国税庁のデータ(令和元年度)によると、相続財産全体の金額に占める不動産(土地と建物)の割合は、約4割程度となっており、相続財産の中で不動産の占める割合は高いことが分かります。
被相続人(亡くなった方)が遺言書を残さなかった場合は、遺産分割協議を行い、相続人全員で話しあって、誰がどの財産を相続するかを決定する必要があります。
相続財産に不動産が含まれている場合、遺産分割協議で相続人同士がもめてしまうことがよくあります。なぜもめる原因となってしまうのでしょうか。
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1.誰が相続するかどうかでもめる
現金や預貯金などの遺産の場合は、相続人の人数に応じて平等に遺産を分けることが出来ます。しかし、不動産(土地と建物)の場合は現金のように分けることが出来ませんし、通常高額の財産であるため、相続人のうち誰が不動産を相続するのかをめぐってトラブルになることが多くあります。
遺産の中に、不動産以外に相続人同士で分けられる遺産が十分あったり、複数の不動産を平等に分けられればトラブルになる可能性は低いと思いますが、遺産のほとんどが自宅の不動産しかない場合などは、遺産を相続出来ない相続人との不平等が生じ相続人同士でもめる原因となります。
2.不動産の評価額についてもめる(代償分割の場合など)
不動産の評価方法には、下記の4種類があります。
- 実勢価格(取引価格)
⇨実際に取引される際の価格で、売買する当事者間で合意した価格のこと。 - 地価公示価格
⇨一般的な土地取引の指標や公共事業地の取得価格算定の基準となる価格のこと。 - 固定資産税評価額
⇨固定資産税や不動産取得税など税額の算定基準となる価格のこと。地価公示価格の70%程度。 - 路線価
⇨土地の相続税や贈与税の算定基準となる価格のこと。地価公示価格の80%程度。
相続人の1人だけが不動産を相続すると、その相続人の取り分が大きくなり、他の相続人との不平等を解消するため、代償金を支払うことがあります。
不動産の評価方法が異なると評価額も異なるため、どの評価方法を選択するかによって実際に支払われる代償金の金額も変わってくることになります。(同じ評価方法でもいつの時点を基準にするかで評価額が異なることもあります)
不動産を相続する相続人にとっては、評価額が低い評価方法を選択した方が支払うべき代償金の金額を少なく出来ますし、反対に不動産を相続しない相続人にとっては、評価額が高い評価方法を選択して、より多くの代償金を受け取りたいと考えるでしょう。そのため、相続人同士で不動産の評価額についてもめる原因となります。
3.共有名義に相続した場合にもめる
遺産分割協議を行わずに、不動産を法定相続分で相続人の共有名義に相続することも可能です。しかし、共有名義での相続は以下の理由から推奨されません。できる限り単独所有となるように遺産分割をすることが望ましいと言えます。
①賃貸や売却する際に共有者全員の同意が必要になる
共有名義の場合、不動産を賃貸したりや売却するには共有者全員の同意が必要です。相続人が誰も住んでいない不動産のため、賃貸に出したり、売却をしたくても、共有者のうち1名でも反対すれば、何も出来ず不動産がそのまま放置されることになります。
②不動産の管理についてもめる
共有名義の場合、不動産の管理についてもめることがあります。具体的には、税金や維持費の負担についてトラブルになります。
例えば、固定資産税の納付書は名義人のうち代表者に届きますし、管理費や修繕費用なども代表者宛に請求されます。所有する割合に応じて名義人全員に請求されるわけではありません。代表者がまとめて立て替え払いし、後に他の共有者へと負担部分の支払いを求め精算することになりますが、他の共有者が精算に応じずトラブルになることがあります。
③共有状態のまま相続人がさらに増える
不動産を共有名義で相続した場合、共有名義人のうち1名が亡くなると、その相続人が新たに共有名義人となり、共有者の人数がさらに増えます。共有名義人の数が増えると、共有者間の意見が合わず、不動産の売却や賃貸などはよりいっそう難しくなります。
4.遺産に不動産がある場合は当事務所にご相談ください
ここまで見てきたように、遺産に不動産がある場合は、相続人同士でもめる可能性があります。トラブルを防止するためには、できる限り生前から対策することが重要です。
具体的には、遺言書を残したり、不要な不動産を処分する対策が有効です。しかし、相続開始後にももめる原因を少しでも取り除くことは可能です。当事務所にご相談いただければお客様の事例に合わせて具体的にアドバイスさせていただきますので、まずは無料相談をご利用ください。