相続手続きを放置して後悔したケース

相続手続きは、大切な方を亡くされた後に直面する、避けては通れない重要なプロセスです。しかし、その複雑さや精神的な負担から、つい手続きを「後回し」にしてしまう方も少なくありません。その結果、様々な問題が発生し、後々「あの時、もっと早くやっておけばよかった」と後悔するケースも存在します。

今回は、相続手続きを放置することで生じる可能性のある落とし穴と、それらを未然に防ぐための対処法について詳しく解説します。

1.相続手続きを放置すると何が起きるのか?

相続は、故人の財産だけでなく、負債も含めて次の世代に引き継ぐ大切なプロセスです。この手続きを適切に進めないと、以下のような金銭的、法的、そして精神的な問題が発生し、かえって大きな負担となることがあります。特に、相続財産や相続人の確定、遺産分割、相続税の申告など、多岐にわたる手続きにはそれぞれ重要な意味があり、無視できない期限も存在します。

後悔につながる具体的なケース

相続手続きの放置が原因で起こりがちな具体的な後悔のケースを見ていきましょう。

金銭的な負担とトラブル

手続きの遅れは、予期せぬ金銭的な損失や負担を招くことがあります。

故人の預貯金が凍結されるリスク

金融機関は預金者の死亡を知ると、その口座を凍結します。これにより、葬儀費用など故人の死後の急な出費が必要な場合でも、原則として自由に預金を引き出せなくなります。遺産分割協議が成立していない状況で、一部の相続人が他の相続人の了解なしに預金を引き出した場合、刑事責任に問われる可能性は低いとされていますが、後に不正な引き出しと疑われ、返還請求や損害賠償請求といった民事トラブルに発展する可能性があり、注意が必要です。また、使途を明確に説明できない場合や、引き出しの事実を隠していた場合も、他の相続人からの不信感を生み、トラブルが拡大する原因となり得ます。

多額の税金負担

相続税の申告には原則として「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内」という厳格な期限があります。相続手続きを放置し、期限内に申告を行わなかった場合、延滞税や加算税といったペナルティが発生する可能性があります。

また、期限内に適切な申告をしなかったことにより、本来適用できたはずの各種特例(例:小規模宅地等の特例、配偶者の税額軽減など)を使えず、結果として多額の相続税を負担することになるケースも少なくありません。税務署は「知らなかった」「忙しかった」といった事情では原則として猶予を認めてくれません。

相続税の納税資金が不足するおそれ

相続税の納税は基本的に「現金一括払い」が原則です。相続手続きを放置しているうちに、預貯金口座が凍結されて引き出せず、現金が用意できないという状況に陥ることもあります。相続税の「物納制度(不動産等での納税)」を利用するためにも、期限内に適切な手続きを進める必要があり、放置は命取りになりかねません。

手続きの煩雑化と法的な問題

手続きを放置すると、時間の経過とともにさらに複雑化し、法的な問題に直面することもあります。

不動産の名義変更(相続登記)の義務化

2024年4月1日からは、不動産の相続登記が義務化されました。これを怠ると、過料が科される可能性があるだけでなく、将来的に不動産の売却や担保設定ができなくなるなど、活用が著しく制限されることになります。長期間放置された不動産は、相続人がさらに増え、名義変更が非常に困難になるケースも少なくありません。

相続人の確定の困難化

相続人の調査には、故人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を取り寄せる必要があります。時間が経つと、戸籍の収集自体が複雑になり、相続人が増えることで全員の同意を得ることが難しくなります。

海外在住の相続人がいる場合の課題

相続人の中に海外に居住している方がいる場合、遺産分割協議には相続人全員の参加と同意が大前提となります。しかし、時差や距離の問題で話し合いの機会を設けるのが困難となることがあります。また、海外在住者には日本の印鑑証明書や住民票がないため、代わりに現地の日本領事館などで「署名証明書(サイン証明)」や「在留証明書」を取得する必要があります。これらの書類の手配にも時間と手間がかかり、手続きが滞る原因となります。日本国籍を有していない相続人がいる場合は、さらに手続きが複雑になることもあります。

親族間の争いと精神的負担

相続手続きの遅延によって、親族間の争いの火種となることは最も避けたい事態です。

遺産分割協議の難航

相続人全員が合意しなければ遺産分割協議は成立せず、一人でも参加しない、または同意しない相続人がいれば手続きを進めることができません。話し合いが長引くと、お互いへの不満や不信感が募り、「争続」と呼ばれる深刻な家族間の争いへと発展するケースは珍しくありません。特に不動産など分割しにくい財産がある場合、争いの原因になりやすいでしょう。

相続放棄の機会喪失

被相続人に借金などの負債があった場合、相続放棄を選択することでその支払いを免れることができますが、原則として相続開始を知った日から3ヶ月以内という厳格な期限があります。この期間内に財産調査や手続きを行わないと、意図せず借金も相続してしまい、後で後悔することになります。一部の相続人が故人の預金を引き出すことで、法定単純承認とみなされ相続放棄ができなくなる可能性もあります。

2.なぜ相続手続きは放置されがちなのか?

多くの方が相続手続きを放置してしまう背景には、以下のような理由が挙げられます。

手続きの複雑さや専門知識の不足

相続は多岐にわたる法律や税金の知識が必要とされ、一般の方には非常に難解に感じられます。

忙しさや時間的な制約

仕事や育児などで忙しく、煩雑な手続きに時間を割くことが難しいケースが多いです。

精神的な負担

大切な人を亡くしたばかりで、精神的に手続きを進める余裕がないと感じることもあります。

どこから手をつけてよいかわからない

3.後悔しないための早期の行動を

何から始めるべきか、誰に相談すべきか分からず、行動に移せない方も少なくありません。

相続手続きは、放置してしまうことで金銭的な損失や家族間のトラブル、複雑な法的リスクを招く恐れがあります。「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、早めの対応が何よりも大切です。高野司法書士事務所では、相続手続き全般にわたり丁寧かつ迅速にサポートいたします。東急田園都市線・青葉台駅から徒歩6分とアクセスも良好です。初回相談は無料ですので、不安や疑問があればお気軽にご相談ください。大切なご家族の想いを、円満なかたちで未来へつなぐお手伝いをいたします。

keyboard_arrow_up

0455077744 問い合わせバナー 無料相談について