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1.相続でもめる家族の特徴とは
相続でもめる家族にはある共通した特徴があります。遺産の額が少なくても仲睦まじかった家族がもめてしまうケースは少なくありません。相続トラブルはどのご家庭にとっても他人事ではありません。
ここでは、相続でもめる家族の特徴として事例をご紹介したいと思います。1つでも当てはまるともめる原因となる可能性がありますので注意が必要です。
①相続人同士の仲が悪い・疎遠になっている
相続人同士の仲が悪かったり、疎遠になっていると相続でもめる可能性が高いです。相続人間で仲が悪いと、互いに主張を譲らず遺産分割協議もスムーズに進みません。
また、遺産分割協議には相続人全員が参加しなければなりませんが、連絡がつかない疎遠な相続人がいたり、生死不明の相続人がいる場合、遺産分割協議の手続きを進めることが出来ません。
②相続人に被相続人の前妻との子供がいる
離婚した前妻は相続人にはなりませんが、前妻との間の子供は相続人になります。後妻及びその家族と前妻の子供は立場や考え方が異なりますので、お互いに自分に有利な分割方法を主張して遺産分割協議が進まなくなってしまうことがあります。
③相続人に内縁の配偶者がいる
婚姻届を提出せず夫婦同然の共同生活を営む男女関係を内縁関係と言いますが、法律上の夫婦とは認められず、内縁の妻(夫)は内縁の夫(妻)の法定相続人ではないので相続権はありません。
内縁の配偶者は遺言書がなければ被相続人の財産を相続することは出来ない上に、自宅を相続した相続人から退去を要求されてしまいトラブルになることもあります。
④認知症や行方不明の相続人がいる
相続人に判断能力が無い者がいる場合は成年後見人の選任を、相続人に行方不明者がいる場合は不在者財産管理人の選任をそれぞれ家庭裁判所に申し立てなければなりません。
そこで選任された成年後見人や不在者財産管理人が判断能力が無い相続人や行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加することになります。
成年後見人も不在者財産管理人も判断能力が無い相続人や行方不明の相続人の財産を守ることが仕事ですので、法定相続分を確保した遺産分割協議書でないと印鑑を押してくれませんので、スムーズな遺産分割協議が難しくなってしまいます。
⑤分割しにくい財産がある
遺産に金融資産以外の財産、土地や建物などの不動産が含まれている場合も相続手続きでもめる可能性があります。現金や預貯金などの金融資産であれば、相続人間で平等に分けることが出来ますが、不動産は流動性が低く、分割の方法が難しい財産です。
⑥介護の負担などが相続人によって異なる
家族のうち1人が被相続人の介護をしていた場合、相続でもめてしまう可能性があります。介護をしていた相続人は、長年親の介護をしてきたのだから、遺産分割協議で他の相続人よりも多く財産を相続したいと考えるのは当然かも知れません。
被相続人へ特別の貢献を行った相続人に対して、他の相続人よりも相続する財産を多くする寄与分という制度があります。
しかし、寄与分を認めるかどうか、認めるとして金額はいくらにするかなどの話し合いがまとまらずこじれてしまうことが多く、もめる原因になってしまうのです。
⑦被相続人が事業を行っていた
被相続人が事業を行っていた場合、事業を継ぐ特定の相続人が事業に必要な遺産を相続する必要があるため、相続人の間で不公平感が生まれやすくなります。
しかし、事業に必要な資産を事業を引き継ぐ相続人に相続させることができなければ、資産の活用や運用ができずに会社経営が上手くいかなくなり、倒産・廃業に追い込まれる場合もあります。
⑧生前に多額の贈与を受けている相続人がいる
1人の相続人が、被相続人の生前に多額の贈与を受けている場合も相続で家族がもめる原因となります。多額の贈与が「特別受益」に該当して、「特別受益の持戻し」の対象になるかどうかが問題になります。
特別受益とは、一部の相続人のみが被相続人から受けた生前贈与のことを言います。一部の相続人のみに特別受益があると特別受益を受けていない相続人との間で不公平となってしまいます。
そこで、特別受益の対象となる財産の額を含めて遺産分割の対象とすることで相続人間の公平を図る制度があり、これを特別受益の持ち戻しといいます。持ち戻しをするかどうかは相続人同士の協議によりますが、特別受益を受けた人と受けていない人で利益が相反するのでもめてしまう原因となります。
2.相続でもめないための対策
①遺言書を残す
相続におけるトラブルを防止する有効な方法の一つとして、遺言書を作成しておくことがあげられます。
相続財産を取得する相続人をあらかじめ決め、生前に遺言書を作成しておきます。遺言書で、財産を承継する相続人を指定しておけば、相続人が遺産分割協議を行う必要がありませんので、遺産分割協議でもめることはなくなります。
ここで重要なことがあります。被相続人の生前、一部の相続人に生前贈与(特別受益)があった場合はそれ以外の相続人、遺言書で相続財産を取得出来なかったり、他の相続人よりも少ない財産を相続する相続人がいる場合はその相続人、に対して必ず配慮をすることです。
不動産以外に預貯金などの相続財産がある場合は、不動産を相続しない相続人に、預貯金を相続させることが可能です。
しかし、不動産しか相続財産がない場合には、生命保険金の受取人を不動産を取得しない相続人に指定するなどの対策も有効です。
特に、相続財産が自宅の不動産のみという場合には、遺言書によって特定の相続人に自宅不動産を相続させるとしても、遺留分侵害の可能性がありますので、遺留分に相当する金銭を残しておくことなどの配慮が必要になります。
②コミュニケーションを取ること
相続でもめる大きな原因として、家族間のコミュニケーションが取れていないことがあげられます。
相続について家族で話し合いを行うことが重要です。
しかし、相続の話は亡くなることを想定するので、センシティブな話題です。まずは、子どもの立場から、親に困りごとがないかどうか聞いてみることが有効です。
いざ、家族が相続の場面に直面すると、それぞれ異なる思いを抱えた相続人同士がちょっとした誤解から衝突してしまうことがあります。そのような状況を回避するために、常日頃から家族同士お互いに気遣い、会話をする機会をできる限り持つことが大切です。