遺言書の検認期日、欠席しても大丈夫?

家庭裁判所から「遺言書検認期日通知書」が突然届くと、驚かれる方も少なくありません。特に、通知の中で特定の日時に裁判所への来所が求められている場合、仕事や家庭の事情で都合がつかないケースもあるでしょう。

この検認期日に欠席した場合、「相続権を失うのではないか?」「何らかの罰則を受けるのではないか?」といった不安を抱く方もいますが、申立人以外の相続人については、基本的には心配する必要はありません。

本記事では、遺言書の検認とは何かを解説するとともに、その手続き流れや、検認期日に欠席した場合の影響について詳しく解説します。

1.遺言書の検認とは?

検認とは?

遺言書の検認とは、家庭裁判所において、遺言書の存在内容を相続人に対して知らせ、同時に偽造や変造を防止することを目的とした手続きです。

検認の期日には、裁判官が遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名などを確認し、その時点での遺言書の内容を明確に記録します。これは、遺言書を公的な機関でチェックし、その証拠を保全する役割を果たします。

検認が必要な遺言書は、主に公的機関以外で保管されていた自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用していないもの)と秘密証書遺言です。

検認が不要な遺言書

ただし、すべての遺言書に検認が必要なわけではありません。公正証書遺言や、自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局に保管されている自筆証書遺言は、公的な管理がされているため、検認は不要とされています。

検認を怠った場合の罰則(期限)

遺言書の保管者や発見した相続人は、遺言者が亡くなったことを知った後、遅滞なく期限に注意)家庭裁判所に遺言書を提出して検認を申立て手続きが義務付けられています。

もし検認を怠ったり、検認を経ないで遺言を執行したり、家庭裁判所外で遺言書を開封したりすると、5万円以下の過料に処せられる罰則が適用される可能性があるため、注意が必要です。勝手に遺言書を開封した場合、他の相続人から偽造や変造の疑いをかけられ、後の相続トラブルに発展するリスクもあります。

2.検認手続きの概要と流れ

検認手続きの流れは以下の通りです。

1. 申立て:遺言書の保管者または発見した相続人が、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認を申立てます。

2. 検認期日の通知:家庭裁判所は申立人と日程調整を行った後、検認期日を決定し、相続人全員に対して通知書を郵送します。期日は申立日から数週間~1ヶ月後が目安で、平日の日中に行われます。

3. 裁判所での検認:期日には、申立人が遺言書を持参し提出します。裁判官が、出席した相続人などの立ち会いのもと、遺言書を開封し、内容や状態を確認・記録します。

4. 検認済証明書の申請・発行:検認後、検認済証明書申請を行い、発行を受けます。この証明書は、金融機関での手続きや不動産の相続登記など、その後の相続手続き必要書類となります。

検認の必要書類

検認の申立てには、主に以下の必要書類が必要となります。

  1. 家事審判申立書(または検認申立書
  2. 遺言書(申立人が期日に持参)
  3. 遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  4. 相続人全員の現在の戸籍謄本
  5. 収入印紙(遺言書1通につき800円)
  6. 連絡用の郵便切手

3.検認期日への出欠の可否

申立人は必ず出席が必要

遺言書の検認を申立てた本人(申立人)は、検認期日に必ず出席しなければなりません。これは、申立人が期日に遺言書原本を家庭裁判所に持参し提出する役割を担っているためであり、欠席すると検認自体が不可能になってしまいます。申立人が欠席した場合、他の出席者に迷惑をかけ、検認を怠ったとして罰則の適用を受ける危険性もあります。

申立人が確実に期日に出頭できるように、申立て前に裁判所と日程調整をする際は、確実に出席できる日を選ぶことが重要です。また、やむを得ない事情で出席が難しい場合は、弁護士を代理人として出席させることも検討できます。

申立人以外の相続人は欠席が可能

申立人以外の相続人については、検認期日に出席する法的な義務はなく、欠席しても罰則やペナルティが科せられることはありません。出席するかどうかは、各相続人の自由な判断に委ねられており、欠席する旨を裁判所に連絡する必要も特にありません。相続人全員が揃わなくても検認の手続きは進められます。

4.検認の「効力」と欠席によるデメリット

検認は遺言書の効力を決定しない

検認手続きは、あくまで遺言書の状態を形式的に確認し、偽造・変造を防ぐための手続きであり、遺言書が有効か無効かを判断するものではないという点に注意が必要です。検認が完了したからといって、その遺言書が法的に有効であると確定するわけではありません。

もし遺言書の内容に疑問がある場合や、無効であると考える場合は、検認後に別途、遺言の無効を争う手続きを行うことになります。無効を主張する流れとしては、まず家庭裁判所に遺言無効確認の調停申立て、調停で解決しない場合には訴訟へと移行します。

欠席によるデメリット

申立人以外の相続人が検認期日に欠席しても罰則はありませんが、いくつかのデメリットがあります。

1. 遺言の内容を確認するタイミングが遅れる:検認期日に立ち会わないと、遺言書の内容を知るのが一歩遅れます。遺言書の内容を早く知りたい場合は、出席が推奨されます。

2. 当日のやり取りを直接見聞きできない:期日では、裁判官から申立人などに対して遺言書の保管状況などの質問がされることがありますが、欠席するとそのやり取りや雰囲気を直接知ることができません。ただし、これらの内容は、後日家庭裁判所に検認調書の閲覧や謄写を申立てることで確認は可能です。

3. 期限のある手続きへの影響:遺言書の内容が不明な間は、相続に関する対応が難しくなることがあり、特に相続放棄のように「相続開始を知った時から3ヵ月以内」という期限が設けられている重要な手続きの判断に影響が出る可能性もあります。

5.まとめ

遺言書の検認は、自筆証書遺言や秘密証書遺言を発見した際に遅滞なく行わなければならない重要な手続きです。申立人は、申立書必要書類を揃え、期日には必ず出席する必要がありますが、その他の相続人は欠席が可能です。欠席しても相続人の権利を失うことも、罰則が科せられることもありません。

ただし、検認は遺言書の効力を確定するものではなく、検認後の相続手続きやトラブル対応を見据えると、専門的な知識を持った者(弁護士など)に手続きをサポートしてもらうことは、その後の流れをスムーズに進める上で非常に有効な手段と言えるでしょう。

検認手続きやその後の相続問題についてご不安がある場合は、専門家にご相談いただくことをおすすめします。

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