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相続人申告登記の概要について

2024-03-05

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。

さて、来月4月1日より、相続登記が申請義務化されますが、新しい制度である「相続人申告登記」の内容についてご説明したいと思います。

まず、相続登記の申請義務化のルールについて確認しておきましょう。

・基本的義務(不動産登記法第76条の2第1項)

相続や遺贈により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない。

 

・遺産分割成立時の追加的義務(不動産登記法第76条の2第2項、第76条の3第4項)

遺産分割によって、不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、遺産分割協議の内容に即した相続登記を申請する義務を負う。

上記を踏まえ、相続登記の申請義務化に伴う具体的な対応は以下のようになります。

【ケース1】 相続開始後3年以内に遺産分割協議が成立しなかった場合

➡①3年以内に相続人申告登記の申出または法定相続分での相続登記の申請を行う。

➡①の後、遺産分割協議が成立したら、遺産分割協議成立日から3年以内に、遺産分割協議の内容に即した相続登記の申請を行う。

➡①の後、遺産分割協議が成立しなければ、それ以上の登記申請義務は生じない。

【ケース2】 相続開始後3年以内に遺産分割協議が成立した場合

➡①3年以内に遺産分割協議の内容に即した相続登記の申請を行う。

➡①が難しい場合等は、3年以内に相続人申告登記の申出または法定相続分での相続登記の申請を行い、遺産分割協議成立日から3年以内に、遺産分割協議の内容に即した相続登記の申請を行う。

【ケース3】 遺言書があった場合

➡①遺言によって不動産の所有権を取得した相続人が取得を知った日から3年以内に遺言の内容に即した相続登記の申請を行う。

➡①が難しい場合等は、3年以内に相続人申告登記の申出または法定相続分での相続登記の申請を行う。

被相続人が遺言書を残していたというケースを除いては、3年以内に遺産分割協議を成立させ、その内容の相続登記を申請することを目指していくことになろうかと思います。しかし、実際のケースでは3年以内に遺産分割協議がまとまりそうにないという場合も多いでしょう。

そのような場合にひとまず「相続人申告登記」を行うか、「法定相続分による相続登記」を申請するかどちらかを選択することになります。

ただし、この場合は、第76条の2第1項の基本的義務を果たしたことにはなりますが、遺産分割協議が成立した場合は、その成立から3年以内の追加的義務も履行する必要が生じます。

では、「相続人申告登記」とはどのような制度なのでしょうか。その特徴をみてみましょう。

【相続人申告登記】

相続人が申請義務を簡易に履行することができるようにするため新たに設けられた登記です。

①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなします。

➡相続人が複数存在する場合でも特定の相続人が単独で申し出ることが可能(他の相続人の分も含めて代理申出することも可能)

➡オンラインでの申出も可能(押印・電子署名が不要)

➡法定相続人の範囲及び法定相続分の割合の確定が不要

➡添付書面は、申出をする相続人自身が被相続人(所有権の登記名義人)の相続人であることが分かる当該相続人の戸籍謄本を提出することで足りる

先ほどもご説明したとおり、3年以内の遺産分割協議の成立が難しい場合は、「相続人申告登記」または「法定相続分による相続登記」を申請することになりますが、「法定相続分による相続登記」は法定相続人の範囲や法定相続分の割合の確定(登記記録に公示されるため)が必要となり、被相続人の出生から死亡に至る一連の戸籍(除籍)謄本等の収集も必須となり、登記申請にあたって手続的な負担がどうしても大きくなってしまいます。

そのため、無理に「法定相続分による相続登記」を選択せずに、相続人にとって、より簡易に手続きできる「相続人申告登記」を申請し、とりあえずの基本的義務を履行しておけることは相続人にとって大きなメリットであると思います。

なお、相続人申告登記は、次のように付記登記で登記されることになります。

 権 利 部(甲区) (所有権に関する事項)
 順位番号  登記の目的 受付年月日・受付番号  権利者その他の事項
 1  所有権移転 平成●年●月●日第●号

原因 平成●年●月●日売買

所有者 ●市●町●番地

甲野太郎

 付記1号  相続人申告 令和●年●月●日第●号

原因 令和●年●月●日申出

相続開始年月日 令和●年●月●日

甲野太郎の相続人として申出があった者

●市●町●番地

乙野次郎

遺言書があっても相続登記申請を急ぐべき理由

2024-02-05

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。今回は、遺言書があっても相続登記申請を急ぐべき理由についてご説明したいと思います。

相続法の改正について

突然ですが、ここでクイズです。

被相続人: 父

相続人: 長男 二男

父が残した遺言書の内容: 私の所有する自宅不動産は長男に相続させる

上記のケースで、二男はAからお金を借りていました。Aは二男の債権者です。長男が自宅不動産の相続登記をする前に、借金をしていた二男の債権者Aが法定相続分(長男2分の1、二男2分の1)で相続したとする登記を申請してしまいました。

この場合、長男は、自分が自宅不動産の所有権すべてを相続したとAに主張することができるでしょうか。

答えは「No」です。しかし、以前は相続登記をしなくても自宅不動産は自分のものだと主張することができました。

どういうことかと言うと、令和元年(2019年)7月1日の改正相続法の施行により、遺言により法定相続分より多くの財産を相続した場合、登記、登録などの対抗要件を備えないと、第三者に対抗できなくなりました。法定相続分より多くの財産を取得した相続人は、他人に権利を奪われる可能性がありますので要注意です。

下記が改正された条文になります。

(共同相続における権利の承継の対抗要件)
第899条の2 相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、次条及び第901条の規定により算定した相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
 
2 前項の権利が債権である場合において、次条及び第九百一条の規定により算定した相続分を超えて当該債権を承継した共同相続人が当該債権に係る遺言の内容(遺産の分割により当該債権を承継した場合にあっては、当該債権に係る遺産の分割の内容)を明らかにして債務者にその承継の通知をしたときは、共同相続人の全員が債務者に通知をしたものとみなして、同項の規定を適用する。

改正法の趣旨

なぜ、このような改正がされたのかというとAのような遺言の内容を知らない第三者を保護するためです。Aとしては、父に相続が発生したら二男が当然、法定相続分である自宅不動産の持分2分の1を相続するだろうから、二男が借金を返済できなくても、二男の不動産持分2分の1を差し押さえて、その売却代金から回収できると考えるでしょう。遺言の存在によって、Aの期待は一方的に裏切られてしまいます。

改正前

遺言があれば、相続登記をせずしてAのような債権者(第三者)に対して自分(二男)が所有者であることを主張できました。そのため、Aとしては、二男の持分を差し押さえてもその差し押さえは無効という結果になってしまいます。

改正後

遺言があっても、相続登記をしなければAのような債権者(第三者)に対して、自分(二男)の法定相続分を超える部分については、自分がその不動産の所有者であることを主張することができません。そのため、Aが先に二男の持分を差し押さえて売却換価することができます。

相続人の間では、改正前でも改正後でも登記なくして対抗することが可能です。すなわち、長男は二男に対して、自分が自宅不動産すべてを相続したと主張することが可能です。

対策は?

長男として対策方法はあるでしょうか。法定相続分を超えた部分につき、先に登記をした方が勝ちということになりますので、速やかに相続登記をすることが何より重要です。また、自筆証書遺言は、相続発生後に家庭裁判所での検認という手続きが必要になり、検認後相続登記の申請までに一定の時間がかかってしまいます。生前から遺言書作成などに関われるのであれば、検認の手続きが不要な公正証書遺言で作成してもらうことも検討すべきかと思います。

相続登記義務化についてのチラシを作成しました

2024-01-26

横浜市青葉区の青葉台にある高野司法書士事務所でございます。

いよいよ、本年度4月1日から相続登記が義務化されますが、認知度はまだまだ低いようです。
当事務所では、一般の方に広く知っていただくため、相続登記義務化についてのチラシを作成いたしました。
相続について少しでも疑問点・お困りごとがございましたら、当事務所までお気軽にお問合せください。

相続登記義務化チラシ

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