前回ご説明した現金、預貯金、株式・有価証券以外の主要な相続財産である不動産、生命保険、そして負債について、具体的な調査方法とその重要性について詳しくご説明します。
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1. 不動産
不動産の有無を調べるには、まず毎年送られてくる固定資産税課税明細書を確認するのが一般的な方法です。この明細書には、故人が所有する不動産の一覧が記載されており、不動産調査の手がかりとなります。もし課税明細書が見当たらない場合や、固定資産税が非課税の不動産、あるいは共有名義の不動産(代表者以外には明細書が送付されないことがあります)の有無を確認したい場合は、注意が必要です。
不動産の調査において非常に有用なのが名寄帳(なよせちょう)です。名寄帳とは、特定の市町村内に故人が所有するすべての不動産(土地や家屋)について、その所有状況が一覧で記載された帳簿のことです。固定資産税を課税するために市町村が作成しているもので、故人がその市町村内にどのような不動産を所有しているかを網羅的に確認する際に役立ちます。これも、不動産が所在する市区町村役場で取得可能です。
しかし、名寄帳も万能ではありません。その限界も理解しておく必要があります。
• 特定の市町村内の情報のみ:名寄帳はあくまで発行している市区町村内の不動産情報しか記載されていません。故人が他の市町村にも不動産を所有していた場合、その情報は名寄帳には載っていないため、それぞれの市町村で個別に名寄帳や固定資産評価証明書を取得する必要があります。
• 課税対象外の不動産:固定資産税が課税されないような、極めて小さな私道や里道などの不動産は、名寄帳に記載されない場合や、記載されていても評価額が0円となっていることがあります。
• 直近の取得不動産:固定資産税の課税情報は1月1日時点の状況に基づいて作成されるため、故人がその年の1月2日以降に新たに取得した不動産については、その年の名寄帳には反映されていません。
相続財産に不動産が含まれる場合、「権利証」(登記済権利証または登記識別情報通知)を確認することも重要です。これは不動産の所有者であることを示す重要書類であり、登記簿上の名義人が被相続人であるかどうかを確認する手がかりとなります。特に複数の不動産を所有していた可能性がある場合、権利証を確認することで、見落としていた不動産の存在に気づくことがあります。また、権利証には固定資産税が課税されない物件(私道や山林など)も含まれている可能性があり、課税明細書だけでは把握できない不動産を確認できる点も大きなメリットです。相続登記の際にも、権利証があると手続きがスムーズに進む場合があるため、保管状況を必ず確認しておきましょう。
これらの点を踏まえ、不動産の調査は、様々な角度から、複数の情報を総合的に見て行うことが重要です。
2. 生命保険
生命保険契約は、故人が保険料を支払っていた場合、契約内容や受取人によっては相続財産として扱われることがあります。これを「みなし相続財産」と呼びます。生命保険の調査は、故人の自宅に保管されている保険証券や保険会社からの通知、契約更新の案内などがないかを探すことから始めます。故人が複数の保険に加入していた可能性もあるため、注意深く確認することが重要です。
もし保険証券などが見つからない場合でも、2021年4月からは、日本生命保険協会が運営する「生命保険契約照会制度」を利用して、故人が生命保険に加入していたかどうかを調べることが可能です。この制度を利用することで、故人が契約していた可能性のある生命保険会社を一括で照会することができます。
3. 負債(借金など)
故人に借金がある可能性を調べることは、相続放棄を検討する上で非常に重要です。主な調査方法としては、信用情報機関への開示請求が挙げられます。個人の信用情報を取り扱う機関として、全国銀行個人信用情報センター、株式会社シー・アイ・シー(CIC)、株式会社日本信用情報機構(JICC)などがあります。これらの機関に故人の信用情報を請求することで、金融機関からの借入履歴やクレジットカードの利用状況などを確認できます。郵送で手続きが可能ですので、各団体のウェブサイトを確認すると良いでしょう。
ただし、個人間の貸し借りや、金融業者ではない法人からの借入などは、信用情報機関に情報が登録されないため、これらの負債は故人の残した書類や手帳、人間関係などから地道に調べていくしか方法がありません。そのため、相続開始後すぐに故人の書類を破棄することは避けるべきです。また、故人が他人の保証人になっていた場合、その保証債務も相続の対象となる可能性があるため、特に注意が必要です。保証債務の有無が疑われる場合は、故人の人間関係や残された資料を詳しく調査することが大切です。
専門家への相談が最も確実な方法です
相続に関する手続きは複雑で、期限管理や書類収集、登記や税務など多岐にわたります。誤った判断や遅延が後々トラブルを招く可能性もあるため、不安を感じたら早い段階で専門家へ相談することをおすすめします。
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