遺言書作成Q&A

Q.遺言書は誰でも書くことが出来ますか?

A.遺言書は誰でも書くことが出来るわけではありません。15才に達していることと、遺言能力(遺言の内容を理解して、その結果として相続開始後にどのようなことが起こるか理解しうる能力)が必要です。

遺言書作成時において、この2つの要件を満たしている必要があります。未成年者であっても、15才に達していれば親権者の同意なく遺言書を作成することが出来ます。遺言能力の有無の判断基準は、個々の事例ごとに種々の事情を総合的に勘案して判断するものとされております。

Q.検認とはどのような手続きでしょうか?

A.遺言書の検認とは、相続人に対し遺言書が存在することを知らせ、遺言書の内容や形状を明確にして、後日遺言書が偽造・変造・隠匿・滅失等されることを防止する手続きです。

遺言者が自筆証書遺言や秘密証書遺言を作成し亡くなった後、遺言書の保管者や発見者は家庭裁判所に対し、検認の手続きを申し立てなければなりません。封に入っている遺言書を勝手に開封してしまうと5万円以下の過料(罰則)に処せられますので、必ず検認の手続きを申し立てましょう。

なお、検認は遺言書の内容について、有効無効を判断する手続きではありません。

Q.遺留分とは何でしょうか?

A.遺留分とは、一部の相続人に与えられた遺言によっても奪うことのできない、法律によって最低限保障された相続分のことをいいます。

遺留分権利者は、遺留分に相当する財産を取得することが出来なかった場合、贈与や遺贈を受けた者に対し侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができ、これを遺留分侵害額請求権といいます。

個別の遺留分割合は相続財産の2分の1(親または祖父母のみが相続人である場合は3分の1)に遺留分権利者の法定相続分を乗じた割合によって求めます。

例えば法定相続人が配偶者と子供2人である場合、配偶者の遺留分割合は4分の1(1/2×1/2=1/4)、子供1人あたりの遺留分割合は8分の1(1/2×1/4=1/8)となります。兄弟姉妹と甥姪には遺留分はありません。

Q.遺言書に付言事項を記載できると聞きましたがどのようなものでしょうか?

A.遺言書において、法的効力(遺産の処分など)を与えることを目的としない記載事項のことを付言事項といいます。家族への感謝を伝えたり、このような遺言書を残した経緯や趣旨を説明したりできる、相続人に宛てたメッセージです。

例えば、自分を介護して終身面倒を見てくれた長男に対し、他の兄弟よりも多くの財産を残す遺言書を作成したいと考え、そのような内容の遺言書を残したとします。

他の兄弟からするとその遺言書は不平等であり不満が生じやすくなりますが、なぜそのような遺言を残したのか経緯や趣旨を付言事項に記載することで相続人の不満が解消されることもあり、遺言者の最終意思が尊重されやすくなります。

Q.自宅や病院等で公正証書遺言が作成出来ますか?

A.通常、公正証書遺言は遺言者が公証役場まで出向いて作成します。しかし、病院に入院していたり、身体が不自由で自宅からの外出が難しい場合などは、公証人に病院や自宅へ出張してもらい公正証書遺言を作成することが出来ます。

しかし、この場合、通常よりも手数料が加算されるほか、公証人の日当や交通費の実費などが別途かかります。また、出張してもらう場所によって公証役場の管轄が決まっていますので、事前に確認することが必要です。

Q.以前に作成した遺言書の内容を変更することは出来ますか?

A.遺言書は遺言者が亡くなるまでいつでも変更や取り消しをすることが可能です。遺言は遺言者の最終意思を尊重する制度だからです。

また、一部を変更、取り消しするだけでなく、以前に作成した遺言書をまるごと撤回して新しく遺言書を作成しなおすことも可能です。ただし、遺言書を作成する場合と同様に、遺言書を変更、取り消す場合も厳格なルールが定められていますので、そのルールに則って作成する必要があります。

Q.遺言書が複数見つかったのですがどのように対応すればよいでしょうか?

A.上記の通り、遺言は遺言者の最終意思を尊重する制度であるためいつでも遺言書を変更、取り消し、書き直しをすることが出来ます。そのため、遺言書が複数見つかるという事態が想定されます。

このような場合遺言書の作成日付が重要になります。法律上は、一番最後に作成された最新日付のある遺言書が有効であるとされています。

例えば、令和1年1月1日付の遺言書で「自宅不動産はAに相続させる。」と書かれており、令和4年1月1日付の遺言書では「自宅不動産はBに相続させる。」と書かれていれば、前の遺言書の内容と新しい遺言書の内容は両立しないため、新しい遺言書で前の遺言書の内容を撤回したものとされ、新しい令和4年1月1日付の遺言書の内容が有効となります。

これとは異なり、前の遺言書の内容と新しい遺言書の内容が互いに抵触しない(どちらも両立する)場合は、2つの遺言双方が有効となります。

例えば、令和2年1月1日付の遺言書の内容が「預貯金はCに相続させる。」といったものだった場合などです。(各遺言書が有効に成立していることが大前提になります)。

Q.遺言で妻に相続させようと思いますが、もし私より妻が先に亡くなった場合どうなりますか?

A.遺言書で財産を相続させると指定した相手が遺言者よりも先に亡くなった場合、遺言書の該当部分は無効となります。そして、相続させるはずであった財産は遺言者の法定相続人の共有となり遺産分割協議が必要となります。

このような事態を避けるため、遺言書を作成する際は予備的遺言を盛り込むという対策が取られることが多いです。

例えば、「私の全財産は妻に相続させる。もし妻が私より先、あるいは同時に死亡した場合には、私の全財産は私の妹に相続させる。」というように予備的な遺言を併せて記載します。

Q.特定の相続人に全ての負債を相続させる遺言書を作成することは出来ますか?

A.借金に代表されるマイナスの財産(債務)もプラスの財産と同じく相続の対象となります。それでは、特定の相続人に借金全て(債務)を相続させるという内容の遺言書を作成することは出来るのでしょうか。

これについて、債務は法定相続分の割合に従って分割して各相続人に承継されるため、債務を相続させる特定の相続人を遺言書で指定しても債権者には対抗できないものとされています。したがって、債権者は、各相続人の法定相続分の割合に従って借金の支払い(債務の弁済)を請求することが出来ます。

もっとも、債権者が遺言書の内容を承諾した場合は、特定の相続人のみが債務を弁済する義務を負うこともあります。

Q.文字が書けなくても遺言書を残すことは出来ますか?

A.自筆証書遺言は自筆で書くことが求められるため、文字を書くことが出来ない場合は作成することは出来ません。

公正証書遺言は、遺言者が公証人に伝えた遺言の内容を基に公証人が遺言書を作成しますので、文字が書けなくても遺言書を作成することが出来ます。また、公正証書遺言にも署名が求められますが、公証人が代筆することが認められています。

Q.夫婦で同一の紙に遺言を書くことは出来ますか?

A.夫婦で一緒に遺言を作成しようという場合は多いと思いますが、民法第975条で「遺言は、2人以上の者が同一の証書ですることができない。」と規定されています。

これを共同遺言の禁止といい、2人以上が同じ紙に遺言を残した場合、その遺言書は無効になります。よって、夫婦で同時期に遺言書を作成するには、別の紙を使ってそれぞれ遺言書を作成しなくてはなりません。

共同遺言が禁止されるのは、法律関係が複雑になり、遺言者それぞれが自由に遺言を撤回することが出来なくなるためと言われています。

Q.遺言書を作成しましたがどこに保管しておくのが良いでしょうか?

A.自筆証書遺言書を保管する場所に決まりはありませんが、保管場所には注意が必要です。見つけやすすぎても、遺言書の内容をよく思わない相続人に破棄されたり改ざんされる可能性がありますし、見つけにくすぎても、死後まで遺言書の存在に気づかれず、遺言者の意図とは異なる形で遺産分割がされることとなりかねません。

自宅であれば金庫があれば金庫の中や重要書類を保管している場所、自宅以外であれば貸金庫などが保管場所の候補となるでしょう。ただし、どこに保管する場合も、信頼できる人に遺言書の保管場所を伝えておく方が良いでしょう。

信頼できる人は家族や友人でも良いですが、司法書士などの専門家に依頼するとより確実です。なお、自筆証書遺言については法務局での保管制度が始まりましたので、この制度を利用するのも選択肢の一つになります。

Q.法務局で自筆証書遺言書を保管してもらえる制度があると聞きました。どのような制度でしょうか?

A.令和2年7月から、自筆証書遺言を法務局で保管する制度(遺言書保管制度)が開始されました。この制度のメリットとして次のことが挙げられます。

  1. 法務局によって適切に管理・保管されるので紛失・改ざんを防ぐことが出来ます。
  2. 申請時に民法で定める自筆証書遺言の形式に適合するか外形的なチェックを受けることが出来ます。
    そのため、形式不備で無効となる可能性は低くなりますが、遺言書の内容について有効無効を判断するものではありません。
  3. 遺言者が亡くなった後、法務局に遺言書を保管していることを相続人に通知してもらうことが出来ます。
    このため、自宅等で保管している場合に相続人に遺言書を見つけてもらえなかったり、紛失してしまったりというデメリットを防ぐことが出来ます。
  4. 家庭裁判所での検認の手続きが不要になります。

Q.公正証書遺言を作成する際に司法書士に依頼するメリットは何ですか?

A.公正証書遺言の作成を直接公証役場に依頼することも可能です。

しかし、公証役場では簡単な相談には応じてもらえるかも知れませんが遺言書の細部まで検討して具体的なアドバイスを仰ぐことは出来ません。

公証役場では基本的に自分が望む遺言の内容をそのまま形にしてくれるだけという場合も多いのです。遺言書を作るのは難しいことではありませんが、良い内容の遺言書を作ることは難しいのです。良い遺言書を作成したいのならば弁護士や司法書士などの専門家に依頼する方が良いでしょう。

また公証人は法律のプロですが、税務のプロではありません。法律的に問題のない遺言書を作成することは出来ますが、相続税などの税務的に問題のない遺言書を作成できるとは限りません。私共の事務所では、相続に強い税理士と提携しておりますので、法律面、税務面双方から最適な遺言書を作成するアドバイスを差し上げることが可能です。

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