀行から交付される必要書類を基に、速やかに手続きを開始しましょう。もし、書類の紛失、住所変更、相続といった複雑な事情がある場合や、ご自身で手続きを行う時間がない場合は、司法書士のような専門家に連絡し、依頼することを検討してください。これにより、確実かつ迅速に登記を完了させ、将来的なトラブルを未然に防ぐことができます。

    住所変更登記と氏名変更登記の義務化

    2024-01-19

    横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。

    不動産の登記簿には、所有者の住所・氏名が記載されています。
    所有者の方が住所や氏名を変更された場合は、市役所などで変更の手続きをされると思いますが、登記簿上の住所・氏名を変更するためには、別途法務局に住所や氏名の変更登記を申請する必要があります。

    今までは、この登記申請を行うことが任意であり、罰則もありませんでしたので、住所や氏名を変更してもその変更登記を申請しないケースも多く見受けられました。

    しかし、不動産所有者(登記名義人)の住所と氏名の変更登記が2026年(令和8年)4月1日から義務化されることになりました。

    なぜ義務化されるのか?

    登記簿の「権利部(甲区)」というところに、不動産所有者の住所や氏名が記載されています。住所や氏名を変更したら登記簿上の権利部(甲区)の所有者の住所・氏名を現在のものに更新することが重要です。この手続きを怠ると、登記簿上の所有者の住所・氏名と現住所・現在の氏名が一致せず、自分が所有者であることを証明できなくなってしまいます。

    権利部(甲区)サンプル

    順位番号 登記の目的 受付年月日・受付番号 権利者その他の事項
    所有権移転 平成〇年〇月〇日第〇号

    原因 平成〇年〇月〇日売買

    所有者 A市〇町〇番地〇

    甲野太郎

    付記1号 1番登記名義人表示変更 令和〇年〇月〇日第〇号

    原因 令和〇年〇月〇日住所移転

    住所 B市〇町〇番地〇

    住所・氏名を変更しても、住所・氏名の変更登記を申請せず、結果として、登記簿をみても所有者が誰だか分からない土地(所有者不明土地)が大量に増えてしまいました。その結果、土砂崩れなどの防災対策の工事が必要な土地であっても工事を進められなかったり、公共事業や市街地開発のための土地の利活用が妨げられてしまうなどの弊害が出ています。その対策として、相続登記の義務化とともに、住所・氏名の変更登記が義務化されることになったのです。

    住所・氏名変更登記の申請期限

    住所・氏名の変更登記の申請期限は以下のとおりです。

    施行日(2026年4月1日)より前に不動産の登記名義人の住所・氏名(法人の場合は、本店・商号)に変更があった場合は、施行日(2026年4月1日)から2年以内

    施行日(2026年4月1日)以降に不動産の登記名義人の住所・氏名(法人の場合は、本店・商号)に変更があった場合は、その変更があった日から2年以内

    罰則はあるのか?

    正当な理由なく期限内に住所・氏名変更登記の申請義務を怠った場合、5万円以下の過料(罰則)の対象となります。

    住所・氏名変更登記の職権登記制度

    様々な事情により、住所・氏名を変更しても、登記申請義務を果たすことが難しい場合もあります。そこで、法務局の登記官が職権で変更登記を行う新制度が設けられることになりました。(2026年4月1日以降)

    ・個人の場合

    法務局が登記名義人から事前に氏名・住所・生年月日等の「検索用情報」の提供を受けておき、その検索用情報を基に法務局が住基ネットに照会をして、当該登記名義人の住所・氏名に変更がないかを確認します。変更がある場合は、当該登記名義人の了承を得て、法務局が職権で住所・氏名の変更登記を行います。

    ・法人の場合

    登記名義人が法人の場合は、会社法人等番号が登記事項となります。また、法務省や法務局の内部でシステムが連携されるため、法人の本店や商号の変更登記(法人登記)を申請すると、会社法人等番号を基に本店や商号の変更を把握できるようになり、法務局(不動産登記)が職権で本店・商号の変更登記を行います。(法人の了承不要)

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