不動産の所有者が亡くなって相続人に名義を変更する登記を相続登記と言います。今までは、相続登記を申請するかどうかは任意でしたが、民法や不動産登記法などの法律改正によって、不動産の相続登記が義務化されます。
このページの目次
1.いつから義務化されるのか。~法律改正の内容について~
相続登記は令和6年4月1日から義務化されます。相続登記が義務化されると、不動産を取得した相続人は、相続により自分が所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する必要があります。
また、遺産分割協議によって不動産を取得した相続人は、遺産分割協議の成立日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
2.相続登記が義務化される理由
今までは相続登記は義務ではなく、罰則もありませんでしたので、土地を所有する方が亡くなっても相続登記をせず、何年、何十年と放置するケースが多く見られました。
そのため、数代にわたり土地の相続登記をしないまま所有者が分からなくなり、所有者の捜索に多くの時間と費用を要することとなった結果、民間取引(売買など)を阻害したり、土地活用を妨げる要因となっていました。
さらに、土地の管理がされないことにより、近隣への悪影響が生じたりして、様々な問題が発生しています。
平成30年の国土交通省の調査によると、全国における所有者不明土地の原因として、相続による所有権移転登記がされていないことによるものが66%とされています。
3.期限内に相続登記をしない場合はどうなる?
前述のように、相続によって不動産を取得した相続人は、 その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、遺産分割協議によって、不動産を取得した相続人は、遺産分割協議が成立した日から3年以内に相続登記を申請しなければならないこととされました。
正当な理由がないのに義務に違反した場合、10万円以下の過料(罰則)の対象となります。
4.過料(罰則)は必ず科せられる?
期限内に相続登記を申請する義務を怠ったからと言って、即座に過料(罰則)が科されるわけではありません。登記官が相続登記の申請義務違反の事実を把握した場合、あらかじめ登記申請義務を負う者に登記申請をするよう催告するものとされ、催告に応じて登記申請した場合は、過料に科せられることはありません。
登記官が、相当の期間を定めて催告を行い、「正当な理由」なくなお相続登記を申請しない者に対して過料通知を行うこととされています。
「正当な理由」の例として以下のケースがあります。
- 相続人が多数おり、戸籍謄本等の必要資料の収集や相続人の把握に時間がかかる
- 遺言の有効性や遺産の範囲等について裁判が行われている
- 相続人自身に重病などの事情があり登記申請が出来ない
また、 「被相続人が亡くなったことを知らない」場合や、「その不動産が相続財産に含まれていることを知らなかった」場合は、そもそも「3年以内」の期間制限が始まっていないと考えられるため、過料(罰則)の対象とはなりません。
5.過去の相続についても義務化の対象になる?
さて、今回改正される相続登記の義務化の規定は過去に相続が発生しているケースでも遡って適用の対象となります。
このケースでは、
- 相続によって所有権を取得したことを知った日
- 相続登記が義務化される日(=令和6年4月1日)
①と②のうちいずれか遅い日から3年以内に相続登記を申請すれば義務を果たしたことになります。
例えば、平成20年に父親が亡くなり、母親と長男、長女の3人が法定相続人のケースで、3人の間で父親が所有していた不動産は母親が取得することで話し合いがまとまっていた場合、母親は相続によって所有権を取得したことを知った日から3年を過ぎていても令和6年4月1日から3年以内に相続登記を申請すれば間に合います。
6.相続人申告登記とは?
今回の改正では新しく「相続人申告登記」という制度が設けられました。
相続登記を申請するためには、被相続人の出生から死亡までの一連の(除)戸籍謄本を取得したり、共同相続人全員で遺産分割協議を行うなど、相続登記の手続きには多くの時間と手間がかかります。
このように登記申請にあたって手続き的な負担の大きさが、相続登記を申請することを妨げていた要因の一つであることから、相続人が簡易に申請義務を履行出来るよう新たに設けられたのが「相続人申告登記」になります。
この制度では、①不動産の所有者(=被相続人)に相続が開始した旨と、②自分がその相続人である旨を、申請義務がある3年以内に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなされることになります。
7.相続登記の手続きは司法書士にご依頼を!
ここまで相続登記の義務化について解説してきました。今までは相続登記を申請するかどうかも任意であったものが、義務化されるという話でした。
いつまでにという意味では3年という期間の猶予が与えられています。しかし、3年あるからまだやらなくても良いという考え方は危険かも知れません。
相続人の一人(例えば父親)が亡くなると、その亡くなった相続人の相続人(例えば母親、長男、長女)に相続権が引き継がれます。
このように相続登記を放置していると、どんどん相続手続きに関与すべき相続人の人数が増えていき、遺産分割協議で話をまとめることが非常に難しくなります。3年の猶予があると思っていると意外と月日は早く過ぎるものです。相続登記の手続きが複雑化する前に当事務所までご相談ください。