相続放棄(相続しない手続き)

このようなお悩みをお抱えであれば早めにご相談ください。

  • 借金を相続してしまった
  • 亡くなった親や兄弟の借金の督促状が届いた
  • 亡くなった親や兄弟が連帯保証人になっていた
  • 相続する不動産の住宅ローンが残っている
  • 被相続人と疎遠だったので関わりたくない
  • 他の相続人に財産を譲りたい

1.相続放棄とは

相続放棄とは、被相続人(亡くなった方)の財産について、相続する権利を放棄する、相続しないという選択をすることです。

相続人ではなくなるので、被相続人の財産一切を受けとりません。

相続においては、被相続人の現金や預貯金、不動産や有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金や負債などのマイナスの財産も相続の対象となります。マイナスの財産を相続した相続人は借金などの債務を支払う義務が生じます。

被相続人が生前に多額の借金をしていた場合、他人の連帯保証人になっていた場合、3ヶ月を経過すると被相続人の借金や連帯保証人の地位を無限に承継しますので、金融機関等の債権者からの求めに応じて、借金の返済義務を負うことになります。

2.相続放棄の期間制限

相続放棄の手続きをすれば上記の返済義務を承継することはありません。

しかし、相続放棄には期間制限があります。3ヶ月以内に家庭裁判所に対し相続放棄の申立をしなければならないのです。では、いつから3ヶ月なのか。この期間のスタート地点が非常に重要です。

民法915条では「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定されています。

「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3ヶ月以内に相続放棄の手続きをすれば良いことがわかります。 

「自己のために相続の開始があったことを知った時」とは要するに①「被相続人が亡くなったこと」②「自分が相続人になったこと」の両方を知った時ということになります。   

被相続人と一緒に生活していた相続人にとっては被相続人が亡くなった日(死亡日)が「自己のために相続の開始があったことを知った時」となるでしょうが、被相続人と離れて暮らしていた相続人にとっては、被相続人が亡くなったことを知らされた日が「自己のために相続の開始があったことを知った時」となるのです。つまり、3ヶ月の期間のスタート地点は相続人によって異なることがあるのです。

3.相続放棄のメリットとデメリット

相続放棄のメリット

被相続人の借金や負債を相続しなくてよい

相続放棄の一番のメリットは、被相続人の借金などの債務や負債を相続せずに済むという点にあります。

被相続人が消費者金融やクレジットカード会社から借金をしていた場合、住宅ローンや事業のために銀行から借入を行っていた場合、誰かの連帯保証人になっていた場合、税金を滞納していた場合などいずれの債務や負債からも免れることが出来ますので、相続人が支払義務を負うことはありません。

遺産分割のトラブルに巻き込まれない

相続放棄のもう一つのメリットは、遺産分割協議のトラブルに巻き込まれずに済むことです。法定相続人が複数いる場合には、全員で遺産分割協議をして、財産の分け方を決めなければなりません。

相続人同士が疎遠であったり、仲が悪くて遺産分割協議がトラブルになりそうな場合は、相続放棄を検討されると良いでしょう。相続放棄をすると「はじめから相続人ではなかった」ものとされますので、遺産分割協議に参加する必要もなくなります。

相続放棄のデメリット

プラスの財産も相続できない

相続放棄をするとプラスの財産も何も相続することが出来ません。マイナスの財産のみ放棄してプラスの財産は相続するというように相続する財産を選ぶことも出来ません。被相続人の財産すべてを相続しない手続きだからです。

そのため、被相続人に借金や負債があるけれど、それより高額な不動産や預貯金などの財産がある場合は、借金や負債の支払いをしても手元にプラスの財産が残りますので、相続放棄をしても良いのかよく検討しましょう。

相続放棄を撤回することは出来ない

相続放棄の手続きが行えるのは1回のみです。内容等に不備があり家庭裁判所に受理されなかった場合、よほどの理由がない限り再申請することは出来ません。

また、一度相続放棄が認められると気が変わったからといって撤回することも出来ません。(ただし、相続放棄の申述に詐欺があった場合や錯誤に当たる場合は取り消すことが出来る場合があります。)

生命保険金・死亡退職金の非課税枠が使えない

生命保険金や死亡退職金は受取人固有の財産であるため、相続放棄をしていても受け取ることが出来ます。ただし、生命保険金や死亡退職金には以下の非課税枠がありますが、相続放棄をした人は、この非課税枠は使えません。

生命保険金や死亡退職金の非課税枠:500万円×法定相続人の数

4.相続放棄すべきケース(相続放棄しないとどうなるか)

被相続人に現金や預貯金、不動産などのプラスの財産がほとんどないことが分かっており、代わりに多額の借金を抱えていたり、見ず知らずの人の連帯保証人になっていて債権者から支払いの請求を受けていた場合、相続人が相続放棄の手続きをせず放置していると、3ヶ月を経過したころに債権者からの督促状が届くことになります。

相続人としてプラスの財産を何も相続していなくても、債権者から裁判を起こされ、相続人自身の財産が差し押さえられてしまう可能性もあります。 差し押さえされた財産が自宅であれば競売にかけられて住む場所を失うかもしれません。

5.相続放棄の注意点

相続財産を処分してしまうこと

相続人が相続が開始されたことを知りながら、相続財産を一部でも処分してしまうと相続放棄をすることが出来なくなってしまうので注意が必要です。

被相続人の財産を処分してしまうと「単純承認」したものとみなされます。単純承認とは、プラスの財産も借金等のマイナスの財産もすべて相続することを意味します。

たとえば、次のような行為をすると単純承認とみなされます。

  • 相続財産を売却する
  • 家屋を取り壊す
  • 預貯金の解約・払い戻し
  • 債権の取り立て・回収
  • 被相続人の借金を相続財産から支払うこと
    ※被相続人の借金を相続人固有の財産で支払うことは相続財産の処分にはあたらないとされています。

これに対し、相続財産を保全するための行為は「保存行為」とされ単純承認とはみなされません。保存行為とは財産の現状を維持するために必要な行為のことをいいます。

例えば、以下のような行為です。

  • 家屋の修繕
  • 腐敗しやすい物の処分
  • 一定の期間を超えない不動産・動産の賃貸借

他の相続人への影響

相続放棄をすると、その者ははじめから相続人でなかったものとみなされますので、他の相続人にも影響を及ぼします。

例えば、父が亡くなり法定相続人が母親と子供2人の場合、法定相続分はそれぞれ母親2分の1、子供が各4分の1ですが、母親が相続放棄をすると子供の法定相続分は各2分の1に増えます。

子供1人のみ相続放棄すると、母親の相続分は2分の1のまま、もう1人の子供の相続分が4分の1から2分の1に増えます。

また、同様の家族構成で、子供2人が相続放棄をした場合は、相続権は第2順位の直系尊属に移り、父親の父母(または祖父母)が法定相続人となりますが、この場合、母親の相続分が2分の1から3分の2に変わり、父親の父母(または祖父母)の相続分が各6分の1(父母2名の合計で3分の1)になります。

相続分が変更になるケース

相続人の構成  相続放棄前の相続分  相続放棄をする相続人 相続放棄後の相続分
配偶者と子2人

配偶者 2分の1
子   4分の1
子   4分の1

配偶者 相続放棄 配偶者 なし
子   2分の1
子   2分の1
配偶者と子2人 配偶者 2分の1
子   4分の1
子   4分の1

子   相続放棄
配偶者 2分の1
子   なし
子   2分の1
配偶者と子2人 配偶者 2分の1
子   4分の1
子   4分の1
配偶者 相続放棄
子   相続放棄
配偶者 なし
子   なし
子   全てを相続
子3人 子   3分の1
子   3分の1
子   3分の1
子   相続放棄 子   なし
子   2分の1
子   2分の1
子3人 子   3分の1
子   3分の1
子   3分の1
子   相続放棄
子   相続放棄
子   なし
子   なし
子   全てを相続

相続人が変動するケース(相続順位が変動するケース)

相続人の構成 相続放棄前の相続分 相続放棄をする
相続人
相続放棄後の
相続人
相続放棄後の
相続分
配偶者と子2人 配偶者  2分の1
子     4分の1
子     4分の1
子  相続放棄
子  相続放棄
配偶者と父母 配偶者  3分の2
父    6分の1
母    6分の1
配偶者と父母 配偶者  3分の2
父    6分の1
母    6分の1
父  相続放棄
母  相続放棄
配偶者と祖父母
(存命の場合)
配偶者  3分の2
祖父   6分の1
祖母   6分の1
配偶者と父母 配偶者  3分の2
父    6分の1
母    6分の1
父  相続放棄
母  相続放棄
配偶者と兄弟姉妹
(直系尊属が全員いない場合)
配偶者  4分の3
兄弟姉妹 4分の1
(複数名いる場合は等分する)

このように、相続放棄をすると他の相続人へ影響を及ぼします。特に同順位の相続人が全員相続放棄をすると、次の順位の相続人に相続権が移りますが、裁判所から「あなたが相続人になりました。」という通知が届くわけではありません。

債権者からの督促状が届いて、その時に初めて自分が相続人になったことに気づきます。相続放棄をしても、次の順位の相続人(または同順位の他の相続人)に通知する義務はありません。

しかし、ほとんど交流のない親族であれば仕方ありませんが、多少でも付き合いのある親族が次の相続人になる場合は、相続放棄したことを伝えないと「言ってくれても良かったのに。。。」という気持ちになり、後々関係が悪化することがあるかも知れませんので、事前に伝えておくほうが良いかも知れません。

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